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第二話 大人な休日?

 慰霊祭からしばらくして茉莉ちゃんと楓ちゃんは泊りがけで老人ホームに入居するおばあちゃんに会いに出かけて行った。

 家にはカレンと綾瀬君が残っていた。

 数日間だが家には一応成人しかいなくなったので二人が飲みに誘ってくれて久しぶりにお酒を楽しめた気がする。

 いつもは茉莉ちゃんや楓ちゃんのことを気にして長酒できなかったが、今はそうではないので綾瀬君の作ってくれたおつまみをアテにワインやビール、カクテルを飲んでいたりする。


「和樹、意外とあなたお酒が強いわね。」

「う~ん、そうかな? 悪酔いする時はするぞ?」

「でも、わたし達一度も大木さんの介抱をしたことはないよ?」

「ほんとね。一応外国の血が半分は言っている私たちは何だかんだで強かったみたいで自信あったんだけど。」

「だね。いいんだよ? べろんべろんに酔っぱらっちゃっても。

 カレンといのりちゃんで大事に介抱してあげるよ~?」

「なんだか怪しいからしっかり自制させてもらうよ。」


 確かに最近この二人が酔いにくい、酔ってもすぐに醒めているのに気が付いた。

 精神的なバランスが崩れていなかったら普通にお酒に強い。

 この二人が酔っているのは何らかの精神的なショックが起因している時だけだよな。


「そういえば大木さん、明日の予定覚えてる?」

「ああ、カレンの車の点検の後、修造さんが紹介してくれたレストランで食事とショッピングだろ。」

「ええ、私たちの帰省の時のお土産を買うのに付き合ってもらいたいのよ。」

「だね。お土産の量がいのりちゃん多いから男手が必要なんです!!」

「わかっているって。なら二人とも今日は早々にお開きにして明日に備えよう。」

「そうね。」

「いのりちゃんはもちっとだけ大木さんにカクテルを作ってもらいたかったけど、明日にするよ。」


 翌日、俺たちは最近買った車の点検をディーラーで行ってから、修造さんが紹介して予約してくれたレストランで食事をすることになっている。


「おお、ここが噂のレストラン!!一度来てみたかったんだよね。」

「ええ、私も興味があったわ。あっちでも有名だったもの。」

「カレンも知っているのかい?」

「ええ、ここは世界的に有名なフレンチのシェフ、ジャン・ピエール・クーのレストランよ。世界各地に店があって、フランスの本店は星が付いているわよ。」

「そうそう、なんでも若い時に日本で修行をしていたらしくてね。それで日本料理のエッセンスをフランス料理に持ち込んで名を上げたシェフなんだよ。なかなか値段もさることながら、予約が取れないことで有名だよ。」

「そうなのか? 啓介の店なんかよりも?」

「う~ん。ルイジは大衆店依りでしょ。ここは高級店依りだからね。

 客層が違うから一概には言えないかな?

 あ、でも、啓介さんに里奈さんはここのオーナーシェフと知り合いなんだって。

 目を掛けてもらっているって言っていたよ。」


 そう言いながら俺たちは案内された席に着く。

 確かにメニューの値段はお高い、それでも客入りは上々。一概にルイジと比較はできないな。

 出てくる料理は日本人シェフが作る日本エッセンスのフレンチではなくフランス人シェフが作るそれといった感じで、日本人の俺には馴染みがない料理が日本料理の技術で饗されるのが判る。

 しかも、味わい深い出汁や装飾などは細かい技巧派日本料理のそれだ。

 綾瀬君が解説をしてくれるので、いかにすごいかを俺とカレンは聞き入りながら堪能させてもらった。

 今回、俺は運転手なのでお酒を飲んではいないが、二人とも適度にいい銘柄のワインをボトルで頼んで楽しんでいた。

 すると思いもよらない人物がやってきた。


「失礼します。お嬢さん方に私からのサービスのお料理です。」


 外人のコックさんが俺たちに小皿に載った料理を持って来てくれる。


「あ、ああ!!」

「うそでしょ?」

「??」


 二人ともその人物が誰かを知っているようで驚いている。


「申し遅れました。私はオーナーシェフのジャン・ピエール・クーです。

 啓介君から見込みのある若い卵がやって来るって連絡を受けていてね。ピンと来たんでサービスさせてもらいました。確かに見込みのあるお嬢さんだ。」

「わ、わたしっ、綾瀬 いのりって言います。来年からルイジで修行させてもらいます!!」

「よろしく、いのりさん。」

「でも、何故オーナーシェフのあなたがここに?」

「私はよく世界を掛け巡っているイメージを持たれているようですが、実は日本を拠点にしているんですよ。フランチャイズは専門のスタッフに任せていますし。」

「じゃあ、啓介さんはそのことを知って・・・。」

「ええ、公にはしていないですが、啓介君たちは知っていますよ。」

「ああ、なんだか恥ずかしい!!掌の上だったんだ!

 このお店に行くって言ってお店で言った時になんだか怪しいと思ったんだ。啓介さんがいいことがあるといいなって言ってたから!」


 綾瀬君は頭を抱えている。

 カレンは何食わぬ顔で料理を食べ始めている。


「あなたが啓介君のお友達の大木さんですか。」

「はい、大木 和樹と言います。」

「啓介君ほどの才能を見出した人物がどんな人か興味がありましたが、確かに興味深い・・・。」

「そんな人物には見えないと思いますよ。俺は。」

「そう思っているのは本人だけかもしれませんね。」


 そう言って、ジャンさんは厨房に戻っていった。

 また、ルイジを訪れる時があったら話そうと俺たちに言って。


 それから俺たちは綾瀬君とカレンのお土産を買いにデパートと大型ショッピングセンターに行った。

 カレンは祖父母にお菓子とお酒を買っていたし、綾瀬君は施設の子たちにと大袋のお菓子やおもちゃ、服などを大量に買い込んでいた。


 家に帰って、今日はカレンが夕ごはんを作ってくれた。

 意外にも日本食だった。

 それも白米、味噌汁、刺身に煮つけといったメニューだった。


「いのりや茉莉みたいに上手くはないかもしれないけれど、普通ぐらいの自信はあるわよ?」

「おおっ!刺身を自分で魚から調理するなんてなかなかやるね、カレン。茉莉ちゃんは出来ないって言っていたから。しかも、鮮度がいいお魚だね!」

「まあ、これでも漁師の孫よ。子供の頃からやっているもの。」

「ああ、とてもおいしいよ。」

「・・・バカ。ありがと。」


 食べ終わって、シャワーを浴びてからまた三人で酒盛りをした。

 今日は啓介に一泡食わされた綾瀬君がたくさん飲んでいた。カレンも心なしか、強い物を選んで飲んでいた。

 たまにはこういう時間を過ごすのもいいと思う俺であった。

 あと数年もすればみんなでお酒が飲めるんだな・・・。


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