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     冷たき来訪者Ⅸ

 いつもだったらこの時間よりも前に起きて、朝の全国ニュースを見ているのが日課なのだが、気温が低いせいなのか、起きるのが遅れたらしい。

 冷たい手でテレビのリモコンを持ち、電源を入れるとチャンネルを変えて、いつもの番組に設定した。この時間はスポーツニュースの特集を三十分間している。朝食の時間になるまで、外から入ってくる冷たい風に当てられながら、ぼーっと見ていた。


 あの蔵には、どんな妖怪が封印ふういんされているのだろうか。

 もし、その封印が年月によって解かれたとするならば、この家も危ないのかもしれない。


 そう考えているうちに、早く、あの蔵について調べたくなった。

 自分にできることがあるのならば、やりたい。人と妖怪が、なんで争うようになったのか、あそこに行けば、ヒントを得られるのかもしれない。


 いろんなことが頭の中を過ると、誰かが扉をノックした。


 防寒着を着た美咲みさきが部屋に入ってきた。


「灯真、朝ご飯よ。早く降りて来な……さむっ! あんた、朝からよくなどを開けていられるわね。何かあった?」


「いや、何も……。それよりも朝ご飯、もう出来たんだ」


「そうだった、そうだった。忘れるところだったわ。私、先に降りてくるからすぐに下りて来なさいよ」


 そう言って先に階段を下りて行った。


「それじゃあ、俺も行くか……」


 膝に手を置いて、ゆっくりと立ち上がると窓を開けたまま部屋を後にした。

 誰もいなくなった部屋の中にいきなり少女が姿を現した。


「なんじゃ、人間の住まいというのはこんな小さな部屋に住んでおるのか? ちっぽけな生き物だな……。それにしてもあの少年、顔色が悪かったな。これは好都合……私に食べられるのを恐れておるのだな」


 少女は、一人笑いをして何か企んでいるようだった。

 彼女は昨日、灯真とうまを襲おうとした妖怪だ。白い着物を着た少女の妖怪。人間の年齢で例えるなら、十四、五歳といったところだ。


 少女は、そのまま辺りを見渡し、灯真が寝ていた布団にそっと左手を置いた。

 目をつぶり、残った霊力を辿って何かを調べている。

 暗い、暗い道の先に何が見えるのだろう。知れば知るほど、真実とは残酷なものである。


「んっ!」


 目をパッと開き、左手をすぐに話すと険しい顔をしたまま少女は窓から外へ出て行った。


「なんだ、あの妖気は……。身に覚えのない強力な……。この山にまだそんな奴がいるとでも?」


 そのまま空高くまで飛び、辺りを見渡す。


「うむ。これじゃあ、何も分からない……。あの人の子を喰うのを少しばかり延ばすとしよう。あの者、何か知っておるようじゃしな」


 そう言うと、少女は姿を暗ませた。



 大晦日の朝の朝食は、何も変わらず白米に目玉焼き、ウインナーと味噌汁のみだ。

 何もしゃべらずに黙々と食べ終えると、手を合わせ、使った食器を水に浸けておく。


「おばあちゃん、蔵の鍵ってある?」


「おや、灯真から蔵について訊かれるとは思わなかったよ。それであそこで何をするつもりだい?」


「大晦日の大掃除だよ……」


「そうかい。だったら持っていきな。そこの棚の上に置いてあるのが蔵の鍵だよ」


「ありがとう、おばあちゃん。借りていくよ」


 灯真は、鍵を握るとそのまま二階に上がっていった。


「ちょっと、お母さん。あそこは決して開けてはならない蔵じゃ……」


 美咲は、手を止めて心配そうに和恵を見つめた。

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