その18 家族
スマホの地図を片手に会場近くのコンビニまで歩く。梅雨時期特有の嫌な暑さに舌打ちしそうになる。暑いぜ。ハンカチで汗を拭う。山重さんは汗ひとつ見えない。タフだなぁ。
「あ、ごめんなさい。さっきの道、右でした」
『あら。それでどうする?引き返す?リカバリーできそう?』
「んー、どうします?少し遠回りになってもそのまま行けますよ。引き返した方が少しだけ早いです」
『じゃ、そのままでいいかな』
「ごめんなさい、うっかりしてました」
『いいよ。その代わり、なにか話してよ』
「なにが聞きたいです?」
『じゃあ、君の家族の話してよ』
「いいですよ。俺の母親は普通に主婦やってます。関西弁が抜けきらないやかましい母親です」
『君も関西弁話せるの?』
「いやまぁ、些か話せますけど」
『ちょっと聞かしてよ』
「なにゆーてんお姉さん、んな話されたっておもんないやろ。ワレかて関西弁苦手やねん」
『あはは。迫力あるね』
「ワレのオトンはただの会社員やね。会社員ゆーても結構稼いでるらしいは。知らんけど。オトンなんか会社で人気らしーから、色々お土産持って帰ってくるねんな。ありがたやぁーって思うけど、大体酒のツマミやねんな。うちのオトン下戸やのになーんであんな貰うんやろなぁ」
『ふーん』
「んで、俺の姉ちゃんは今結婚して東京にいるな。確か東京のコンビニでバイトしてるはずです」
『あ、既婚者なの?』
「はい。旦那さん怖いんですよね。まぁ会う度に拉致気味に飯奢ってくれるからいい人ではあるんですよ。俺と弟まとめてジープに乗っけて焼肉行くんですよ。口癖が『あ?まだ食えるやろ?』ですよ」
『いい人だね』
「んで兄ちゃんは今香川でラーメン作ってます」
『・・・うどんじゃあなくて?』
「はい。チェーン店のラーメンのスープ作ってます」
『ふーん』
「んで、弟ですね。今小6です。生意気盛りで俺んこと兄者って呼ぶんですよ。なんの影響かは知りません」
『随分個性的な面々だね』
「まぁ、俺と血が繋がってたらこんな感じになりそうですよね」
『私はお母さん、お父さん、後は猫とモルトが家にいるよ』
「はぇー猫いるんですか」
『写真見たい?』
「是非」
スマホから猫の写真を見せられた。
「あらら。可愛い」
何枚も見せてくれた。
『これ、お気に入れなの』
山重さんのお腹の上に猫が乗ってる写真だ。
「・・・」
えっと、多分この山重さんシャツとパンツだけだな。猫の後ろにはしまった生足が見える。
「あはは、ありがとうございました」
目を逸らす。んー、女の子の生足とか見慣れてるはずなのに、童貞みたいな反応しちゃった。
「あ、もうすぐ着きますよ」




