お披露目の件
今日もよろしくお願いします!
朝早く鏡を覗いて自分の顔色を確かめる。
ただでさえ色白シルフィーヌはまだゲッソリ青い顔だ。
急性胃炎、ひどいと入院するもんな・・・
ん~っ、この顔はちょっと無理だ・・やっぱり今日はやめておこうか・・
今日は朝からルナ姫とユリアスの祝賀パレードと王宮のバルコニーから国民に二人の姿をお披露目する参賀があるのだ。
凄く見たかったのにな・・・・
俺は心配する別宅の侍女達に
「今日は誰も取り次がないで。気分がすぐれないの。お願いね?」
って初めてわがままを言ってベットに突っ伏す。
これは凄くみんなに新鮮だったらしい。初めてお嬢様が甘えてくれたとかなんとか、なんか黄色い声が廊下から聞こえた。
そして大人しく放置された。
半時だけ。
「シルフィーヌ」
ん・・・・あ、お父様。
「おはようござ」
「いい。今日は寝ておけ。両陛下には私が断る」
えっ?何?また何かあるの?
「心配しなくていい。じゃあ、行ってくるからな?」
「行ってらっしゃいませ」
俺の頭グリグリ撫でて出て行った。
お父様に手を振り、まぁ、いいか・・・・とうつらうつらする。
「シルフィーヌ」
あ、お兄様。
「おはよ」
「いい。王子は私が何とかするから心配するな。ゆっくり休め」
「えっ?」
「いいから。じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
また頭グリグリされる。バイバイお兄様。今日、レオリオ何も約束してないけど?
まぁ、お兄様なら大丈夫だろう・・・・・眠い・・
「シルフィーヌ様」
あ、カレブ。
「おはよう。大丈夫、起きるわ」
「いいえ。おやすみのところ申し訳ございません。バルト様がお見舞いにこれを。また、夕方いらっしゃるとの事です」
「まぁ、綺麗なお花。ありがとう、嬉しいわと伝えて」
「畏まりました」
「シルフィーヌ様」
あ、マヤ先生。アントワート家、主治医の女医さんだ。
「おはようございます。マヤ先生」
「ご気分、優れませんか?ちょっと見せて頂けますか?」
「はい。お願い致します」
「シルフィーヌ様が私にかかられるなんて本当に珍しい事ですから・・・・ああ、顔色もだいぶん良くなられましたね。ああ、痛みは無さそうですね?」
「あ、そうですね?痛みはもうないですね」
「相変わらず凄い回復力ですよね?本当にルカ様といい、シルフィーヌ様といい、丈夫ですよね?はい、もうこれを飲んで頂いたら随分楽になられますよ。安心致しました」
侍女が水を差し出したので先生に貰った粉薬を飲む。
ウゲッ、苦い。
また、先生を送り出して惰眠を貪る・・・・
「シルフィーヌ」
ん・・・・またか?
「シルフィーヌ、大丈夫かい?」
えっ?・・・・俺、寝ぼけてるの?レオリオの声聞こえるんだけど?
「ん、ん?・・・・?えっ!!」
「大丈夫かい?僕のシルフィーヌ」
レオリオが覗きこんでる・・・?
え!?
なんで?!
なんで俺の寝室にレオリオ居るの!?
「王子!!」
バタンッ!!と勢いよくドアが開くとカレブが入って来てレオリオに声をかける。
まずい!!カレブ凄く怒ってるぞ!
これは侍女達の制止も聞かずに俺の部屋に入ったな、レオリオ。
急いで上半身をベットから起こし俺がカレブを制止する。
「カレブ、いいから、下がりなさい」
「しかし!お嬢様!!」
「カレブ、何もしない。顔を、シルフィーヌの顔を見に来ただけだから」
そんなカレブにレオリオは落ち着きはらった声で振り返りもせず俺を見つめたまま言う。
「下がりなさい」
俺が再度声を出すとカレブは凄く不満顔ではあるが
「・・・・・・・・失礼致しました」
とドアは開けたままだが退室をした。
やれやれ・・・
「レオ・・・・お願い。隣の部屋で待っていて下さいませんか?直ぐに着替えますから」
何か俺、ネグリジェ姿ばっかりだな。今日のはちょっとなんだ、その、可愛いピンクだから何だか恥ずかしいんだが・・・
そんな俺の赤い頬をレオリオが撫でる。
「いい。何もしないから。ただ心配で。顔が見たかったんだ」
いや、もう、触ってるけど?
仕方ないのでその手に手を重ね笑いかけた。
「もうこの通り。大丈夫ですから。ね?安心して下さい」
レオリオが俺を自分の胸に抱き寄せる。
ん、あれ?今何時だ?
「レオ!今、何時です!?」
レオリオの胸から顔を上げた。
「もうすぐ10時くらいかな?」
何か俺の腰に手を回しかけたレオリオの手を掴む。
「ええっ!?何してるんですか!今日宮殿での参賀、出るんですよね?」
「シルフィーヌ出ないからいいよ」
その掴んだ俺の手も気にせず腰を抱き込もうとする。
「何言ってるんですか!さあ、早く帰って下さい!」
「君の側がいい」
あ、無理矢理抱き込まれたし。
こら、頭にキスするな。こらこら、何もしないんだろ?
「レオ、何わがまま・・・・」
今度は素早く俺にキスをする。触れるだけのキスだが。
「君が足りない」
また、キスをする。今度はちょっと長め。
仕方ないのでキスを返すけどこれ以上は押し倒されそうだから
レオリオの口を両手で押さえた。
そして
「レオ、王宮に連れて行って?参賀終わってから続きね?」
今日は惰眠を貪りたかった・・・・
今日はベットでゴロゴロしたかった・・・・
なのにだ!
俺は今宮殿の俺の部屋でドレスアップ中だ。
もう直、ルナ姫とユリアスが王都でのパレードからこの王宮に戻って来る。
そうしたら王宮の正面広場にあるバルコニーから国民に挨拶だ。参賀では始めに両陛下がその健在ぶりを国民に示す。次期王位継承者の王子も続くのは当たり前の事だ。
トンズラするなんて以ての外だ。
俺はレオリオがちゃんと参賀に出る為に付き添う事にした。
それだけのつもりだったのに・・・・
王宮に着いた俺を見た王妃様はサッサと侍女達にドレスアップを命じて今に至る。
「シルフィーヌ様、レオリオ王子がお迎えです」
女官長のサバスが俺に声をかける。サバスはまるでロッテン○イヤーさんのような婦人でとても厳格な人だ。(俺はアーデルハ○ドじゃないよ?あ、クラ○か?)
「本当に出なきゃダメかしら?サバス?」
なんで俺まで挨拶しなきゃいけないんだよ?
「シルフィーヌ様は王族でございますから。胸を張って次期王妃様としてレオリオ王子の横にお立ち下さい」
「サバス、やだ」
やだよ。納得いかねぇ!
「おや?シルフィーヌ様、お珍しい。わがままですか?」
「だってまだ国民には私の事は公ではないでしょう?」
「婚約しておられます」
「それだけよ?まだ結婚してないし、・・・・」
「宰相のお父様には許可を頂いております。ご心配なさらず。横に立っていれば良いだけですよ。笑っていれば宜しいかと」
いや、それ、おかしいよ?
「シルフィーヌ」レオリオがドア越しに名前を呼ぶ。
「レオリオ様、お待ちを!」
サバスがキリリとした声でバシッ!と言い切る。
「サバス、何て紹介するの?私の事」
「本日はアントワート家ご令嬢と」
「ふーん。他の大臣達は構わなくて?」
「何の心配ですか?シルフィーヌ様以上のお妃候補はいらっしゃいません。今日もあのわがまま王子を捕まえて連れ戻りました。お見事ですわ」
サバスが俺の耳許で囁いてニッコリ笑った。
・・・・レオリオ、やっぱり城抜け出したんだな・・・・
「さあ、シルフィーヌ様、お覚悟を。さあ!」
俺はため息を着いて立ち上がった。
「レオリオ様、お待たせ致しました」
俺がレオリオに声をかけるとレオリオはすごく嬉しそうに頬を染めて俺の側に来ると手を握り絞め抱き寄せようとする。
「ああ、とても綺麗だよ。シルフィーヌ」
「コホン!レオリオ様、化粧がとれますのでキスは禁止です」
「・・・・・・わかった。サバス」
「それからドレスもシワに成りますので抱き締めるのも禁止です」
「・・・・ああ、サバス」
「それから」
「わかった。サバス。丁重に扱う」
「わかっていらっしゃいます?ほう?わかっていらっしゃいますか?ハイハイ」
「サバス・・・・シルフィーヌを大事にするから」
「重々お願い致しますね。王子」
サバス・・・・強い。さすが女官長。
それにコホン!って前置きほんとにするんだな?
「シルフィーヌ、さぁ」
差し出すレオリオの腕にそっと自分の両手を添え横に並ぶ。
白地にエメラルド色を貴重にした正装に身を包むレオリオは立派な王子様だ。俺に向ける笑顔もとても爽やかで美しい。
ああ、なんて理想の王子様なんだろう。
「シルフィーヌ、とても綺麗だよ。とても」
「あ、はい。とても嬉しいわ。レオも素敵です」
俺もレオリオに合わせた白とエメラルド色を貴重にした絹の豪華な刺繍とパールがふんだんに織り込まれたドレスで俺の長い首や手は繊細なレースがスマートに包み込み細い腰を強調するように後ろに長いフリルが幾重にも重ねられてとても長いロングトレーン(引き裾)になっている。耳許にはレオリオのバラが髪に編み込まれ頭には小ぶりのパールのティアラが乗っている。唇もピンクのグロスでプルプルだ。
良かったよ。目元の隈とれてるや・・・
・・・でもこれさ?なんかウェディングドレスっぽくないか?・・・いつ、作ったんだろう?
いいのか?俺?今日これ着てみんなの前出て?
「あ、あのレオ?私・・・・いいのかな?こんな格好でレオと並んで」
「フフッ、結婚式みたいだよね?」
「えっ?えっ?どうしよう、やっぱり?・・・どうしよう、レオ!」
「かわいい。顔、真っ赤だ。シルフィーヌ。キスしたいよ」
「えっ!?ダメだから」
止めろ!隙あらばそれか?お前は!
「後にとっとくよ。さあ、次だからね?」
前を歩く両陛下がバルコニーに進むとドッと歓声が湧いた。
いつも飽きずに読んで頂き本当に感謝です。
毎日読んで頂いてる皆様へ。
毎日更新は明後日で一段落させますね。
整理をしながらゆっくり更新に切り替えますね。
本当に毎日楽しんで頂いた皆様にスペシャルサンクスです!!




