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1話

 教室、告白の相手を殴り飛ばした漣は、何事もなかったかのように自分の席にもどってきた。


 まだ弁当を食べていないのに、無駄な時間を使わされてしまった。


 いそいそと弁当を取り出し箸をとると、前の席の焼きそばパンを咥えた友人が話しかけてきた。


「いやぁ、今日も大物みたいだったみたいだね、漣」


 そんなニコニコ笑顔で話しかけてきたのは、中学からの友人、水瀬 裕。


 漣のことを普通の男子生徒として接する貴重な友人だ。


「大物でも小物でも関係ない、男に告白されても困るだけだ」


「そりゃそうだ、でも仕方ないよ、漣が嫌がってもその容姿じゃね」


 含みのある言い方は引っかかるが、裕の言うことは正しい。


 漣の容姿は、どうみても可愛らしい女の子、身長が男子より少し低く、母親似の顔、細身の体、


 どこからどう見ても美少女で、男子の制服を来てなければ、彼を初見で男と見抜くのは難しいかもしれない。


「さすが学園四天王の一角だね」


「そんな不名誉な称号はいらん」


 弁当を食べながら、ふんと不機嫌を露わにする。


 高校に入って一年の時よりまだましだが、2年になってもまだ告白してくる奴がいるのは正直滅入る。


「なんでどいつもこいつも告白なんてするんだ。容姿はともかく俺は男らしく振舞ってるはずなんだが」


「んーまぁねぇ、結局男らしい女の子も人気あるし、容姿をどうにかしないと難しいと思うけどね。髪型坊主にするとか」


「坊主は一度考えたんだが、家族にそれ言ったら猛反対された挙句、するなら一生飯抜きと言われた」


「それは……随分と過激な両親だね」


 裕はどう反応すればいいのか苦笑い。


 軽い気持ちで夕飯時に話したが、あの時は焦った。母親は号泣するし、妹は縋りついてくるし、おやじは挙動不審になるし、冷静な兄までも麦茶と醤油間違えて飲んでたし……


「他に容姿を変えるっていっても、なぜかどんなに食べても太らないし、毎日牛乳飲んでるのに背は伸びないんだよなぁ」


「他の女子が聞いたら嫉妬でキレられそうな発言だね」


 そんなこと言われてもそうなんだから仕方ないだろう。


「そういえば聞きたいことがあるんだけどさ」


「なんだ?」


 お、今日の弁当は唐揚げ弁当か。


 話を聞きながらフタを開ける。母親のからあげは覚めててもめちゃくちゃうまい。


「漣は男からの告白報告はしょっちゅう聞くけど、女の子からの告白ってないの?」


「あー、一人いたかな」


「へぇ、その子とは付き合わなかったのか?」


「まぁ、俺を女だと思って告白してきた子だったよ……」


「……そっか」


 最初は初の女の子からの告白にテンションが上がったけど、”私、女の子が好きなの!”とか言われた時は素で、”帰れ”と答えてしまった。


「あ、そうだ、今日放課後空いてる? 久々にゲーセン行かない?」


「あー悪い、同好会はないんだけど、今日は駅前のムトーナノカドーで買い物しないといけないんだ」


「それくらいなら一緒に行くよ?」


「いや、食材だから、ゲーセンは無理なんだ」


「そっか、ならまた今度にしよう」


「ああ、悪いな」


 気にしないでいいよ~と裕が笑顔でいうと、ちょうどそのタイミングで昼休み終了のチャイムがなった。


 結局昼飯もギリギリになってしまった。


 告白を無視すればいいんだろうが、それで相手を屋上に待たせっぱなしというのも気が引ける。


 午後の授業の教科書を出しながら、なんとかしないなぁと考える漣だった。


 




 放課後、途中まで裕と駄弁りながら帰り、今は一人で駅前まで足を運んできた。


 妹の鈴が”私もご一緒したいです!”とかいってきたが、学級委員の仕事で居残りらしく諦めたみたい

だ、


 未練がましくラインで悲しい表情のスタンプを連打してきていた。


 漣は別にシスコンではない、妹は客観的にみても完璧だし、かわいいと思うが、別に普通だ。


 ……ただまぁ、せっかく駅前まで来たんだし、ちょっと鈴の好きなケーキを買いにいくくらいいいだろう。委員会頑張ってるし、近いしな。


 ということでデパートを通り過ぎ、先に行きつけのケーキ屋へと向かうことにする。


 デパートにもケーキ屋は入っているのだが、デパートを抜け商店街を抜けた少し先に、


 ちょこんと建っている古いケーキ屋、そこのモンブランが鈴が好きで、たまに買いにいくのだ。


 デパートから徒歩15分くらいなので、別に苦でもなんでもない。


 商店街を抜けるとさすがに人気もなくなってくる。歩いているのはじいちゃんか犬の散歩してるおっさんくらいのものだ。


 都会でもない商店街なんてどこもこんなものだろう。


 と、目的のケーキ屋に辿りいたが、店の前に妙なのがいる。


「なぁ、俺達とケーキでも食おうぜ! な?」


「……や」


「や、だって、かわいい~!」


 男二人が女の子をナンパしている。


 髪を染め、ピアスを開け、明らかそこらのチンピラ、うちの制服と違うからよそものだろう。


 対して困ってる……というかおびえてる女の子、あれうちの制服だな。


 とりあえずケーキ買えないのは困るので、面倒だがどいてもらおう。


「おい、店の前でなにやってんだ」


 女の子が本格的に泣き出しそうだったので、二人の前に出てチンピラと対峙する。


「あ、なんだお前……ってなんだよ! この子も超かわいいじゃん!」


「なになに、君も俺達とお茶したかったの?」


 なんかナンパの時ってみんなお茶したがるよなぁ……


 ニコニコ顔で迫ってくる二人。


 ……ふん!


「ぐほっ!」


 その片割れをぶん殴った。理由はイラっとしたから。


「な! なにすんだてめぇ! 女だからって手ぇ出さねぇと思ったら--」


「俺は男だ!」


 もう片方もぶん殴った。


 どちらも一発KO、コミカルな漫画のように二人重なって気を失っている。


 正直間に割り込めば散ると思ったんだが、普通に向かってきたな、ここいらのやつらではないのか?


 一応迷惑にならないよう隅へ転がしておく。


「あ、あの」


「ん」


「ありがとうございます。助かりました」


 ペコっと女の子が頭を下げてくる。


 逃げてなかったのか。


「ああ、いや気にしないで、早く帰った方がいいよ、そいつらまた起きるかもしれないし」


「えっと……あの……」


 挙動不審だな……男苦手っぽかったし、ここはさっさと離れた方がいいな。


「じゃあ俺急いでるから、君も早く帰ったほうがいいよ」


 じゃ、と漣は手を挙げてそそくさとその場を離れる。


 その後ケーキを買えなかったから更に遠い和菓子を買いにいくのだった。

古すぎて逆に手直しが難しい……

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