第七話 みんな一緒に
花火大会も終わり、綾瀬君とカレンはそれぞれ帰省するということで帰省ラッシュに巻き込まれる前にそれぞれの家族の元に向かった。
カレンの両親が今年は日本にやって来るとのことで、福岡に向かう綾瀬君と空港で別れ、両親と共に島根に向かい、お盆が明けたら常見、修造さん、俺、明美ちゃんを交えてお店のプランの最終確認をしてもらうことにしている。
その間、家には俺と茉莉ちゃんと楓ちゃん姉妹しかいなくなった。
「う~ん! なんだか本当に三人って久しぶりだね。実際は始めの数週間くらいで、今から数か月前だったんだけど昔のことのようだよ。」
「うん、中身の濃い日常だった。」
「ああ、そうだよな。ホントみんな生活がガラっと変わったもんな。」
背伸びをしてソファで寛ぐ茉莉ちゃんの言葉に俺たちも返事を返す。
「で、ものは相談なんだけどな。三人で墓参りに行かないか?」
「亜咲ねえの?」
「ああ、でも二人が良ければ高健寺に預けているおじさん、おばさんの遺骨もお墓が建つまで一緒のお墓に入れてもらうのはどうかな?」
「いいの? 和にーちゃん。」
「ああ、いいもなにも、亜咲や俺の家族、亜咲の家族の遺骨が全部納められているからね。みんな一緒だ。」
「それじゃあ、お邪魔させてください、和にい。」
「うん、お願いします。」
「いやいや、別に俺にお礼を言う必要はないよ。俺から見たらみんな大切な家族だ。
だいたい、あんな田舎で昔から隣り合っている家なんだから、当然何代か前には互いの家の血が入っているから血は実際に繋がっているしね。他人行儀は必要ないよ。」
「あ、そう言えばそんなこと聞いたことあるね。」
「和にーちゃんが夏休みの課題に家系図を紐解いていたら見つけてきたんだよね。」
「別にじいちゃんたちは知っていたけどね。」
たしか小学生の夏休みに蔵の中から家系図を見つけて紐解くみたいなことをしていたら、お隣さんの深山家と大木家は江戸時代からずうっとあの場所に住み続け、何代かに一度は互いの家の誰かが結婚していたようだった。
まあ、山奥の集落だからね、よくあることといえばそれまでだけど。
嬉々として俺たちが祖父母、両親に話をしたら、さも当然の返事を返されて憮然としたことを覚えている。
後になって考えると、あれほど家族同然に暮らしていたのはそういう事情があったからだと思ったがな。
そうして、お盆のお墓参りの日になった。
亜咲をはじめみんなの墓は、宝くじが当たってから高健寺の墓地の一番奥の緑に囲まれた見晴らしのいい高台に移設した。
もともと先祖代々のお墓は災害で流されてしまった。もちろん深山家のもだ。
だからこその今回の提案だった。
朝方の七時ごろに俺たちはお墓に向かった。
茉莉ちゃんの両親の遺骨をウチのお墓に入れるという話を親父さんにしたらお務めをしてくれるとのことで、明け方の涼しい時間に行うことになった。
俺達は礼服と制服に身を包み、お墓を清めて親父さんの到着を待った。
「おう、和樹。待たせたな。茉莉君に楓君もおはよう。」
「すいません、ご住職様。今回もお世話になります。」
「ありがとうございます。」
「なに、気にするでない。これはワシの好意じゃてに。」
「ま、そういうことだし、気軽にしていてくれよ。」
親父の後ろから僧衣を着た常見も顔を出す。
「今回は亜咲の墓参りと二人のご両親の納骨ってことで、俺も手伝いに来たのさ。」
「常見さん、ありがとうございます。」
「なんだか、意外な格好。」
「一応!俺、ここの寺の次男坊!! カレンと出会ったのもまさに御仏に尽くしていたか・・・イッテ!」
「ばかもんが! ただ、カジノで素寒貧になっただけだろう! ギャンブルで負ける時は身の破滅までやりつくせと教えたろうに。」
「いや、親父さん。それ、説教になっていないから・・・。」
この親子は大のギャンブル好きだ。勝つときも負ける時も派手にやるタイプだ。
そんなやり取りをしていると、茉莉ちゃんたちが笑っていた。
「お、みんな揃っているね。」
「ちょうどいい時間だったね。」
啓介、里奈夫婦もラフではない格好でやって来た。
この話は教えていないんだけどな。
「俺たちは常見から聞いてな。せっかくだから亜咲の墓参りもついでにってね。」
「私たちは朝早くか、夜遅くしかこれないからね。」
「というわけさ。里奈なんかホラーがこわ・・・いてっ!」
「余計なことは言わなくていいの!!」
「あはは!!」
「こら! 茉莉ちゃん!!」
「里奈さんがホラーが怖いのは意外。」
「怖いものは仕方がないの。勘弁してよ・・・。」
里奈が啓介をしばき、茉莉ちゃんが笑っている。
本当に俺達は人に恵まれている。
なあ、亜咲。
そうして、親父さんと常見の読経が始まり、納骨の法要を行ってくれた。
しかもキチンとした納骨の法要だ。普通は無料で行ってくれるようなものではない。
ましてやこの大きな寺の住職と次男坊が来てなら、なおさらだ。
滞りなく法要は進み、納骨となった。
俺がお墓の納骨庫の扉を開ける。
一番手前には亜咲の遺骨が納められた真新しい骨壺が安置してある。
亜咲・・・。
俺は涙が抑えられず手が震えていた・・・。
後ろから、茉莉ちゃん、楓ちゃんが声を殺して泣き崩れている。
再会を焦がれていた亜咲が今はちっぽけな骨壺だ。そんな事実を目の当たりをして亜咲が本当に死んだ。お骨になってしまったことに耐えられなくなったんだろう。
親父さんと常見が二人に付き添っている。
その後ろで里奈がすすり泣いている、一番の親友だった亜咲がそうなった物なんていつ見ても気持ちがいい物ではない。苦々しい顔をした啓介が里奈を抱きしめている。
俺は亜咲の骨壺に手を触れる。
「亜咲・・・。ひさしぶり。今日は深山のおじさん、おばさんも一緒に眠らせてもらうことになったからよろしく頼むよ。」
そう言って後ろに向かい、親父さんに引き継ぐ。
「お願いします。親父さん・・・。」
「うむ。・・・ほら、茉莉さん、楓さん。ご両親を納めてあげて。」
「・・・はい。」
二人は常見から両親の骨壺を渡され亜咲の骨壺の隣にそれぞれ安置する。そして、亜咲の骨壺を愛おしく撫でていた。
「・・・お父さん、お母さん。みんなと一緒に安らかに眠ってね。」
「私たちは和にーちゃんや、みんながいてくれるから大丈夫、今日もみんなが来てくれた。」
「亜咲ねえもおじさんやおばさんたちも、お父さんお母さんのことをよろしくね。」
「私達は元気に頑張るから。」
そして親父さんの進行で俺は扉を閉めたのであった。
最後になり、喪主として茉莉ちゃんが皆に一言話をした。
「皆さん・・・。今日は亜咲ねえのお墓参りのついでかもしれませんが見ず知らずの私の両親の納骨まで見届けてくださりありがとうございました。私達、姉妹は和にいや皆さんに大切にしていただいて今はとっても幸せに暮らしているって、両親や亜咲ねえ、おじさんおばさん達に伝えられたと思います。
これからもよろしくお願いします。」
そう言って楓ちゃんと二人で頭を下げる。
心配しなくたって、ここにいるみんなはずっと二人の味方で、家族だよ。
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頑張れる気がします。




