第三話 甘えさせたいの
体調回復です。
・・・朝だ。頭がクラクラして気持ちが悪い・・・。
そうか、昨日は自棄になって酒を飲んで茉莉ちゃんたちに抱きしめられて慰めてもらって眠ったんだっけ・・・。
俺は体をベッドから起こす。
両隣にはみんなが眠っていた。
「うぅ・・・ん。」
茉莉ちゃんが目を醒ましたようだ。
「おはよう、茉莉ちゃん。昨日はごめんね。」
「おはよう、和にい。
ううん、全然そんなことはないよ。和にいだって一人の人間なんだから、弱いところがあって辛い時やどうにもならない気持ちになるときだってあるよ。」
「うん。」
「そうね。だから、和樹はもっと私達を頼ってくれても、甘えてくれてもいいのよ。」
カレンもベッドから体を起こす。
「おはよう、カレン。
確かにそうなのかもしれないな。」
「ええ、それはもう。貴方は一人でなんでも出来ちゃうタイプで、器用に人に頼って物事を進めていくけれども自分のことはおざなりに、いえ、気にしようとしないから質が悪いわ。」
「これからは気にするようにするよ。」
「なら、もっと甘えちゃってよ。そうしてくれたらわたしたちは嬉しいかな?
だって、わたしたちは大木さんともっといろんなことを共有していたいんだ。
たとえそれが辛いことや悲しいことでも一緒に分かち合いたいの。
大木さんがそうしてくれたように、わたしたちだって大木さんにそうしたいんだヨ?」
次に綾瀬君が目を醒ましたようだ。
「確かに、俺はそういう視点がなかったのかもね。
綾瀬君はなんでも受け入れてくれそうだし。」
「そうそう、いのりちゃんはなんでもドンと来いだよ!」
「あはは。いのりちゃんだと明るくしてくれるね。」
「そうね、底抜けにバカをやってくれそうだわ。」
「もう、二人ともいいとこだったのにぃ。」
「ははは。」
俺は三人の遣り取りを見て声を上げて笑う。
確かに今までの俺だったらこうはならないだろう。再び悲嘆にくれて酒を煽ったり、何もせずに呆然としているだけだったんだろう。
「だから、私達が、和にーちゃんと一緒に歩みたいの。」
楓ちゃんが目を醒ましたようだが、まだ眠たいようだ。
さっきの俺の笑い声で起こしてしまったようだ。
「和にーちゃんと、私達も家族、良いも悪いも、みんな分かち合うの・・・。」
「ごめんね。まだ、眠たいよね楓ちゃん・・・。」
「ううん。いい。和にーちゃんがそういうふうに変わってほしいし、私達もそういう関係になりたい。」
「だね。私達も和にいにもっと甘えたいんだよ?
いっぱい良いこと、悪いこと、辛いことを聞いてほしいの。
そして、その逆もそうだよ。」
「そうね。和樹にしてもらえたことを私達もしてあげたいの。包み隠さずに。」
「そうだよ。大木さんに同じ視点で見てもらえるんだから、わたしたちも大木さんの視点で見たいんだよ、全てを。」
「みんな・・・。」
そう言ってみんなが俺を抱きしめてくれる。
暖かい・・・。
多分、久しくこの感情を味わったことはなかった。
家族・・・。いや、愛おしい感情がそれなのか、はたまた何らかの愛なのかはわからない。
でも、間違いなくこの4人に対して俺自身の見る目が昨晩の件で変わったのは確かだ。
全てをさらけ出して受け入れてくれる彼女達に対して、俺自身も全てをさらけ出して受け入れてあげないといけないと思えた。
いつか終わりが来る時がこようともこの関係を、今を大切にしていきたい。
自然とみんなを抱き返していた、力強く。
「あん! 和にい!」
「ちょっ! 大木さん!」
「もう・・・。遅いわよ、バカ・・・。」
「くるしぃ・・・。でも、気持ちがいい・・・。」
ピピ、ピピピ、ピピピピ
「!!」
誰かのアラームが鳴り響いた。
そういや今日は平日の朝だもんね。
「あーーーー!!」
「時間!」
綾瀬君が時計を見て、驚愕する。
いつも朝ごはんを食べている時間だった。
アラームは楓ちゃんのスマホからだったようで顔を真っ青にしている。
この二人は学校の始業時間が一定なので決まった時間に出発しなければならない。
「とにかく、ごはんだね。
茉莉ちゃん、カレン! 今日は午後から学校でしょ?
朝ごはん、大木さんの分もお願いできるかな?」
「うん、大丈夫だよ?」
「早く楓の分も作りに行きなさいな。」
「わかったヨ!おねがい!!」
「お姉ちゃん、カレン。午前は和にーちゃんを独占していいから、帰ったら私といのりんで独占でいい?」
「いいわよ。」
「うん。」
「約束。いのりんにも伝えておく。」
なんだか、俺が取引材料にされている・・・。
この子たちは俺を一体何だと思っているんだろうと思う時がたまにあるよね。
立花さんの影響かな?
二人はドタバタしながら綾瀬君の運転する車で学校に向かった。
「ふぅ・・・。やれやれだね。」
「仕方がないわ。私達と違ってスケジュールがフレキシブルじゃないもの。」
「だね。和にい、ごはんは?」
「う~ん、あんまりかな。
今日はベッドに横になっていようかな。」
「わかった。カレンさんとごはんを用意して身だしなみを整えてくるから待ってて。」
「うん。」
俺は再びベッドに潜り込んだ。今までとは違って本当に爽快な気分だ。
しばらくすると二人が戻ってきた。
「和にい、おまたせ。」
「起きれる?」
「ああ。」
体を起こして二人を見る。
茉莉ちゃんがお粥の入った小鍋を持っていて、カレンが水差しを持っているのはわかる。
だが、問題は服装だ。
二人とも、さっきまで来ていたパジャマから服に着替えるのではなく、新しいパジャマに着替えてきたのだった。
「・・・。あの、これは?」
「言ったじゃない。貴方と分かち合いたいって。」
「だから、私達が大学に行くまで今日は抱きしめてあげることにしたの。」
平然とさも当然のように二人は言うがおかしいだろ。
「なあに? おかしいってかおしているわね。ちっともおかしくなんてないわ。
言ったわよね、全てを分かち合いたい、甘えたい、辛いことや悲しいことを共有していきたいって。」
「そうだが・・・。」
「そうだ、じゃないよ和にい。女の子のそれはこういう事なの!
だから、なんにもおかしくなんてないの!
和にいの辛くて悲しいことを共有したいし、私達の嬉しい気持ちや愛おしい気持ちを共有してほしいんだよ。」
そういって、茉莉ちゃんとカレンが匙でお粥を救って差し出してくる。
「「あ~ん」」
「あ、あ~ん?」
結局、かなり甲斐甲斐しくごはんを食べさせられ、その後は二人が大学に行くまで一緒にベッドで抱きしめられて横になることになった。
綾瀬君と楓ちゃんが学校から帰ってくると、また二人に同じようにされた。
一体どうしてこうなったんだ・・・?
カレン曰く、とやかくは聞かないし言わないわ。女の子にキツーく当たったせいで逆に覚悟させたんですもの因果応報よ。互いに悪い報いではないから良いでしょ?とのことだ。
確かに、悪い気はしない。
今まで以上にみんなに対して素直になれる気がするし、みんなも素直になってくれていると思う。
そして、その日を境に俺たちの関係は新しい関係へと変わっていくのであった。
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頑張れる気がします。




