砂漠の遺跡:A
旅商人の街を後にし、一行は砂漠の中を走り抜けていた。
新しく仲間が増えた事により車内は、より賑やかになっていた。
「暑いわね」
「暑いな」
「暑いって言うな、余計に暑くなる」
「我慢しろ、運転してる俺が一番暑い」
一行が街を抜け少しの間過ごしやすい荒野が続いていた。
だがしばらくすると雰囲気は一転し、みるみる草木が消えて行き、動物は居なくなるどころか動物の死骸や白骨となったものが多くなり、命の源である水すらも姿を消していた。
一行が見せていた余裕も、周りの風景が変わって行くごとに、落ちて行き今に至る。
「ねえ、水はまだ有ったっけ?」
「後、水筒三個半だな」
「嘘だろ空、もっとよく探してくれよ」
額に汗を浮かべ、疲れきった表情の海斗とリーチャオ。
彼らは燦々と照り輝く太陽の熱の他に、車のマフラーから出てくる熱気に今にも倒れそうだった。
「更に悪い知らせだ」
「止めろそれ以上悪い物を聞きたくない」
気にせず、話を続ける空。
「せめてもと、買っておいた果物達がこの暑さのせいでドライフルーツみたいになってる」
そういい、空から後部座席の二人に渡されたのは、乾ききり、水分のかけらも無くなったリンゴだった。
「もう嫌だー!ヘンリー次の街まであとどのくらいかかるんだ?」
「残念な事にまだまだかかる」
海斗とリーチャオは乾ききったその喉に一口水を流し込むと砂漠の真ん中で、叫んだ。
「「あああああああああああああ」」
それから、数時間が経っていた。
二人には叫ぶ元気も無く、既にぐったりとしていた。
「そもそもなんでこんな広い砂漠が続いてるんだよ」
海斗の疑問は的を得ていた。
四方八方に広がる砂漠、地平線じょうには蜃気楼すら出ている。
このような現状に疑問を抱く事は何もおかしな事ではなかった。
「以前俺が学者の手帳を本にした物を読んだ事がある。どうやら、俺たちの祖先に当たる繁栄していた頃の人類が多くの資源を使い果たした事が原因らしい。気を伐採し、ダムを建設し水を止める。それはもう勢いをつけながら干涸びていったらしい」
「マジかよ、恨もうと思っても同じ人間を恨まなきゃいけないのか。これじゃあ、恨みようにも恨めないな」
「同じ人間だろうが関係ないわよ。資源を枯渇させたせいで今こうやって私たちが苦しんでるんだもの、先を見据えて行動しなかった、過去の人類が悪いに決まってる」
「まあそんな事言うな。過去の人間達も生きる事に必死だったんだ、恨んでやるな」
「空、あんた一体どっちの見方なの?」
「さあね」
そうごまかし話がうやむやになりどこかやるせない気持ちになるリーチャオ。
ここまでの会話に一切入ってこなかったヘンリー、明らかに様子がおかしい。
「おい大丈夫か?」
空が肩を揺すると、砂漠の真ん中で急ブレーキをかけ、ヘンリーは運転席で倒れた。
「おいおい、本当にやばいんじゃないのか?」
「あんたが倒れたら、私たちここで終わりよ」
「そうだ、空の運転は荒々しくて乗ってる心地がしないんだ、頼むから起きてくれよ!」
「今聞き捨てなら無い事が聞こえたぞ。それは一体どういう事だ?」
空が鬼の形相で海斗を睨んでいた。
「お、おい、落ち着けって。今はヘンリーをどうにかしないとヤバいだろ」
「そうだな」
一度落ち着き、空は周りを見渡す。
空が目にしたのは、砂漠の中で一際存在感を放っている、大きな遺跡だった。
「仕方ない。二人とも、『俺の運転で』ヘンリーをあそこまで連れていくぞ」
ヘンリーを後部座席へ移し一行は遺跡へと向かった。
空の運転に酔い、嘔吐する海斗。
戦力にならない海斗を置いて、残りの二人でヘンリーを遺跡の中へと運んだ。
「おいおいどうした?そんなに吐いて」
嫌みな笑顔を見せる空。
「うるせーな。お前の運転のせいだよ!」
海斗が空に飛びかかり取っ組み合いの喧嘩を始める。
そんな二人を見るリーチャオは死んだ魚のような目だった。
「そんな事してないで、誰か車から水持って来て」
二人の頭を殴り、二人を静まらせた。
「「はい....」」
空達の介抱によりヘンリーの顔色がみるみる良くなっていく。
「う..ここは?」
「やっと目を覚ましたか。ここは砂漠の中にある遺跡の中だ」
「すまないな」
「何がだ?」
「俺が倒れたばっかりに、こんな事になって」
「いいって。気にすんな」
「空と海斗の言う通り、何より大事なのはあんたの健康だから」
「本当に有り難う。ところで、なんで其処の二人はボロボロなんだ?」
リーチャオが気にするなと、少量の血が付いた右手を隠したのを見てヘンリーは納得した。
「私から提案なんだけど」
「何だ?変な事言うんじゃないだろうな」
「変な事って何よ。ヘンリーが目を覚ましたからこの遺跡を探索してみない?」
「俺はまだダメだ」
「分かった、じゃあ、海斗はここに残ってヘンリーの面倒を見てて。私と空で行くから」
半ば強引に空を連れて行く事にし、二人は遺跡を探索する事にした。




