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第四話 花火大会に行こう!

 花火大会の日になった。

 みんなで会場の高健寺に向かおうということになったので、今はみんなに加えて立花さんに百合子君も来ている。

 もちろん実家が呉服屋の百合子君に着付けの仕上げをしてもらい、みんなでおめかしをするためだ。

 そのため二階の多目的スペースが着付け会場になってみんなでワイワイと着付けをしている。

 俺はリビングでそんな騒ぎを耳に挟みつつコーヒーを飲みながら雑誌をタブレットで読んでいた。


「おお!! やっぱりいのりさんは見たままのナイスバディっすね!」

「だよ~。いのりちゃんスタイルに自信ありだよ!!」

「むぅ、今後に期待。」

「だね、楓ちん。がんばって!」

「巨乳の美里に言われて、嬉しくない・・・。」

「まあまあ、私だって高校に入ってからだよ?大きくなったのは。」

「・・・。お姉ちゃん、でも、悲しくない?」

「あはは・・・。いのりちゃんほどはないもんね。つつましやかだね、うん・・・。」

「遺伝は仕方がない・・・。」

「頑張ろう、楓ちゃん・・・。」

「まあ、そんな悲観しなくていいんじゃない? 人それぞれよ?美しさなんて。

 他人に固執するのもいいけれど、要はいかに自分が美しく可愛らしくあれるかよ?」

「なんだか、カレンが言うと嫌味だ~!」

「いのりだって、言っていたじゃない。お腹のお肉が・・・。」

「あーあー!! 聞こえない~!!」

「あはは!! なんだか胸のことを気にしていた自分がバカみたい!」

「だね、お姉ちゃん。」

「うぅ、この夏休みでかなり太ったかもです・・・。」

「美里、頑張って運動するしかないぞ!」


 なんだか楽しそうに話をしながら着替えているようだ。

 ホント最近はいろんな人がやって来て騒がしいな。でもそんな喧騒が耳触りがいい。

 今までは無音の伽藍洞の家だったからね。

 しばらくするとみんなが二階から降りて来た。

 俺は一足先に降りて来てくれた百合子君に着付け直ししてもらって待っていた。


「じゃ~ん!大木さんどう?」


 綾瀬君は白にピンクの差し色にフリルの浴衣だ。

 金髪の容姿の綾瀬君に絶妙にハマって可愛らしい。


「和にい、どうかな・・・?」


 茉莉ちゃんは赤に柄が染められた浴衣だ。

 鮮烈な色が茉莉ちゃんの儚さを強調していて美しい。


「久しぶりね、浴衣なんて。どうかしら?」


 カレンは白に藍色の染めが入った浴衣だ。

 清廉さがカレンの雰囲気をさらに引き立ててくれている。


「むう、この間の浴衣だから、新鮮味がない・・・。」


 楓ちゃんはこの間にデートに行った時の濃紺と黒の大人っぽい浴衣だ。


「みんなそれぞれ個性を強調するチョイスでとても似合っているよ。あまりに綺麗で可愛いから言葉が出ないよ・・・。」


 俺が顔を赤くして答えると、みんな顔が嬉しそうに破顔してはにかんでくれている。


「・・・恋は盲目ってやつだね。」

「百合子先輩、でも憧れますよ? こういうシチュエーション。

 他の子がいなければですけど。みんな人が良すぎですよ!」


 そして、みんなでミニバンに乗って高健寺に向かう。

 実は今日は道が通行止めで境内には入ることが出来ないのだが、親父さんがこの間の出張のお礼として特別に駐車場の関係者証とお寺の中の眺めの良い房を貸し切ってくれているのだった。


「うへ~。すごい人だかりだね。」

「この花火大会の時は歩いてしか来れない所を車で通るのもなかなかないよ。」

「人込みを割って進んでいるのはなかなかに時間が掛かる。」

「まるでモーセの海割り話みたいね。」

「でも、警備の人に誘導されているからなんだかVIP感がありますよね!」

「今日は大木さんのお陰でVIP待遇ですね! 皆のもの下に~。」

「あら、美里。そんなこと言っているんだから歴史の課題は終わったの?」

「う・・・まぁまぁですね。」


 境内の駐車場に案内されて、親父さんに貸してもらった房にみんなで入る。

 俺は一人、親父さんの所に挨拶に行った。


「どうも親父さん。今日はありがとうございます。」

「おう、和樹か。なに、先日の件は助かったし、お前のトコロのお嬢さんたちに迷惑を掛けたからの。

 心ばかりのお礼じゃよ。」

「いやいや、ここまでのことじゃないですよ。互いに持ちつ持たれつなんですから。」

「ふむ。確かに。じゃがいささかお前さんは人が良すぎるところが多い。たまにはわがままになってもいいんじゃぞ?」

「俺は今でも十分にわがままですよ?」

「なら、今日は存分に楽しんでいってくれ。」


 親父さんのいる花火大会本部を離れ、房に帰る途中の別の房には常見と明美ちゃんがいた。


「あれ? 常見に明美ちゃんじゃないか。」

「あ、和樹くん。」

「おう、和樹。今日は店のシフトが空いている子に房に招待して社員サービスしているんだ。

 だから、店は今日、浴衣接客デーだ。」


 奥には確かに常見の店の嬢たちがたくさん集まって思い思いにおしゃべりをしたり、お菓子を食べたり、飲んだりしている。

 何人かの知っている嬢たちが声を掛けてくれる。


「大木さん。こっちで今日は飲んでいきません? 社長しか男がいないんですよ。」

「明美センパイ、大木さんとご一緒しちゃだめですかぁ?」

「ダメ。今日、和樹くんは先約がいっぱいあるの。多分あなたたちが今から同伴する人の数よりも多い子たちを相手にするのよ。」

「だな。残念だが、今日のお相手は俺で我慢してくれや。」

「は~い。」


 そんな話をして、俺は常見達の房を後にする。


「おう、和樹。今日は楽しんでくれよ。

 あと、境内に繰り出して変な奴らにみんなが絡まれたら遠慮なくウチの坊主に声を掛けろよ?」

「ああ。そうさせてもらうように、みんなに伝えておく。

 まあ、流石に屈強なここの坊さん相手にメンチを切れる輩はいないしね。」


 常見が最後に声を掛けてくれた。

 ここ、高健寺には剣道、柔道場があり多くの僧侶がここでも修行をしている。

 地域にも教室として開放しており、かなりのレベルが高い選手も多く輩出している。

 そのため、スキンヘッドの屈強な肉体をした強面の坊さんたちが警備で境内のあちらこちらにいるのだった。

 房に到着すると立花さんと百合子君がいなくなっていた。


「あれ? 立花さんと百合子君は?」

「二人は先に食べ物とかを買いに境内に行ったよ、和にい。」

「美里も百合子ねえもお腹がすいたから食べ物を買いに行きがてら遊んでくるって。」

「なんだか、気を遣ってもらっちゃったね。」

「そうね。後で二人に何か買ってきておきましょう。」


 房の座敷に座っていたみんなが話してくれる。


「で、みんなはどうするんだい?

 開始まであと2時間ほどあるからね。遊びに行ったり、食べ物を買いに行ってくるかい?」

「ええ。そうさせてもらうわ。」

「で、大木さんがよければなんだけど、一時間ごとに交代でわたし達は出ていこうって思っているんだ。

 それに付き合ってほしいんだヨ。」

「ダメ?」

「お願い、和にい。」

「問題ないけど、誰と行く感じかな?」

「それはね・・・。」


 そういって茉莉ちゃんはあるものを取り出したのだった。





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