表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】今日世界が終わるなら妻とやり直しを  作者: オリハルコン陸
オマケ 今日も世界が続くなら君とやり直しを

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/15

また朝がきた

もう一度朝がきた。


腕の中の妻を見つめる。

嬉しいが戸惑いも大きい。


昨日は妻の同意を得て一緒に眠った。

凄い進歩だ。

もし今夜眠りにつくまで世界があるなら、今日も妻と一緒に眠りたい。


けれど正直、それ以上の欲が出てきてしまった。

もっと長い時を妻と過ごしたい

今日明日ではなく、一年後も十年後も妻と日々を過ごしたい


そんな欲が。

どうせ今日で世界は終わるのだから、到底叶わぬ願いなのに。


ため息を吐いて妻の寝顔にそっと囁く。


「俺は君が好きだ」


言ってから気づく。

昨日はいったい、何度言えただろうか。

…あまり言えていなかった気がする。


俺のポンコツは年季が入っているな


呆れて上を仰いで、もう一度妻に視線を落とした。


「俺は君が好きだ」


妻の顔が、微かに赤くなった気がした。



◇ ◇ ◇



今日の目覚めは…目覚められなかった。


何かが聞こえた気がして意識が浮上して。私を抱きしめる夫がもぞもぞ動いたかと思ったら


「俺は君が好きだ」


そう聞こえた。

顔に血がのぼる。


私が寝ている間に何を言っているのか


思わず顔を夫の胸に寄せて隠す。

夫の手が、私の頭を更に引き寄せた。

逆らわずにされるままになったら、少し鼻がつぶれた。

…現実はロマンチックじゃない。


けれどそれでもちょっと嬉しくて、押しつけられた夫の胸の鼓動に耳をすます。

…少しだけ、早い気がする。


その原因が私なら嬉しい…。



◇ ◇ ◇



妻の作ってくれた朝メシを噛みしめる。


今朝の卵焼きも美味い。

下味のついた鮭はふっくらと焼けていて、塩加減もちょうどいい。

大根と油揚げの味噌汁も美味かった。

しみじみ味わって手を合わせた。


「ご馳走様」


「お粗末様でした」


そういえば…


「俺は君が好きだ」


「っ…!?」


妻が握っていた箸を落とした。

脈絡がなかった所為だろうか。悪いことをした。

だがーー


「俺は君が好きだ」


本当に、あと何回言えるかわからないから。次の瞬間には世界が終わっていても、全く不思議はないのだから。今言わなければ。


「後でまた、お茶に付き合ってくれないか?」


顔を赤くした妻が、皿の上に落ちた箸を拾い上げながら頷いた。

それを確認して席を立つ。食べ終わるまでずっと見られていては、妻も落ちつかないだろうしゆっくり食べられないだろう。



歯を磨いてからリビングのソファに座って、妻といったい何を話そうかと考える。さして良い考えも浮かばぬまま時間だけが過ぎ、妻がお茶を持ってきた。


まあ仕方ないか。

どうせ俺は気のきかぬ男だ。


諦めて開き直って、妻が座るのを待つ。

さりげなく…はなかっただろうが、妻の片手を握った。


少しでいいから妻に触れていたい


そう思うのは、仕方のないことだろう。だって俺は彼女が


「好きだ」


軽く頬を染めて視線を逸らす彼女が愛おしい。


「…君は俺に、何か話しておきたいことはないか?」


きっと俺に対する不満が山ほどある筈だ。時間は全く足りないだろうが、少しくらいは聞いておかないと申し訳ない。


そういうつもりの問いかけだったのだが、妻は


「そうね…」


と少し考えてから、


「今度、部屋の模様替えをしようと思うのだけれど、何か希望はある?」


と言った。


「…模様替え?」


予想もしていなかった話題に驚いて、思わずおうむ返しに繰り返した。

今日で世界が終わることを知らない故の妻の言葉。この先も俺と暮らしていくつもりの言葉…。

…胸が詰まる。


「ええ。ソファーカバーやカーテンなんかを」


もしも、この先も世界が続くのなら…そんな世界を夢想した。

もしもそんな世界があるのなら。そんな幸せがあるのなら。それなら俺はーー


「別に何でもーー」


いい。

そう言いかけた俺に、妻が少しムッとした。


「少しくらい意見をください」


「だが俺は君が選んでくれたものならなんでも構わないんだがな…」


そう続けると、妻は顔を赤くした。


俺はあまり物にこだわりはない。仕事で使うものなら多少のこだわりはあるが、こだわるのは機能性であってデザインではない。


妻の方が家にいる時間がはるかに長いのだから、どうせなら彼女がくつろげる空間にしてもらった方がいい。その方が俺は嬉しい。

それに


「俺は君好みの空間に住みたい」


俺は『妻の好きな物で埋め尽くされた空間』に住みたい。


「…………わかったわ」


視線を逸らして少し拗ねたような顔をする妻は可愛かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ