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呑み込むもの6の件

「「「「はッ・・・?」」」」


更に調子に乗ったヤガーはビシッ!と偉そうに俺達に向かい指をさすと鼻息荒く更にまくし立てる。

「なんだ、お前たち!その間抜け面は?我がシルフィーヌ姫に己の命を与えたから助かったと言っても過言ではなかろう?我とてサンタマリスの生命力(パワー)を吸い込むまでは獣神の姿を保つのがやっとなくらい・・・いや、うおッほぉぉん!!・・・だから、だからだな?帝国の姫と嬢ちゃんまでもだ!我は手厚く、手厚くだな?危険な状態から守ったのにだな?シルフィーヌ姫、そなたは我をまるで馬のように縛ったのだぞッ?!無礼な!まったくもって無礼なッ!」



「ヤガー・・・」

そんなヤガーの怒りはスルーで一馬がヤガーの胸倉をつかむ。

「な、なんだッ?」

「無礼は貴様だ。人に向かって指をさすな。それなら俺とソロモンの企ては最初からお前に潰されたようなものだ。お前、最初から『等価交換』なぞ出来ないのだろう?」

「なんと言う、言い草!それにまたお前は暴力に訴えるのか!?このッ、野蛮人めがッ!」

「野獣のお前が野蛮人か?いいから答えろヤガー。でないと・・・引っこ抜くぞ」

そう言って一馬の目線がヤガーの胸元から下へと降りて行く。


一馬・・・耳ではない、他に生えてる長物を引っこ抜くのはやめろ・・・。


「し、しっぽには触れさせんからな!」

ちょっと青くなったヤガーがそれでも叫んだ。


あ、そっちの方が大事なんだ・・・

って、そっちじゃなくて、兄貴、『等価交換』って言ったのか?


更にハルクは掴んだヤガーを自分の顔、ま正面に引き寄せると赤い瞳を光らせる。


「出来ないのだろう?お前には?」


「!!、もう我慢の限界だッ!貴様!我の力でヴァルナではなく、お前自身を葬り去ってやるッ!!」


そんな一触即発状態のハルクとヤガーを俺とアイリーンとレクサスが止めに入る。

「やめろよ、兄貴。今、仲間割れをしている場合じゃないだろう?それにヤガーはアイリーンとレクサスをちゃんと守っていてくれてたじゃないか?」

「一馬、お願いです。ヤガー様は本当に私を、レクサス様を守って下さいましたわ。それに一馬の元に連れて来て下さったのはヤガー様なのです」

「ヤガーやめてよ。僕は貴方の事も力も信じてるよ?ハルクも、やめて下さい。ソロモン王はヤガーを信じてたよ?」


「・・・・・、チッ!!」

ハルクがヤガーの胸を突き飛ばすように放した。


するとさっきまでの威勢はどこに行ったのか、ヤガーが青い顔のまま、ちょっとよろけた。

俺が急いで後ろから支える。


「大丈夫?ヤガー?」


するとヤガーは振り返って俺を見つめた。


あ、耳、垂れてる・・・ちょっと怖かったのかな?ハルクの事・・・


仕方ないのでニッコリ笑って手を握ってやると意外だが素直に握り返した。


そして、

「これから起こることを考えれば我々に協力するとは思えぬミトラよりこのように素直でかわいいシルフィーヌ姫の方がよいわ。あの、ソロモンがミトラ、ヴァルナには手こずったのだぞ?それに『勾玉巴』の奥底の力をミトラが使えるかどうかもわからなかったしな。我が必要だったのは我の魔核に近い『勾玉巴』の能力よ。現に姫は我より先にサンタマリスの力を飽和させたではないか?」

ヤガーは俺の両手を自分の両手でギュっと握り締めると前世の兄貴のその顔で真剣に見つめる。


「見事だ。我と同じ力を持つ姫よ」


「・・・・それはどうも。それより、『等価交換』って?どういう事なのヤガー?本当にそんな事が可能だと?」

「可能だとも、シルフィーヌ姫。我とこのサンタマリスが起こすこの『奇跡』の夜ならば今すぐ始めようではないか?ミトラの魂をサンタマリスに捧げ、姫の宿命を解き放ち、新しく運命を与えようではないか?」

「『宿命を解き放ち、運命を与える』だって???」

「さよう、姫の命を命で補う、その方法(メソッド)が『等価交換』よ」

ヤガーが兄貴と同じ声色で俺の髪に手を伸ばす。


「ヤガー・・・。一度失われた命は元には戻らない。まして亡くなった命を他の命に置き換えて蘇らせるなんてことは出来ないよ?出来るとしたらそれは器である肉体に新しい魂を送り込むことだけだよ。つまりは俺の場合はシルフィーヌの体から俺の魂だけを消滅させてもう一つのミトラの魂を残し完全なミトラになるだけだよ」

「それは魂の()げ替えだな。違うな?シルフィーヌ姫。我の力は既にそなたに行ったようにそなたの魂に生命力(パワー)を送りその命に活力を与えること。だがしかし、これは一時しのぎで応急処置であってな?そなたの寿命を延はした訳ではないのだ。寿命とはそなたの魂がいくら生命力(パワー)にみち溢れていてもその時がくれば魂が勝手に滅びると言うことだ。姫」

生命力(パワー)の残量の問題ではなくて時間?」

「そう、正解だ。人は時間で管理されているのだよ。だから我が姫よ、サンタクラークに生命力(パワー)を奪われて貴女の寿命が短くなったのではないと言う事も理解したか?」

生命力(パワー)が衰えていく病死や老衰だけではなく、事故死や殺し合いで突然、奪われる命があるのがその証拠だと?」

「そうだ。さすが、(さと)い、(さと)い」

そう言って今度は俺の頭を撫でた。


別に嫌な気がしないのはやはりそのヤガーの顔が一馬で兄貴に褒められていると言う錯覚を起こすからだろうか・・・


「なら時間を管理するこの世界の神、ソロモンにしかやはり俺は、シルフィーヌは助けることが出来ないんじゃないか?いや、それすらソロモンは毎日、俺の時をこまめに止めて制御していただけに過ぎない・・・?」


「この地上に降り立った『()()()』ソロモンなど、所詮、人間の存在能力に少し毛が生えただけの神モドキよ。まあ?カルマ一族の一部だけは先祖返りを繰り返す特異な体質であったから『印』の中にあるアイテムの使い方も潜在意識の中に残っていたらしい。ソロモンがこの世界の神として再びこの世に産まれて来れたのがその証拠よ。だがな?我が姫よ。その『もと神』の神モドキでもな?500年に一度現れる『四大奇跡』の晩には奇跡を起せるのよ。この、我、ヤガーの魔核があれば不可能とされる『命』の等価交換も可能にさせる奇跡をな?」




寿命は生命力(パワー)ではなくて時間の管理・・・

『四大奇跡』は寿命の時間を変えることが出来る・・・

ソロモン王は『印』持ちで時間の管理が出来る・・・

ヤガーは俺と同じく生命力(パワー)を操る・・・

俺と同じく生命力(パワー)を吸って、吐いて、呼吸のようにサンタマリスを操れる・・・

サンタマリスを操れる・・・

サンタマリス・・・『四大奇跡』・・・時間の管理を変えることが出来る・・・

俺の寿命の時間は・・・?短くなった・・・?


まさか・・・?


「まさか・・・『四大奇跡』って・・・もしかして時間の巻き戻しをする・・・?」


「クッ!本当に、本当に、我の姫は・・・・!」

嬉しそうに猫耳一馬のヤガーが俺をその胸に抱き寄せ笑う。


「時間を・・・?まさか」

アイリーンが驚き、

「巻き戻すだって?そんなこと」

レクサスが否定し、

「だったら過去に戻るのか?」

ハルクが推理する。


「ああ、そうよ。時間が巻き戻る唯一の空間よ。だがな?ハルク、過去には戻らない。まして、時間旅行(タイムスリップ)はありえない。あるのは」


「「「あるのは?」」」


「運命への変換よ」


「「「運命への・・・変換???」」」


「そう、お前達に『運命』が与えられる」


「ハッ?意味が?運命?運命だって?運命など時間や寿命とどうかかわりがあるって言うんだッ?!」

兄貴が声を荒げるのと同時にレクサスも叫ぶ。

「そうだよッ!、それに運命なんて与えられるもんじゃ」




「違う・・・」


自分の口から思わず漏れてしまったそんな否定の呟きに俺は否定したくなって更に首を振った。


「え?なに?シルフィーヌ?」

レクサスがヤガーに抱きかかえられた俺に手を伸ばす。

「なんだ?亮?」

兄貴もヤガーの胸に手をついて首を振る俺の肩を掴もうとする。


「兄貴。レクサス・・・。信じたくないけどさ?俺達が今、背負っているのは『宿命』なんだよ。俺達『印』持ちは決められた道を歩かされる『宿命』をその名の通り命に宿して生まれて来るんだよ。それは誰かがプログラミングした創られた人生だ。それは自分の意思では()()()()()()()()()なんだ」

「そうだ、お前達『印』持ちは『宿命』を逃れることは出来ない。そう言うふうに出来てるんだ。『印』持ちは」

ヤガーが俺の言葉を肯定する。

「だけど、『運命』は違う。自分で歩いて、探して、努力して、そうやって手をのばして自分で未来を切り開いて自分の命を次の場面(シーン)に運んで行くことが『運命』なんだよ」

「シルフィーヌ姫の言う通り。今のお前達は『運命』ではなくて与えられた人生をただ、自分の意思とは関係なく、全うさせられる『宿命』を背負っているだけ。だからそのプログラミングされた『宿命』を(クリア)してしまうと」


「「(クリア)してしまうと?」」


「『死』が待つのみだ。なぜなら存在意義がなくなるのだからな?」



そのヤガーの言葉と同時に頭上から眩い光が降って来た。







 




やっと、会社のイベントも一つを残すのみ。

何とか亮君達の話、続き書けそうです。


今日も長い話にお付き合い下さりありがとうございました!

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