第八話 絡めとられる糸
警視庁を後にした俺たちは家に向かっている。
綾瀬君は泣き疲れて眠ってしまっている。
その間に関係するみんなに連絡を入れることにした。
先ずは親父さんだ。こういう時に一番力になってくる人だ。
「どうかしたか、和樹。」
「あ、親父さん今大丈夫ですか?」
「ああ、寺におるぞ。」
「なら、重要案件の話です。綾瀬君の親族が見つかったそうです。」
「おお、それはよかったじゃあないか。」
「ですが、それに関してヤバい案件があります。」
俺は綾瀬君と山田さんについて話した。
「そうか、わかった。
マンションにはウチの屈強な坊主を詰めさせておく。
常見の店にもアルバイトとでも言って何人か回しておこう。」
「すいません。」
「いや、謝ることじゃあない。
みんな助け合いながら生きておるんじゃ。気にするな。
謝るのは彼奴らじゃて。」
「はい。」
「で、お前さんのとこはどうするかの。
とりあえずは警備会社に事情を話して警備を密にしてもらうしかないかの。」
「そんなとこですかね。」
「じゃの。これから常見に連絡するなら、基本事務所に詰めて明美君と山田さんを一人にしないように言いつけておいてくれ。
ワシのところでも常に動けそうな者を詰めさせておく。何かあったらすぐに連絡しろ。」
「はい。分かりました。」
「ワシの方でも動いておく。連絡を密にの。」
親父さんとの会話が終わり、次は常見に連絡した。
「おう、どした?」
「常見、今どこだ?」
「ん? 事務所。」
「明美ちゃんは?」
「いるぜ。」
「なら、ハンズフリーモードにしてくれ。最重要案件だ。」
ハンズフリーモードに通話モードを切り替えてもらい、今までの内容を話した。
「まさか、いのりちゃんの担当の刑事さんが藤堂さんだなんて。ほんと、世間様は狭いわ。」
「?」
「ですね。」
「ごめんなさいね。なんだか巻き込んじゃったみたいで。」
「いやいや、たまたまですし、そうじゃなくても綾瀬君の件で、必ず当たっていましたから。」
「そうね。」
「ま、事情はわかったわ。あとはその時だな。」
「ああ、宜しく頼む。」
「さっさと解決していのりちゃんと由紀恵を安心させてあげましょう。」
次にカレンにも連絡した。
明美ちゃんから山田さんと店にいるって聞いていたので連絡しておいた方がいいと思った。
「カレン、今いいかしら?」
「ええ。大丈夫よ。」
俺はカレンに一通りの事情を話した。
「そう。でも、もう遅いわね。お店の外にそんな輩がチラホラね。
今建物のシャッターは締めているけど、開けたが最後って感じね。
多分、その刑事さんの動向が漏れたんでしょ。
大きな組織ならそういうネットワークがあってもおかしくはないわ。」
サラッと言うけど、全然大丈夫じゃないじゃんか。
「一応、もうすぐそっちに着くから、それまで待っていてくれ。
こっちも刑事さんに連絡して、お巡りさんを向かわせてもらうよ。」
「ええ、お願い。それまではせいぜい楽しんで籠城しているわ。」
そう言って、電話を切られた。
なんというかカレンの胆力には毎度驚かされる。
俺はすぐさま藤堂刑事に連絡する。
「はい、大木さんどうかされましたか?」
「はい、早速それらしき人物達が山田さんのいるお店周辺を彷徨いているようで。」
「なんと、まあ。
私の行動が見張られているのは知っていましたが、行動が早いですね。
判決が出たら動きにくくなるのを踏んで、今が最後のチャンスとでも踏んだのかもしれませんね。
すぐにパトロールの者をさしむけます。」
「お願いします。私もそちらに向かっています。」
「いえ、ここは我々が動きますので大木さんはそのままお帰りください。
由紀恵達にはその旨を伝えて、絶対に出ないように言ってください。」
「私は明美に連絡します。
大木さんもご自宅の方に何があってもインターホンに出ず、戸締まりをしっかりしておくように伝えてください。」
「わかりました。」
電話が終わった後、すぐにカレンに連絡し、茉莉ちゃんと楓ちゃんに連絡した。
茉莉ちゃんはまだルイジにいたようで啓介に代わってもらい、軽く事情を話して解決するまで茉莉ちゃんはシフトに入れてもらうことにした。
楓ちゃんは家にいたので、こちらも軽く事情を話して、戸締りをしてもらい、警備システムを入れてもらった。
「大木さん、いきなり来ちゃったね・・・。」
「起きたのかい?」
「うん、暫く前から起きていたヨ
大体の事情は聞いていたよ。
怖い、怖いよ。」
綾瀬君は俺が話をしているうちに起きていて、話を聞いていたようだ。
「大丈夫さ。
店には警察が向かっているし、みんなそれぞれ対策をしてもらっているよ。
ただ、楓ちゃんが家に1人だから急ぐよ。」
「うん。急いで。」
俺はアクセルを踏んでギアを上げて、急いで向かった。
しばらくしてカレンから連絡があり、警察が到着すると、怪しい輩は蜘蛛の巣を散らしたかのように逃げていったとのことだ。
そのまま常見の事務所に向かって、事情を軽く話すことになったとのことだ。
なんでも、常見の事務所の辺りにも同じような輩が彷徨いているらしい。
まぁ、これで一安心だろう。
そう思いながら家に到着しようという時、近くの人気のない交差点で突然道を塞ぐようにワゴン車割り込んで来た。
俺は急ブレーキを踏み、俺たちはかなり前のめりになった。
そして後ろからも退路を塞ぐように同じようなワゴン車がやって来た。
しまった・・・。
今回の狙いは俺か?
多分、いろいろ本命の狙いはあったにせよ、その標的の一人が俺なのだろう。
山田さんを雇っている店は修造さんと常見の共同出資だ。ただこの二人の後ろには権力者が多いので狙う事が出来ない。
なら、狙うとしたらカレンと明美ちゃんと山田さん。そして俺だ。
俺は何の後ろ盾もないからね。それに女の子を人質に取られたら何もできないし。
そう思いながら車のキーをロックして、車のモニターで急いでスマホの履歴から藤堂刑事に連絡しようとする。
あれ? 電波が届いていない? 嘘だろ?
「大木さん!! 後ろの車から人が出てきたよ! こっちに来る!!」
パニックになっている綾瀬君が金切り声を上げる。
「大丈夫、ロックしているし、ドラレコもある。大丈夫。」
そう言っているうちに黒い目出し帽をかぶった如何にもって半グレって感じの男がドアに手を掛ける。
ロックが掛かってきているのを確認して何か手で合図した。
ガチャッ!!
!? ドアロックが破られた?
驚愕しているうちに俺と綾瀬君が車外に引きずり出された。加えてドラレコのSDカードも抜いて壊してしまった。
そして男たちに取り押さえられた俺たちの前へ道を塞いでいる車から一人の男が降りてきた。
綾瀬君はその男の顔を認識するとまさに悪鬼の形相とでもいうくらい憎しみにあふれた顔で睨みつけていた。
俺もこの顔はさっき警視庁で見たばかりだ。山田さんを陥れ、綾瀬君の本当の家族をバラバラにした犯人の一人であろう男、金子 三康だ。
「どうも、大木 和樹さんですね。少しお話良いですか?」
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