第八話 パパ、ママ襲来
お盆が明けて、カレンと綾瀬君が帰ってきた。
カレンは来日した両親と一緒に俺の家にやって来ていた。
これから修造さんや常見に明美ちゃんが来ているので、俺たちの進める店舗の最終的な確認を行うことにしている。
何故、事務所ではなく俺の家かというと、カレンの両親がついでなら今カレンが住んでいるところを見てみたいということになったからだ。
「紹介するわ、私の両親のピーター・ダニエルと美玲・最上・ダニエルよ。」
「初めまして、カレンの母の美玲です。」
「ダディのピーターデス。」
家に着いたカレンは家のリビングで待っていた俺達みんなと修造さん、常見、明美ちゃんに早速紹介してくれた。
ピーターさんは背が高く筋骨隆々とした白人で人の好い顔をしている。
美玲さんはカレンから外人の要素を取り除いた小柄な人だった。
早速、俺たちが自己紹介しようと口を開こうとすると、美玲さんが話しかけてきたくれた。
「お話はカレンから聞いています。あなたが大木 和樹さんね。娘がお世話になっております。
なるほど・・・。うん、あなたなら任せられそうね。
で、みなさんが、茉莉ちゃん、楓ちゃん、いのりちゃんね。
いつもカレンからお話を聞かせてもらっているわ。迷惑とかかけていないかしら?
この子、結構意固地でわがままだから。
これからもよろしくしてやって頂戴。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「あはは・・・。そんなことはないですよ。カレンさんには学校でも助けられてますし。」
「うん、カレンは勉強を教えるのが上手。」
「いい友達ですヨ。」
「もう!! ママっ!!」
カレンが顔を真っ赤にして美玲さんを窘める。結構、グイグイ来る人のようだ。
確かに、カレンの母親だと思う。こういうところはカレンにそっくりだ。
「オオキさん、カレン、ごメイワクをカケしてイマセンカ?」
「いえいえ、俺たちのために来日してもらってホントいろんな面で助かっています。」
「ナラ、ヨカッタ。ムカシからトラブルをおこしやすい性格。」
「パパもっ!!」
ピーターさんも気遣いをしてくれている。
本当に二人の性格を合わせたようなカレンだ。こんなご両親に育ててもらってまっすぐな性根に育ったんだろう。
しばらくはみんなで歓談して、俺たちはカレンと進める店舗の話になった。
茉莉ちゃん達には二階に上がってもらって話を進めることにした。
『で、今回、パパママに来てもらったのは、私のプロデュースするお店にロスのお店の名前を使わせてもらいたいことの最終許諾と、内装、メニューの確認ね。』
『はい、常見君と私の会社で運営を行いますので、その辺りの諸条件を詰めさせてもらえればと思います。
』
『ウチの社長は英語が出来ませんが、私と和樹くんが実質的な経営的なお話をさせていただき、彼には最終判断だけしてもらいますので、お気になさらずに。』
『おおよその資料はカレンから送られておりますので、ご一読いただいているとは思いますが主要メンバー、全員で再度読み合わせして確認させていただきサインいただけるもの修正が必要なことをお話しできればと思います。常見は私の方で適宜通訳させてもらいます。』
「何言ってるのか全く分かんないですけど・・・。」
「大丈夫ですよ。みんなで責任を持ちますからジョーさんはドンと構えてくれれば。」
「はぁ・・・。まあそうっスね。」
『では、ビジネスの時間としましょう。』
ピーターさんが開始の口火を切って必要事項を確認していく。
常見以外は英語で話をしているが、アイツは必要なことを伝えるのと、判断さえしてくれればいいのでしばらくは放置だ。
で、サインは順調に進み、何点か修正点を入れられながらもおおよそはまとまった。
時計を見てみると正午過ぎになっていた。
「そろそろ、お昼ね。皆さん、手早く話をまとめてランチにしましょうか。
大木さん、キッチンをお借りしても?」
「ああ、問題ないですよ。食材とかは大丈夫ですか?」
「カレンからキイていマス。ウチのメニューがデキるくらいのショクザイがあるのを。
ですので、ダイジョウブ。」
どうやら、カレンの両親が料理をしてくれるらしい。
もちろん、店で出す予定のサンドをだ。
カレンにとっては久しぶりのおふくろの味のようなものか。
俺達は手早く話をまとめて契約書を取り交わした。
これで俺たちの計画は最終的にOKが出たので、後は開店準備に入るだけだ。
ピーターさんが美玲さんを伴って足早にキッチンへ向かい準備を始める。
綾瀬君も二階で聞き耳を立てていたのか、急いで二階から降りて来て教えを請うている。
カレンから話を聞いている二人は大歓迎だった。綾瀬君もアメリカンな調理を教えてもらって勉強になっているようだ。しかし、意外と英語が流暢だな。
「ふう、これでようやくね。」
「ああ、カレンのおかげだ。」
「そうね、カレンちゃんのおかげで、私達の計画は一回りも大きくなったものね。」
「私もいいビジネスをさせてもらっているよ。」
「ま、俺のセンスが良かったんだろ。」
「ジョーはともかく、皆さんのおかげで一先ずはここまでこられました。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
「ああ。」
そうしているうちに準備が出来たらしく二階にいた、茉莉ちゃん、楓ちゃんに修造さんが立花さんと奥さんを家に呼んで昼食となった。
みんなでカレンの実家のカフェの味を堪能した。
アメリカンな味や外見なのに、奥には味わい深い出汁の味が効いている。確かに日本のガイドブックに必ず掲載されるわけだ。恋しい味に現地の味がミックスされているからな。
「ふふっ。私がピーターに出汁を入れるように言ったんですよ。そうしたら売り上げが大きく上がったんですよ。」
「うん、ママの味ね。」
カレン達は仲良く料理しながらビールを飲んでいた。
あ、この家系は飲む家系だ・・・。
だから、ビール用冷蔵庫を購入したのか。多分実家でもこんな感じなんだろう。
楽しい時間が過ぎていく。
修造さん達は予定があるので、常見と明美ちゃんも仕事があるので早々に帰っていった。
そして、カレンのご両親も飛行機があるのでタクシーを呼んで帰ることにした。
「俺が送っていきますよ?」
「いいのよ。そこまでしなくても。他の皆さんに悪いわ。
ただでさえここに来ているのも申し訳ないくらいだもの。」
「ママ・・・。」
「あ、いえ。気にしていませんよ。私達。」
「うん。」
「別に不幸な身の上自慢したいわけじゃないですよ。一緒に入れた時間は少ないかもしれませんけど親の愛はちゃんと受けてきていますから。」
「そう、ごめんなさいね。」
「みんな、ごめんね。」
「そうそう、みんなカレンも含めてだけど、がんばってね。気付いていないのか気付いているのかは解からないけど女の子の心のヴェールよりも厚いカーテンを開けるのは相当なことよ?」
「「「「!!!」」」」
みんな急に沸騰したように顔が赤くなり下を向いていた。
そんなことを言い残してカレンの両親はアメリカに帰っていった。
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