少女の頼み
空と皐月が街へ着くとそこは既に血の海となっていた。
街の人々は生きてはいるものはいるが死んでいる者もいた、生きているものは今にも息を引き取る寸前であった。
空と皐月は一面赤色の道を進む。
そこには今まさに戦い始める海斗達の姿があった。
「お前達が街の人々を殺したのか」
「他に誰がいるんだよ。バカじゃないのか?」
先頭に立つ男は海斗を嘲笑っていた。
それを目の前にリーチャオが手を出そうとするもののポプラとヘンリーに止められていた。
『マスター!落ち着いてください!今の貴方では敵う相手ではありません!…』
目の前でボロボロになり、体の節々にヒビの入ったモズがリーチャオを止めに入る。
「許せない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!」
「…落ち着け…」
「貴方が落ち着かなくてどうするの!」
「でもモズがあいつに!」
「…それは分かったが今は落ち着け、なぜならお前じゃ敵わないからだ…」
目の前の光景に一体何があったのか、空は何一つとして理解することが出来なかった。
ことはおおよそ3時間前へと遡る。
傷だらけの小柄な男が幹部らしき男の前に戻ってくる。
「おう、どうした」
「ボス…はぁはぁ…」
「落ち着けよ、それよりもお前の相棒と例の女はどうした」
息を整え、小柄な男は口を開く。
「それが、相棒はあいつに殺された。あの女にボディーガードかいたんすよ」
「ボディーガードだ?関係ないな。さあて、お前は俺の大事な仲間を一人殺されここにきたな、この落とし前はきちんとつけてもらうぞ」
小柄な男の目の前に銃口が向けられる。
「あの世で相棒に会ってこい」
次の瞬間その空間に乾いた銃声が何発も鳴り響いた。
地面に流れる血がその悲惨さを物語っていた。
「おい、お前らこいつを始末しろ」
「わかりました」
「さあて、角狩り再開でもしようかな」
ボスは部下を大勢率いて住民の住む街へと降りていった。
連中が海斗の目に止まるのにそう簡単な時間はかからなかった。
連中は血飛沫を撒き散らしながらやって来きた。
「おい!角狩りだ!子供を連れて逃げろ!」
「おいおい、白ける真似してくれんじゃないの、そう言うの俺嫌いだよ?だからさ、死んで」
住民を避難させようとした男は海斗達の目の前で真っ二つに切り裂かれた。
海斗の顔に血飛沫が降り注ぐ。
「いいねえ、こいつら作られた物のくせして赤い血流すからな、殺し甲斐があるってもんだな」
『貴方達一体何者ですか!』
「なんだこの機械人形」
「おそらく人工知能だと」
「面白いけど、邪魔だから死んでくれる?」
ボスが振りかざした両刃の剣は決してモズを切り裂くことは無かったが、その体に多くのヒビを入れた。
剣からくる衝撃に耐えかねたモズは、吹き飛ばされ、モズを切った剣も折れた。
「へえ、なかなかやるじゃん」
「よくもモズを!許さない!」
リーチャオが怒りボスに殴りかかろうとした所をポプラとヘンリーに止められる。
空はリーチャオの後ろから飛び出しモズの元へ行く。
「おい、モズ大丈夫か?」
『空殿、追いついたようですね、どうか、海斗を戦線から下げてくださいあいつには…かなわ…な…い…』
モズは一時的に機能を停止し動かなくなった。
「また後で助ける。それよりもだ、皐月あいつがボスか?」
「ええ、間違いない」
ボスが皐月の姿を見るなり表情を変え皐月の元へ寄ってくる。
「俺を無視をすんな!」
「よせ!海斗!」
空の声に驚きその場から引くと、ボスは海斗のいた位置に折れた剣を振りかざす。
その剣は地面へ着くなり、その大地を砕いた。
「空!助かった!」
「あとは俺に任せろ」
空がボスの元へ近寄るなり徐々にその顔は鬼の形相と化していた。
「なんだお前」
「なんだ、聞いてないのか?俺は皐月のボディーガードだ」
ボスは何やら不敵な笑みを浮かべる。
「なるほどお前が。よくもかわいい俺の子分をやってくれたな」
「だからどうした」
「いやー、俺はね仲間を大事にするたちでね。だからさあいつらのためにも………死んで?」
ボスが空の上に剣を振りかざす。
空はその攻撃を避け、ボスに一太刀浴びせるがその攻撃は反対の手で容易く止められてしまった。
「いい反応じゃん」
「なんだその手は」
攻撃を止めたボスの手は金属でできていた。
「これか?これはな前にお前に似た男に切り落とされたんだよ」
「なるほど、そういう事かじゃあ次は手じゃなく命を切り落とす!」
「ほざけ!」
ボスの予想外の動きに対応しきれなかった空はその攻撃を受け流すもその反動で吹き飛ばされてしまう。
「空!」
空の元へ皐月が近寄る。
「大丈夫⁉︎空!」
「大丈夫だ」
空が横たわる姿を見た皐月は隠していたナイフを取り出しボスの方を睨む。
「なんだ?そんな顔して、せっかくのかわいい顔が台無しだぞ」
「黙れ!お前は私の父と母の命を奪った!あまつさえお前は私の大事なものを奪おうとする!そんな事許さない!」
「かかってこいよ。お嬢ちゃん」
皐月が大きく叫ぶとボスの元へナイフを突き立て襲いかかろうとする。
しかしそのナイフはボスの元へ届かず、その刃先は空の腹部へ刺さっていた。
「何をしてるの?」
「任せろって言っただろ、お前があいつを殺したところで親御さんは喜ばない」
「でもあいつは私がやらなきゃ!」
「大丈夫!俺がなんとかする、お前の重み俺にも背負わせろ!」
空は腹に刺さったナイフを引き抜きボスの方へ再び向かう。
「君なかなかキザじゃんお前。名前は?」
「空だ!そしてお前を殺す男の名前だ!覚えておけ!」
「は?何言ってんだ?」
ボスが気を抜いた隙に空は腹部へ潜り込む。
「気をぬくんじゃねーよ」
ボスの両腕が宙に舞い地面へ叩きつけられる。
「うグァァア!」
「戦闘中に気抜いてんじゃねーよ。じゃあなグズ野郎」
空はボスの首元へ刀を向ける。
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て……」
命乞いなど聞かずに空はその刀を振り下げる。
ボスの首は切り落とされ、皐月の元へ転がり込む。
「これで終わりだ…しっかし流石に無理しすぎたな…グハッ!」
空は口から血反吐を吐き、その場に倒れる。
皐月は空の元へ駆け寄りその体を受け止める。
「これで依頼は全部終わったぞ…」
空が疲れ果てた顔で皐月の方を見上げる。
「ありがとう…」
「いいんだ、それよりもちょっと疲れたから眠らせてもらうよ」
「うん…ちゃんと起きてね」
「任せとけ」
空は死んだように目を閉じた。
それから一週間後、空が目を覚ます。
目線の先には見知らぬ天井、横には疲れ果て眠る皐月の姿があった。
「ここは、そうか、倒れたのかあのあと」
皐月は空の声に驚き目を覚ます。
「お、起きたの⁉︎」
「お前が起きろって言ったんだろ」
「よかった!」
皐月は目を覚ましたばかりの空へ抱きつく。
「痛った!」
「ごめんなさい!」
「だ、大丈夫だ」
空は傷口を抑えながら周りを見渡す。
「みんなはどうしたんだ?」
「大丈夫ですよモズ?さんの体を治すパーツを探しているとかで」
「そうか、よかった。俺はどのくらい寝てた?」
「一週間くないかな」
「そんなにか!」
驚き飛び跳ねるも、傷口が痛みその場で蹲る。
その姿を見て皐月は微笑みながら口を開いた。
「私ね、決めたことがあるの」
「ん?何だ?」
「私も空の旅に同行することにした。一緒に行く理由は色々あるけど、やっぱり君ってばすぐ無茶するから目を離せないのよ全く」
「わかったよ」
空は静かに微笑み再び眠った。
「一緒に行くんだからもうちょっといい反応してくれてもいいのに…って、寝てるし」
翌日空が目を覚ますと、周りには仲間たちの姿があった。
「おら、早く着替えろ!」
「わかってるよ!」
空は着替えを済ませ仲間たちの元へ向かう。
空はバイクにエンジンをかけ、皐月と二人乗りをし、海斗が運転する車の後を追いこの街を後にした。




