girls side 楓②
章の途中ですが、敢えて挿入しています。
まだ本編は続きます。
学校が終わり、美里と一緒に今日は迎えに来てくれたいのりんと一緒に帰る日だ。
車に乗るといのりんがやけに上機嫌だった。
「あれぇ? いのりんなんだかご機嫌だよね?」
「うん、どうしたの?」
「あのね、朝に里奈さんからメッセが来てね。オメデタなんだってさ!」
「あ、それはよかったね。」
「ほんとうですか? それは確かにですね!」
「うんうん、そうだよね~。まあ、これから里奈さんが抜け分もあるけど、オメデタイことだから張り切って頑張らなきゃね。」
そう車内で話を始める。
だけど、私は気が気ではなかった。
だって、この話を和にーちゃんが知ったらどう思うだろう。
祝福する気持ちが一番強いに決まっているし、両手放しで喜ぶ。間違いない。
でも、それだけじゃない。
亜咲ねーちゃんと生まれてこれなかったお腹の子のことが絶対思い出す。一番何よりも大切な家族二人のことを、だ。
絶対にひどく落ち込むだろう。
そんな時に私は、私達はどうしたらいいんだろう・・・。
私やお姉ちゃんは和にーちゃんから事情を聞いているから、慰めてあげたり共感したりすることはできる。
でも、いのりんやカレン、美里は事情を知らない。もちろん、私達も口止めされているから話したこともなければ、つもりもない。
いざ、この話が和にーちゃんの耳にみんなの前で入ったら一体どうしたらいいんだろう。
わからない。
どうしたらいいの?
考えなきゃ・・・。
和にーちゃんを絶対に前のような状態に戻したらダメ。
考えるんだ、私の子供な考えでも何でもいい、とにかく救いの一手を。
じゃないと、みんなが壊れていまう。
「ーーーーちょっと、楓ちん、聞いてる?」
「!! あ、ごめん・・・。ちょっと考え事してた。」
「どうしたのかな? なんだか上の空だったから。心配だゾ?」
「・・・。里奈さんが妊娠した。私達もいつか子供を産むのかなと考えただけ。」
「あはっ。楓ちん、大木さんのことを想像したんじゃない?」
「う、うん。」
「あはは~。だよね~。道のりは長く険しい! でも生みたいよね!」
そんな他愛のない生返事のような返事をしながら浮かれている二人の話を耳半分で聞きながら、頭はものすごい勢いでグルグルしていた。
いつもであれば、お姉ちゃんや和にーちゃんに助けを求めるはずだが、今回は和にーちゃんは頼れないし、お姉ちゃんに相談しようにも今の状況ではメッセージも入れれない。
そうしているうちに美里の家に到着する。
「それじゃあ!! また明日です!」
「じゃあね、美里ちゃん。」
「バイバイ」
美里と別れ家に向かう。
近所なので車で五分もかからない。
私はいいアイデアが浮かばず、今にも過呼吸を起こしそうだ。
家についてルンルンと軽やかにいのりんは玄関に入っていく。
私はとても気が重たかった・・・。
そして・・・。
「ただいま~! みんなっ大ニュースだヨ!! 里奈さんがオメデタだってさ!」
「ただいま・・・。っ!!」
家に入ると目に飛び込んできたのは強いお酒をグラスで飲んでいたであろう和にーちゃんと、何があったのかはわからないけど恐怖で顔が青ざめ震え、目に涙を溜めて互いにしがみついているお姉ちゃんとカレンだった。
遅かったんだ。
多分、日中にルイジに行ったか、連絡が来たんだと思う。
結果、和にーちゃんはお酒を煽って、何かがあったんだ。
私は息を飲んで固くなることしかできなかった。
何もできなかった・・・。
最悪の状況だ・・・。
「あれ!? 茉莉ちゃん、カレンどうしたの!? 大木さんもお酒を煽って。みんな何があったの!?」
いのりんは状況が呑み込めていない。
だけど、お姉ちゃんがいのりんの言葉でハッと気が付いてくれて、和にーちゃんに寄り添ってくれる。
私もそうした。
私達は亜咲ねーちゃんのことも大好きだし、和にーちゃんのことも大好きだ。
そして、間違いなく生まれてくるはずだった子も大好きになっただろう。
それを思うと勝手に涙が溢れて来て止まらなかった。
「和にい・・・。そっか。そうだよね。とっても辛いよね・・・。
うん、今だけは、今日だけは好きなだけお酒を飲んで、泣いて、叫んでいいんだよ。」
「そう、和にーちゃん。それでも辛くてどうしようもなかったら私たちがいるから、いつでも頼って。」
カレンといのりんには悪いけど、今は私達が共感してあげる、悲しみを共有してあげることしかできない。
だって、何よりも生まれた時から一緒にいてくれた人たちのことだ、天涯孤独の私たちにとっては数少ない血のつながった人のことだ、家族としてわかってあげたかった。
少しして、お姉ちゃんが呆然としている二人に声を掛ける。
「いのりちゃん、カレンさん、ちょっと二階に行ってお話ししましょう。」
「う、うん。」
「・・・わかったわ。」
未だ立ち直れないけど、少し落ち着いた和にーちゃんを一人にして落ち着かせてあげるためにお姉ちゃんは二人を二階に誘った。
あのことを話すんだろうか?
和にーちゃんに口止めされていたあのことを。
二階に上がったと同時に和にーちゃんも自室に籠ってしまったようだ。
お姉ちゃんは意を決して、二人に話す。
「・・・あのね、どうして和にいがああなったかを話すね。
本当は和にいから固く口止めされていたんだけど、私は二人には知ってもらいたいから。」
お姉ちゃんの話を聞いた二人は当然顔を真っ青にして涙を流していた。
いのりんは恐慌状態になって震えている。頭に食い込まんばかりの力強さで頭を抱えて過呼吸を起こしている。あまりのショックに座っているところも大変なことになっている。
「わ、わたし、そうとは知らなかったんだ!知らなかったんだヨ! どうしたらいいの! わたし、お、大木さんに嫌われちゃう!! いやっ・・・。いやぁぁ・・・。こんなことって!」
「いのりん・・・。」
私はいのりんを強く抱きしめる。
「いのりちゃんは何にも悪くないよ。だから、和にいもわかってくれているよ。」
「でも!! もしもってあるかもしれないんだよ! わぁーー!」
「そうよ、和樹ならわかっているわ。そんなに恐れなくてもいいのよ?」
「でも! でも!!」
「大丈夫、家族はそんなことでは壊れないよ、いのりん。」
しばらく三人でいのりんを慰めて落ち着かせる。
いのりんにとって、家族を失う事の辛さや悲しみを人一倍味わってきたからこその恐慌だろう。
彼女が一番恐れていることだ、家族の喪失は。
それを一番大切な人のことで、心の中に土足で踏み荒らした気分だったのだろう。
誰だって一番大切な人の心の柔らかい場所を踏みにじりたくなんかない。
だから、人は他人には踏み入れられたくないパーソナルスペースがある。
和にいのそれはとても狭いけど、絶対に踏み込んではいけない領域だってある。
いのりんはこういうところに人一倍敏感な境遇で育ってきたからこそのことだろう。
あれ?
でも、考え方を変えればいいんじゃない?
私は一つ名案を、いや、迷案を思いついた。
これは諸刃の刃、伝家の宝刀だ。
女の子の絶対領域ともいえるパーソナルスペースを取り払う行為だ。
でも、和にいのように極端にパーソナルスペースが小さくて、そのスペースに入り込める唯一無二の方法だ。
私は意を決して口を開いた。
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