第7話 「外の世界の気配」
第7話 「外の世界の気配」
「――ここが居住区」
リナに案内されて、俺は施設の別エリアに来ていた。
訓練区画とは違って、少しだけ生活感がある。
白い廊下に、並ぶドア。
寮みたいな感じだ。
「しばらくはここで生活ね」
「しばらくって、どれくらいだよ」
「さぁ?」
適当すぎるだろ。
「君の部屋はここだ」
リナが一つのドアの前で止まる。
カードキーをかざすと、静かにロックが外れた。
「どうぞ」
中に入る。
思ったより広い。
ベッド、机、クローゼット。
シンプルだけど、必要なものは揃ってる。
「……普通だな」
正直な感想。
もっと牢屋みたいなの想像してた。
「一応“保護”だからね」
リナが肩をすくめる。
「最低限の生活は保証されてる」
「へぇ」
ベッドに座る。
柔らかい。
昨日までの状況を考えると、だいぶマシだ。
「……なんか変な感じだな」
「何が?」
「昨日まで家追い出されてたのに、今日これだぞ」
「人生ってそんなもんでしょ」
軽いな。
「で、あんた」
リナが腕を組む。
「これからどうするの?」
「どうするって?」
「ここでやってく覚悟、あるのかってこと」
少しだけ考える。
答えはもう出てる。
「……やるしかねぇだろ」
「即答じゃん」
「逃げらんねぇしな」
それに――
「ちょっとだけ、興味ある」
「興味?」
「この力」
自分の手を見る。
「何ができるのか」
リナは少しだけ黙って、
「……そっか」
小さく頷いた。
そのときだった。
ピーッ。
廊下に電子音が響く。
「……ん?」
リナが顔を上げる。
「何今の」
次の瞬間、館内放送が流れた。
『全職員に通達。第3区画にて異常反応を確認』
『非戦闘員は直ちに退避』
『戦闘員は配置につけ』
空気が、一瞬で変わった。
「……マジ?」
リナの表情が引き締まる。
さっきまでの軽さが消えていた。
「異常反応って……」
思わず聞く。
リナは短く答えた。
「外から来たやつ」
「外?」
「そ」
リナはすぐにドアへ向かう。
「簡単に言えば――敵」
ドアを開ける。
廊下には、さっきまでいなかった人影が増えていた。
全員、どこか緊張した顔をしている。
「ちょっと待て」
慌てて声をかける。
「俺はどうすりゃいい」
「部屋で待機」
即答だった。
「は?」
「まだあんたは実戦無理」
リナは振り返らない。
「さっきの状態じゃ、味方巻き込む」
ぐうの音も出ない。
「でも」
思わず口を開く。
「見てぇ」
リナの足が止まる。
「……は?」
「外のやつ、どんなのか」
自分でも分かってる。
危ないってことくらい。
でも――
「知らないままは嫌だ」
数秒の沈黙。
「……はぁ」
リナがため息をつく。
「ほんと面倒」
そう言いながら振り返る。
「絶対、勝手なことすんなよ?」
「……いいのか?」
「監視役だからね」
肩をすくめる。
「近くで見といた方が安全」
「ただし」
一歩近づいてくる。
「やばくなったら、即止める」
「……分かってる」
「じゃ、行くよ」
リナが歩き出す。
俺もその後を追う。
向かう先は、第3区画。
さっきまでの日常とは違う、何かが起きている場所。
廊下を進むたびに、空気が重くなる。
遠くから、微かな振動が伝わってくる。
「……これ」
思わず呟く。
「本当にやばいやつか?」
「さぁね」
リナは短く答える。
「でも――」
一瞬だけ視線を横に向けて、
「退屈はしないよ」
その言葉の直後。
ドンッ!!
遠くで、大きな衝撃音が響いた。
「……来た」
リナの声が低くなる。
俺たちは、その現場へと向かっていた。




