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全滅したパーティーを救うため、二周目は未来の知識で俺TUEEE……するはずが、敵が本気出してきちゃった件。  作者: 久喜崎


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第60話「信頼の果てに」

レイドが自身のすべての魂と風の魔力を純白に圧縮して放った絶技『風迅・穿突』の必殺の一撃が、何重にも折り重なった分厚い大理石の石壁をまるでのりのついた紙のように一直線に深く貫通し。

 迷宮の最深部の中心にある、この悪趣味な隔離空間システムの一切の管理の中枢――第三柱である『機巧の神官』の本体が鎮座する、強固な防衛魔力に守られたシステム制御室の巨大な鋼鉄の扉を、ただの一発で完全に粉砕して吹き飛ばした。


「馬鹿な……!? あり得ない、私の中枢にダイレクトに到達するだと!? 私の完璧な精神分析の行動計算では、君はあの二枚の鏡を前にして過去の記憶のトラウマにひどく苛まれ、合理的な判断を完全に失ってただ泣き叫び、死の二択の選択に狂って自滅するはずだった!」

 制御室の奥で、無数の管につながれた巨大な魔導盤を操作していた機械仕掛けの異形の神官が、信じられないものを見る驚愕の目で、粉々になった扉の瓦礫を背にして入ってきたレイドを振り向く。その顔の半分を覆う機械のレンズが、エラーを告げる激しい赤い警告音のランプをチカチカと不快に鳴らしている。


「過去にとらわれて、あのくだらないモニターの映像みたいな紙芝居しか見えてなかったのはお前の方だ。たしかに、一周目のあの絶望の過去の俺なら……今のようにお前を殴ることもできず、ただその安っぽい鏡の前で二人の仲間の死を前にして、狂って絶望して血の涙を流していただろうな」


 レイドが静かに舞う冷たい土埃の中から進み出て、ゆっくりと熱を帯びた長剣を下ろして神官を氷のように冷徹に見据える。


「だが、残念ながら今の俺の横には、一緒に笑ってくれる最強の『仲間』がいる。お前のあのちっぽけな箱庭の安いシステムで計算できるような、誰かの犠牲の上にしか成り立たない、そんな薄っぺらい安い絆で結ばれたただの仲良しごっこの冒険者パーティーじゃない」


「……ええい、小癪な! 私の思考計算を上回る行動など、神の前ではただの偶然のノイズに過ぎん! ならば私のこの完璧な本体の純粋な物理の出力の全力で、君自身を直接ここで跡形もなくミンチのスクラップにして――」

 神官がギリギリと歯車を鳴らしながら自身の右の機械の腕を巨大な砲身へと変形させ、致死の威力の高出力の魔力砲をレイドの顔面へと真っ直ぐに向けようとした、まさにその一瞬のことだった。


 ドゴォォォォォォォォォォンッ!!

 という、空を割るような二つの凄まじい壁の破壊音が。


 神官の立っている死角の背後にある強固な壁と、その遥か頭上の高い天窓の強化ガラスが、全く同時に両方から弾け飛んで吹き飛んだ。


「お待たせ、レイド。やっぱり壁を真っ直ぐ抜いた一番乗りの到着はあなただったわね。私は上に登るのに少しだけ遠回りしちゃった」

 粉々に割れた天窓から、夕焼けの逆光とキラキラと光るガラスの雨の破片とともに、美しい羽衣のように舞い降りたセレナが。着地と同時に神官の魔力砲が装備された右腕の巨大な関節の動力部めがけ、完全にチャージされた三本の雷の銀矢を完璧なタイミングで打ち込み、その忌まわしい砲台の発射機構を完全に内側から破壊して沈黙させた。


「ハァッ! クソッ、いくら幻覚とはいえ、俺の前の壁だけほかのルートより異常に分厚くて手間取ったぜ! レイドのことだから、変な安い映像見てまた一人でだらしねぇ顔して泣いてんじゃねえかと思って急いできたのによ!」

 背後の吹き飛んだ分厚い壁の巨大な瓦礫を、ブルドーザーのように軽々と押し除けながら。無傷の大盾を構えたガルドが土埃の中からドカドカと豪快な笑い声と共に姿を現す。

 その後ろの開いた風穴のルートからは、彼に守られて全く汗一つかいていない、涼しい顔をした魔法使いのリーネが、チョンチョンとローブの埃を払いながら静かに歩いてきた。


「……あり、得ない」


 五柱の第三柱たる『機巧の神官』が、初めて恐怖という感情を学習したかのように、ガシャンと重い音を立てて絶望的に一歩後ずさる。


「私の完璧なる空間遮断の隔離システムを……なんの外的要因もなく、内側からの単純な四人の物理破壊と魔力解除による強引なこじ開けだけで、わずか数分で完全に突破するだと? 矮小であるはずのただの人間の魔力量と筋力ごときに、私の迷宮を完全に崩壊させるほどのそんな異常な巨大な出力が出せるはずが……」


「俺たちの強さを、あんな箱庭の過去のデータと同じだと思って見下して計算したのが、お前の一番の愚かで致命的な敗因なんだよ、三流の鉄屑野郎」

 ガルドが大盾を低く構え、神官へと重戦車のように向かっていく突撃の構えを取る。


「レイドの大切な過去のトラウマをほじくり出して最低な悪趣味で弄んだ借りは、その機械のレンズの目玉に矢を打ち込んで、一つ残らずきっちりと割って返させてもらうわよ」

 セレナが新たに自らの弓に、純度の高い魔力を帯びた三本の光の矢をつがえる。


「リーネ!」

「ええっ、任せて!」

 レイドの短く鋭い掛け声に合わせ、後衛で杖を構えたリーネの特大の追い風の精霊の加護が、前衛の三人の武器と背中へと一気に強力な推進力のバフとして付与される。


「行こうぜ。自分では手を汚さずにあんな箱庭の中でコソコソ隠れてた教団のハッタリ野郎に……俺たちの、現在いまの最強の四人の力を力尽くで叩き込んでやる!」


 レイド、ガルド、セレナの三人が、リーネの風に乗って同時に第三柱の神官の巨体に向けて弾かれたように跳躍した。

 神官が慌てて残った左腕から広範囲の迎撃の魔法障壁を展開しようとするが、先頭のガルドの重い大盾のシールドバッシュが、その分厚い壁の展開を一切の抵抗を許さずに紙切れのように一撃で粉砕。

 障壁の剥がれた無防備な機巧の身体に、空中のセレナの高火力の雷の矢が、すべての駆動系の関節の隙間を寸分の狂いもなく正確に撃ち抜き、その巨体の身動きを完全に電気でショートさせて封じ込める。


 そして最後は。過去の幻影を完全に断ち切った、一点の曇りもない澄み切ったレイドの白き刃の長剣が。

 風の極大の螺旋を纏って、神官の最も硬い中心核である胸部の真紅の分厚い動力水晶を、機械の分厚い装甲ごと、紙のように綺麗に真っ二つに音もなく両断した。


「ギ、ギギギギギ……計算、不能……不条理なる、強さ……。想定外の、光の、絆……ッ」

 耳障りな電子音のような断末魔と、大量の真っ黒なオイルの血を吹き出しながら。五柱の第三柱・機巧の神官は完全にそのすべての機能を停止し、ただの焼け焦げた鉄屑のスクラップの塊となって音を立てて地面へと完全に崩れ落ちた。


 パァァァァァンッ……!!


 神官の本体の死と完全に同時に、彼ら四人を囲んでいた巨大な迷宮空間の石壁が、まるで蜃気楼のように音もなく霧散して砂となって消え去り。

 四人は再び、幻覚の壁が消え去ったことで、見慣れた本来のグラシアへ続く街道の少しひらけた荒野のど真ん中に、しっかりと足をつけて立っていることに気づいた。

 西の空にはすでに太陽が沈みかけ、燃えるような美しいオレンジ色のあたたかい夕焼けが、戦いを終えた彼らの四つの長い影を地上に優しく照らしている。


「ふう……どうやら、あの巨大な迷宮そのものも、敵の大規模な魔力を使った壮大なただの幻覚装置の隔離空間だったみたいね。危うく死を信じさせられて騙されるところだったわ」

 セレナが自身の弓を背中に美しくしまいながら、軽く安堵の息を吐く。


「……おう、レイド。お前、さっきの鏡の世界で、セレナが死にかけてマジで焦って泣いてただろう?」

「してない。ただ、少しだけ……『アイツらなら絶対に自分の力でなんとかできる』って、ただの冒険者であるお前たちの本当の強さを信じ抜くのに、ほんのちょっとだけ歯を食いしばって我慢しただけだ」

 レイドが冗談めかして笑いながらからかってくるガルドの大きな腹を、自身の肘で軽く小突いて笑う。


「……うん。あの時、レイドが私たちの力を信じて待っててくれたのが伝わったから。私たちも、何の迷いも不安もなくあの分厚い壁をぶち抜いて前に進むことができたのよ」

 リーネが一歩前に出て、夕日に照らされたレイドの横顔を見て、最高に嬉しそうに太陽のように優しく微笑んだ。


 四人は静かに顔を見合わせ、そして誰からともなく、小さくあたたかい笑い声を上げた。


 過去の幻影、絶望の二択のトラウマ。敵の教団の幹部が用意したどんな最高級の巧妙な精神の罠であろうとも、今の四人の間に築かれた、鋼よりも熱い『絶対的な信頼』の絆を切り裂くことは一瞬たりともできなかった。

 この絆の力がある限り。彼らはこの先どんな理不尽な暗い未来が待っていようとも、四人の手で太陽の光の下へと立ち向かい、打ち砕くことができる。


「よし……一息ついたところ悪いが、休んでる暇はない。このまま馬で最短でグラシアの街へ急ごう。本当に教団の残党の大軍が、あの街を包囲して襲撃してるかもしれないからな」

「おうっ! サンドバッグが何万匹いようが、俺たちで今日中に三つの街のゴミ掃除をしてやろうぜ!」


 彼らは夕焼け空が燃える荒野の下、かつてなく力強く頼もしい足取りで、まだ見ぬ次なる救済の戦場へと向かって全力で歩き出した。

 第三柱を打ち破ったことで、世界を滅ぼす残る五柱の絶対戦力はあと二柱。

 そして、そのすべての背後でいよいよ本格的な神の覚醒の時を待つ、万物の敵『虚無の王』。


 この先、一周目すらも全くの未知である領域の過酷な戦いが待っていることは、四人全員が完全に理解している。

 だが、彼らの今の並んで歩く背中はどこまでも頼もしく。過去の絶望の世界に存在した焦燥や悲壮の影は、西日に照らされたその足元にすらもうどこにも存在していなかった。

 『死に戻り』というたった一人で背負った孤独な暗闇の運命から始まった、レイドのこの壮大な物語は。今ここにきて、かけがえのない最強の仲間たちの光と共に、彼自身のすべての手でたぐり寄せた『希望の未来』へと完全に足を踏み入れたのだ。


(第3章 完結)

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