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王都、ツジアイカは城郭都市のような造りとなっている。



王都を囲むように建てられている高い壁。

外壁と呼ばれているこの壁の四方には、火風水土の女神の名がつけられた門が存在し、シクラと呼ばれる地区に繋がっている。

シクラは大通りを外れると入り組んだ街並みをしており、迷路のような作りになっている。人口が増えて建て増しを繰り返した結果らしい。

そしてシクラの中心には中壁と呼ばれる壁に囲まれたエリアが更にあり、セレモニア――――()()()()と呼ばれている。

セレモニアには王宮や王立学院、魔術研究所などといった国の主要機関・施設が建設されており、その広さのため馬車が巡回しているのだという。



(こういうときテレビじゃ、東京ドーム何個分の広さって言うんだろうな~)


しかし王宮地区の広さも、そもそも東京ドーム1個分の広さもよく知らなかったので、すぐ考えるのをやめた。




王宮を守るための二重構造都市が、

魔物からも。

他国からも。

平和を守っている。


それさえ知っておけば問題ない。





「ここが風の女神セフィーリスの門だよ。」


そうフォルトは言うと、馬車はゆっくりと停車をさせた。



「ここが…」


馬車の天幕をめくり城門を見上げると、秤を持った女性の彫像がこちらへ微笑みかけていた。

彼女が風の女神セフィーリスなのだろう。



城門の前には先客がおり、馬車が一台停まっている。

そして、その馬車を囲むようにして数人の兵士。


王都に入るための手続き――。


―――検問である。




(…これさえ乗り越えれば、王宮送りは一先ず避けられるはず!!)


王宮行きイベントなど、絶対起こしたくない。


「フラン君、髪の毛でてない?平気?」


真凜は不安になり、これで()()()かになる確認をする。


「出てないよ。」

「本当に?『黒髪を隠すなんてもったいない』ってさっき言ってたじゃん!」

「そうだけど…。

どうせならマリンさんの髪を僕んちで独占するのも悪くないかな、って。」

「それはそれでちょっと…」


話してて分かったが、フランとフォルトは熱心な聖女様崇拝者なのである。

――そのお陰で馬車に乗せてくれたり、色々助けられたわけだが、さすがに独占と言われればドン引きである。


「だから安心して、ね。」


全然安心はできないが、そんなやり取りをしている間に前の馬車は無事検問を終え、真凜たちの番となってしまった。




(どうか、見つかりませんように…)


ゆっくりと動き出した馬車の中で真凜は祈った。






そして、馬車は―――


そのまま止まることなく進んでいく。






「……えっ。えっ?検問は!?」


どういうことだろうか。

疲れすぎて、祈っている最中に一瞬寝てしまったのだろうかと慌てるも、そうではないみたいだ。


「ないですよ。

だって、うちは()()()()()()()()だからね。

父さんのギルドカードさえあれば、身分は証明されてるし、する必要もないんだよ。」



さすがに中壁の検問所だと駄目だけどね。

と付けたし、フランはお茶目に笑う。

知ってて言わなかったな。


「なんか納得いかない…」

「それだけうちの商会は王家のために尽くしてきたからね。

これは王家に仇なす行為をしてるのがバレた時は、一族一人残さず処刑されるって代わりの特権だし、気にしなくていいよ」


(いや、全然気にしなくなんてできないでしょ!)



つまり、

『王家に利益をもたらしている分、国に害を及ぼさない範囲であれば目をつぶる。』

ということなのだろう。


日本でも江戸時代、御用商人は町人という階級にも関わらず、武士のように名字と刀を持つことを許された。

これはただ、刀を持ってもよいという簡単な話ではない。


刀を持つこと―――。

それは、百姓や町人を殺害できるという権利が与えられるものであった。




特権とは持つ者によっては、それだけ影響力を及ぼすものなのだ。



「そうですよ、マリンさん!

まだ三十過ぎたばかりだというのに、心労で抜けてしまった私の髪のためにも使わせてください!」


フォルトは力強く、訴えかける。


(すみません。てっきり40代だと思ってました…)



「まぁ今まで使う機会なかったんだし、何事もなく入れたんだから結果的には良かったって思っときましょ?」

「そうですよ。私の髪のためにも!」


「確かに…そうだよねっ!」


二人にそう言われ、やっとここにきて真凜は無事検問を通り抜けられたことに安堵する。





それにしても―――



真凜はちらりと隣に座っているフランを見る。

水色のふわふわとした髪に綺麗な緑の瞳。

父親とは違ってやつれた感じはなく、若さのためか肌に艶がある。

身長は同じぐらい…150後半といったところで、まだ少年らしさが残るあどけない顔だが、あと少しもすればイケメンに育つのは間違いないだろう。



(フラン君はすごい商会の息子だし、本人も仕事もできるし、性格も真面目だからモテるだろうな。)


ただし、さらに数年もすれば父親と同様――後退してしまうんだろうが。

そんなことを考えてしまう。




「……フラン君の髪は…丈夫そうだね…」

「やめてください」


真凜の呟きに、フランはそう真顔で返した。




都市の説明、自分でも書いてて悩みました。

やっと王都の話書いていけそうです。


ブックマークありがとございます。

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