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【完結】今日世界が終わるなら妻とやり直しを  作者: オリハルコン陸
オマケ 今日も世界が続くなら君とやり直しを

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8/15

まだ君と過ごせるのなら

まだ世界は終わらないらしい。


昨日確認した情報では、かなりの確率で昨晩中に、遅くとも二、三日中には確実に彗星が地球に衝突するという話だった。

ということは最大であと二日、妻と一緒に過ごせるのか…。


妻は今朝も一緒にごはんを食べてくれた。それに…寝惚けていたとはいえ、俺の腕の中にいてくれた。

…拒まれてはいないと、嫌われてはいないと、自惚れてもいいのだろうか。


歯を磨きながら考える。

もしそうなら。妻に嫌われていないのなら。

今日もしよう。

昨日の続きを。


今日も妻に好きだと告げて、妻のことをもっと知ろう。それと、俺のことも少し知って欲しい。


鏡を見て気合いを入れ直す。

昨日できたことが、今日できない筈がない。

俺は妻が好きだ。愛している。

今日もそう伝えよう。つまらないプライドが邪魔をして、今まで言えなかった気持ちを。

恥ずかしいとか慣れていないとか、そんな言い訳はなしだ。


もう時間がないのだ。

言い訳をしていられる時間は、もうないのだ。


側から見れば、きっとひどく不恰好だろう。だが、そんなことはどうでもいい。

妻にあんな誤解をさせたまま死なせる訳にはいかない。結婚した相手に、ただ利用されているだけだなど…そんな寂しい思いをさせたまま死なせたくない…。


それに…嫌なのだ。妻にそんな風に思われていることが。

そんな誤解をされたまま、妻との隔たりを感じたまま死にたくない。


昨日のあれだけで妻に俺の気持ちがきちんと伝わったとは、とても思えない。

何しろ今までが今までだ。

何度も何度も。できることなら妻がうんざりするくらい繰り返さなければ。


そう意識していないと、俺はすぐに逃げてしまう。妻への愛と感謝を伝えることから。


忘れてはいけない。

俺はヘタレなポンコツなのだ。


鏡に向かって頷いて、妻の元へと向かった。



◇ ◇ ◇



「今日は何か予定はあるのか?」


朝食の片付けをしていると、夫から声をかけられた。

チラリと振り返って答える。


「いいえ、特には」


「ならーー」


「あ、でも買い物に行こうかと」


そう言うと、何故か夫は難しい顔をした。


「…それは今日じゃなきゃダメか?」


「え……?」


「どうしても今日買わなければならない物でもあるのか?」


………そこまでのものはないけれど…


「……ないけど」


「なら別の日にしてくれ」


妙に強い口調の夫に驚く。


「え?」


「今日も君と一緒にいたい」


そして続けられたストレートな物言いに、思わず顔が赤くなった。

こういうやりとりは、本当に慣れていないから…。


「迷惑か?」


これには首を横に振った。

昨日も、戸惑いはあったけれど嫌ではなかった。

夫は、私の答えにほっとしたように見えた。



◇ ◇ ◇



昨日に引き続き、夫と一緒に過ごして夜になった。


「その…今日も一緒に眠ってくれないか?」


夫の少し躊躇いがちな問いかけに戸惑う。

一緒に眠るってつまり…


夫婦の営みを要求されているのだろうか。


確かに昨日と今日で、夫とのわだかまりは少しなくなった気がする。

とはいえ、まだそこまでするには抵抗があった。たとえ以前していたこととはいえ…。


けれどデリケートな問題なので、はっきりと拒むのもはばかられて、じっと夫を見つめた。

私がどうして躊躇しているか気づいたのか、夫は慌てたように少し早口で付け加えた。


「いや、決して何もしない」


…そう言われても…

そういうのは様式美だとか、どこかで聞いた覚えがあるし…


返事に困って黙っていたら、


「年次決算に誓おう」


…よくわからない物に誓われてしまった。


夫は真面目な顔をしている。

誓いを破ったらどうなるのかさっぱりわからないけれど、おそらく本気で言っているのだろう。

なんとなく、嘘はつかれていないような気がした。

だから


「わかったわ」


そう頷くと、夫は酷く嬉しげな顔をした。





夫の腕が、私を抱きしめる。

昨日もされたことだけれど、昨日はリビングの床だったし、夫は酔っていたから…。

素面の夫にベッドの上で抱きしめられているというこの状況は、酷く落ちつかない。


「あ…の…」


「ん?」


「…何もしないのでは…」


「ああ、何もしない」


落ちついた声で答えた夫は、私を抱きしめる腕に力を込めた。

…どうやらこれは、何かしたうちには入らないらしい。


確かに行為めいた何かかと聞かれたら、違うと答えるしかない。

つまり夫は、約束を破っていない。

ただ抱きしめられて、一緒に眠るだけ。


…昨日もしたことだから。

別にこれくらいどうってこと…

…そもそも夫婦なんだし…


自分に言い聞かせて、そっと目を閉じる。鼓動が早くなるのはしょうがない。


…夫の鼓動も早いのは…少し嬉しい…



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