第四話 思い受け継ぐ
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俺が落ち込んで自棄になってからしばらくして、みんなでルイジに里奈のお祝いに行くことになった。
俺達とみんなからは里奈に花束を贈ろうということになり、お店に飾ってもいいような大きな花束を用意した。
「・・・うん、でかいな、これ。」
「だね。ちょっとやりすぎたかな・・・。」
「何言っているの、お祝いの花束なんだからこれくらいでいいじゃない。普通よ普通。」
「カレン、それはアメリカでの話。日本だともう少しおしとやかな感じがいいんじゃないかな。」
ルイジのバイトに入っている綾瀬君以外のメンバーでカレンが注文してくれていた花束を受け取りに花屋までやって来た。
このお店はこういった冠婚葬祭向けのフラワーアレンジメントで有名な店らしいとカレンが調べてきてくれていたので、そのまま丸投げしていた。
結果、アメリカンな感覚で花束が出来てきた。もちろんお値段もワイルドだった。
まあ、大きい以外はお祝いの花束としては十分なくらいに豪華な仕上がりだ。
ただ、重たいのでお店の人が車に乗せてくれて、スタンドをサービスでもらった。
ルイジに置いておく分には問題ないだろう。
そうして俺たちはルイジに向かった。
最近の里奈は体調が悪くないときは店に出て来て事務仕事など、体に負担がかからないことをメインに働いているらしいと綾瀬君が言っていたっけ。
店に到着して、中に入ると綾瀬君が迎えてくれる。
「あ、大木さんにみんな。待っていたヨ。って、すごい花束だね・・・。」
「まあな・・・。」
車から花束を降ろして、ここまで持ってくるのにあまりに重すぎて一人で持てないのでカレンと茉莉ちゃんと一緒に運んできた。楓ちゃんにはサービスでもらったスタンドを運んでもらっている。
「早く降ろしたいわ。いのり、どこに置けばいい?」
「とりあえずは、入口のこのスペースなら大丈夫じゃないかな?」
「じゃあ、早く降ろそうよ。私腕がもうダメかも・・・。」
「スタンドをセットするまで我慢してお姉ちゃん。」
やっとの思いで花束をスタンドにセットした頃合いに、綾瀬君が中から里奈を呼んできてくれる。
一応、今日俺たちが来ることは伝えてあり、綾瀬君も仕事を上がって、里奈を交えて食事を摂ろうということになっている。
「まあ、こりゃあ。すまないね、みんな。ありがとう。」
里奈が奥からやって来て驚いている。
当然そうなるわな。普通じゃないから、しかも可愛らしく目立つから。
「「「「里奈さん、妊娠おめでとうございます!!」」」」
「おめでとう、里奈。」
驚く里奈に俺たちはお祝いの言葉を掛ける。
「いやいや、まだ出来たってわかっただけで、まだ生まれてくるのには半年以上あるんだよ?」
「いいの、すっごくオメデタイことだよ!」
「そう、新しい家族が増えるのはいつお祝いしてもいい。」
「まあね。私達も温かく歓迎してもらっているし、そのお礼も兼ねてね。」
「というわけだし、気にするな。」
「だね。じゃあ里奈さんみんなを席に案内したら、わたしも上がらせてもらうね。」
そう言って綾瀬君が席に案内してくれて奥に着替えに戻っていった。
私服に着替えた綾瀬君が戻って来てからは、里奈を交えて女の子同士の話が始まったので、俺は席を外して厨房にいる啓介の所に行った。
「よう。」
「ああ、和樹か。今日は何やらありがとうな。」
「なに、いつもお前たちには世話になりっぱなしだからな。」
「そんなことはないぞ? みんなそれぞれにいろいろと助けてもらっていると思うよ?」
「そういうものか?」
「ああ、そういうもんさ。お前と亜咲がその代表格みたいなもんだろ。だから、みんなお前たちのように動いてみたくなるもんさ。」
「・・・。」
「ま、本人は無自覚だもんな。」
「だな。」
「ま、今日は俺といのり君の料理だ。この間の新規の店のメニューの試作品だから、後で感想を聞かせてくれ。」
「綾瀬君も噛んでいるのか?」
「ああ、もちろん。才能のある子にはそれを遺憾なく発揮してもらわないと。もったいないだろ。
だいたい、彼女はうちのエースになるんだから、それくらいできるようになってもらわないとね。」
啓介から相当な期待を綾瀬君は受けているようだ。彼女の料理の才能は確かに素人の俺から見ても人並外れたセンスがある。そして、その才能をフルに発揮させてさらにより良い物を作り出そうとする啓介の姿勢には感服だ。
しばらく里奈や店のことを話し、雑談もした後に料理が出来たので、今まで準備してあったプレートと一緒にみんなの所に戻ることにした。
「みんな、お待たせ。」
「おお、大木さんがウェイターをしている。」
「いい。和にーちゃんに。」
「なんだか、お姫様な気分。」
「様になっているわ。」
「おやおや・・・。」
みんなが感想を言ってくれ、里奈がニヤニヤして俺を見ている。
「里奈、何かあるのか?」
「いいや、なんにも。まあ、この子たちと話していたことが納得できただけ。和樹は知らなくていいの。
みんな、良い風に変わったね。」
「「「「----」」」」
何故かみんなが顔を赤くしている。
「ま、一番は和樹だよ。この子たちが来てから元気になったけど。ここ最近はそれ以外で良くなってきたって感じがしたから。うん、良いことよ。」
そう里奈は一人納得していた。
「さあさあ、大木さんも席について。今日は啓介さんとジャンさんの新しいお店に出すメニューの試作品!
しかも何と! いのりちゃんもメニューの考案に参加させてもらっているんだヨ!」
「わぁ、いのりちゃんすごい!」
「いのりん、やったね。」
「いのりの実力なら、当然ね。」
「いっぱい啓介とジャンさんに散々ダメ出しを食らって泣きながら考えた甲斐があったね。」
「うう・・・。里奈さん、それはみんなの前で言わないお約束だよぉ~。」
「「「「「あはは。」」」」」
俺達は出された件の料理を食べる。啓介とジャンさんの店のテイストを併せた料理だ。味は当然おいしいが、その中に女性的な配膳や味の配置であろう箇所が見受けられる。二人の店にはないテイストだ。
多分、こういったところが綾瀬君のセンスなんだろう。そして二人はこれを求めたんだろう。
綾瀬君は有名シェフに本当に期待されている、センスを評価されているんだと思う。
俺も彼女のように素晴らしい才能が有ればいいんだがな。
みんなおいしいと言って、おしゃべりのがおまけで食べることに熱中した。
そしてデザートを食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいると里奈が口を開いた。
「実はね。今日のお礼にっていうのもあれ何だけどこれを受け取ってくれないかな?」
里奈がリボンの装飾を施したバイクのキーを出してくる。
これは里奈が乗っていたベスパのキーだ。大学の頃、バイク屋のジャンク売りに格安で出されていたのを亜咲が面白がって買ってきて俺と常見に修理させて通学の足がなかった里奈にプレゼントしたバイクだ。
「これは・・・。受け取れないよ、里奈さん。」
「いいの、いのり。私もこんな体だからこれからは乗れないからね。だから使ってくれる人に、亜咲の意志を継いでくれる子たちに乗ってもらいたいんだ。」
そう言って綾瀬君の掌に載せ、握らせる。
俺がいない間に何を話していたのかはわからないが、みんなも恐縮している様子だった。
「いいの? 本当に。」
「そう、里奈さんと亜咲ねーちゃんの思い出の品。」
「私達はそこまでの人間じゃないよ。」
「いいんだよ。私が決めたの。それに和樹を見てごらん、みんな自覚があるでしょ?
私から見てもわかるよ、見る目が変わったことが。だから猶更ね。」
そう言ってみんなを見て微笑む。
「それに、もともと和樹と常見が直したんだ責任は取ってくれるよね。」
俺にもウインクしてくる。
まあ、亜咲との思い出の品だしな。
だが、みんなにとっては違った意味だったらしく、このバイクは本当に大切に使われることになった。
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