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年始に立てた目標って大体やらないお!

 三賀日中、食料を求めて学園内を徘徊することはあれ、和幸・画咲家といえば、ひねもすのたり、ぐうたらと過ごしていた。

「正月番組つまんねーーーーーーーーーーーーーーーーーお」

「最近の正月番組って“ふざけてない”よねー。放送倫理とか、そういうのかねー」


「うーん。もっとアイドルを出してほしいおー」

「そっちかよ。かっくんテレビ消しとけばー? アイドルなんて皆アイドルチャンネルに引きこもってるさ」

「そういうもんかおー?」

 

 (♪)画咲くん! ここにメッセージ置いておくけど、女の子からだったら承知しないからね!


「びっくりした……かっくんその着信音やめてよー。部屋に誰か入ってきたのかと思うじゃん」

「水琴氏の声に……何か……文句でも……」

「ないない、わかったよ、もう……」


“かっちゃん、あけおめ! クラフと部室にいるよ、こない?”


「あら。意外に早いご帰還だお」

「友達ー?」

「うむ。ちょっくら行ってくるわん~」

「いてらー。みなさんによろしくねーん」


・・・・・・


 新年。初部室。

「あけおめだおー! みなさんによろしくねーん!!」

「おお、きたきた、かっちゃんあけおめ-……みなさんによろしくねーん?」

「うむ。和幸が言ってた」

「伝える範囲が広過ぎだよ……和幸さんにもよろしくって言っといて…」

「うむ!」

「あけおめでゲス~」


「それにしても、ふたりとも、ずいぶん早いお」

「三賀日も終わったし、おせちも食べ飽きたからね。それに原稿もやらないと」

「俺は実は帰ってないでゲス!」

「え、実家無くなっちゃったのかお?」

「いや、あるでゲスよ……。冬のモモコミに行ったから帰らなかったんでゲス…大晦日までの催しだし……」

「あ、そっか」

「そういえば、クラフが参加してた同人ゲームのチームはどうだった?」

「人気はまあまあだったでゲスね。繁盛しているようで……俺も決別できたでゲス」

「これで良かったのかもしれないね」

「そして戦利品も大量でゲス!」

 クラフは足元の紙袋からドッサリと同人誌即売会モモコミで買った同人誌を机に積んだ。

「見せてお、見せておー!……ふむふむ。ほうほう」

「おい、なにふところに入れてるでゲスか! 見るだけでゲスよ! 資料用でゲス!」


 画咲も文絵も手にとっては夢中で読み漁るが、どうやらクラフの目的は別にあるようだった。

「こうした戦利品もいいでゲスが、もっとイイモノ持ってきたでゲスよ~」

「えっちなやつかお?」

「ち、違うでゲス!! これを見るでゲス!」

 クラフが取り出したのは、なにかのイラストがプリントされた板チョコだった。

「はぇー。なにかのアニメのコラボ商品だお?」

「実はこれ、同人作品なんでゲス」

「ええ? これが同人作品?」

「むっさい同人作家共が丹精込めて作ったチョコかお?」

「違うでゲス! チョコはメーカー製でパッケージを同人サークルが作ってるんでゲス! 最近は商業流通顔負けの商品が素人でも簡単に作れるんでゲスよ」


「買ってきたチョコに自分たちで包装紙を包んでるのかい?」

「印刷屋さんが食品メーカーと組んでるんでゲスよ~。なかにはオーダーすると独自のフレーバーなんかも作ってくれる会社があるでゲス!」

「すごいなぁ。……完全にオリジナルってわけだね」

「でもそれがどうしたんだお? なにかグッズを出していくのは考えの片隅にあったとはいえ」


「画咲、正月ボケでゲスかー? もう()()()()()()にむけて動く時期でゲスよ!」

「次の季節商戦……? ああ!! 入学式かお!?」

「飛びすぎでゲス……バレンタイン!」

「だって、かかわったことないもの。バレンタイン」

「ま、真顔で返すなでゲス! 俺たちは最早チョコをあげる側になったんでゲスよ!?」

「たしかに物販で売れるね! 作品と合わせて売れる!」

「バレンタインデー企画、もう走り始めたほうがいいでゲス!」


ガチャ


「みなさん、あけましておめでとうございます!」

「今年もよろしく、かもねー」

「ああ、ふたりも帰ってきてたのかお!」

「ええ。三賀日も終わって、おせちも飽きましたし」

「ぶふw 同じこと言ってるなりw」

「まあ皆そういう時期ですよねー。学園へ向かう鉄道も混んでましたし」

「そうそう、ふたりとも、さっそくだけどクラフが面白いものを持ってきてくれたよ」


・・・・・・


「それは名案ですね!」

「マカならマカ味のバレンタインチョコ……いいかもね」

「それいいね、地獄A`sそれぞれから、あなたへのチョコレレート! なんてね」

「フレーバーが活きますね!」


「物語は、恋愛禁止のアイドルが想い人に贈る禁断のチョコレート、なんてどうだろう」

「はい、それ俺が考えたことにするお!」

「かっちゃんズルいぞ!」

「ぶはは! 言ったもんがちだおー!」

「いや……言ったの僕だけど…」

「なにしろ賛成かもね、いい題材」

「その一ヶ月後にはひな祭りです、これも動いておきませんと…」

「そのまた一ヶ月後には新入生歓迎ライブでゲス!」

「ああ…こりゃあ忙しくなるよ」


「まだまだです……その一ヶ月後にはジューンフェスのエントリー……」

「ジューンフェス!? まさか……」

「ええ。今年の10月の百神徒祭……カルデラ杯に向けた予選は、その頃からもう始まっていますから……」

「出る…か」

「出る………でゲスか」

「出ましょう」

「出るしか…ないお!」

「やってやるかもね!!!」

「でもでも皆さん~☆ そのためには~普段からモモッターの更新をしていきましょうね~☆」

「リアム…なんか言い方が怖いでゲス………」

「当然ですー☆ みなさん、更新サボってましたよね? メープルさんはぁ、少しお怒りなのですよー☆?」

「「「「すみませんでした」」」」


 メンバーにとって、それからの日々はまさに怒涛だった。軍隊式のアイドルの訓練に加え、あらゆる資金のやりくりに、原稿の執筆、学園内企業への発注、モモッターの更新。それとモモッターの更新に、モモッターの更新まで行った。普段は女性としての感性を磨き、ひとつ、またひとつ、ライブの夜を越えてゆく。



「みんな! 今日はバレンタインライブに来てくれてかたじけない! 華やかなアイドルにだって辛いことがある! 今日はそんな曲だお!」

「それでは聞いてください! 恋愛禁止のギリ義理チョコレート!」

 おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!


・・・・・・


「かっくん、肌、キレイになってない!?」


・・・・・・


「それでは聞いてください! お雛様のカレイドスコープ!」


・・・・・・


「ねえかっくん、肌、キレイになってるよね!?」


・・・・・・


「それでは聞いてください!!」


・・・・・・


「かっくん!」


「かっくん?」


「いい記事書けない!!!」


「アジフライ定食!」


「かっくん、肌キレイだなー!」


「アジフライ定食!」


・・・・・・


「それでは聞いてください! あなたと約束のアジフライ定食!」

おおおおおおおおおおおおおおお!!!


・・・・・・


 マダムが “親切なスタジオ” から “親切な値段” で借りたスタジオでうなだれる地獄A`s。

「はああ。新入生歓迎ライブ、つかれたお…」

「ヘトヘトでゲスゥゥゥウ」

「うーーん。ライブの登録が17日、印刷所の発注が18日で、入金が翌日……あ、衣装の打ち合わせ忘れてました」

「リアムはよく働くね……」

「皆さんと仕事量は変わりませんよー。マネージャーとしては当然の仕事しかしていません。コーディネーターサークルを利用していない分、経費も浮きますし」

「それにしても、ベアーズでもだいぶお客がつくようになってきたおー」

「ほかのアイドルと張れるほどいい線いってると思うかもね」

「私達のオリジナルが光ってますね。マンガコンテンツのファンも抱き込めています」


 3月とはいえ未だに寒い日もあるが季節はすっかり春の様相。4月の入学生たちは寮への入居のために3月下旬には学園にいるため、あちこちのライブハウスで新入生歓迎のライブが催されていた。


「おう。お前ら。調子に乗れ」

「なんでゲスかそれぇ」

「結構客もつくようになってきた。小さいながらにファンクラブも出来たらしいじゃねぇか」

「ここまででヘトヘトでゲス~」

「バッキャロー! 忙しいのはこれからだっつの! 年度の変わり目でホロウナンバーも出玉が多い。近日中に見繕ってやるからな。別人になる覚悟、しとけよー?」

「私達ももうすぐ二年生ですね」

「ここまで速かったね、結成以来……」

「そしてここからもっと速くなりますよ……」

「新人ライブ、ここも気を抜かないで頑張るお!」

「「「「「おー!!」」」」」

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