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第十二話 リラックスタイム

これで第四章本編は終了です。

 楓ちゃんと美里ちゃんが行く予定だった温浴施設のチケットをもらって、カレンと入りに行ったらまさかの貸切風呂に案内された。

 一体あの二人は何で予約していたんだろう。

 まあ、ここはプールとかもあるし、水着になって遊ぶんだ後にでもゆっくり入るつもりだったのか。

 そんなことを思いつつ俺とカレンは更衣ロッカーで水着に着替え、その上から室内着を着てから集合した。

 俺が早いだろうと思っていたが、カレンがすでに待っていた。


「悪い。待たせたね。」

「いいえ、私もついさっき来たばかりよ。」


 心なしカレンの顔が赤い気がする。


「てっきり、俺の方が早いと思っていたよ。」

「実はね、出てくる時から下に水着を着ていたのよ。」

「ああ、だからか。」

「ええ。せっかくの温浴施設ですもの少ない時間で目一杯楽しみたかったの。」

「そうだね。夕ごはんの時間もあるからここを全部は楽しめないからね。時間の限り楽しもうか。」


 俺達はカウンターに戻って貸切風呂に案内してもらう。

 本当はプールにも入りたかったが時間的に無理そうだったので貸切風呂でお土産にもらったノンアルコールシャンパンとケーキを食べながら入ろうということにした。

 案内された貸切風呂は南国リゾート風の露天ジャグジーとガバナが置いてあるスペースだった。

 もちろん隣にも似たようなスペースが何個かありカップルや家族連れが利用していた。


「・・・なんだか、緊張するわね。」

「まあ、家族連れやカップルが多いしね。人目はあるかもしれないけど誰にも邪魔されずにゆっくりお風呂に入れるからいいじゃないか。」

「もう・・・。バカ・・・。」


 そうして俺たちは先ずケーキをガバナで食べることにした。

 都内にある有名店のケーキの詰め合わせだ。


「あら、ここのお店のケーキなら有名ね。いのりが前に研修帰りに買ってきて食べさせてくれたわね。」

「ああ。おいしかったよな。」


 綾瀬君はよくスイーツなどを買ってきてくれるのだが、ここのケーキはおいしかったのでなんだかみんなに悪いな。

 カレンが備え付けの皿とフォーク類を用意してくれて取り分けてくれる。

 俺にはラム酒が効いたモンブラン、カレンはチョコレートケーキだ。


「はい、和樹。あなたこういうのが好きなんでしょ。」

「お? 良く知っているな。」

「いつもこういう酒精が入ったスイーツを選んでいたから、好きなんじゃないかなってね。」

「確かにそうだね。何だかんだで食べているよ。でも、帰りの運転がなあ。」

「気にしなくていいわよ。私も運転してみたいものせっかくの()用の新車ですものね。」

「そっか、なら遠慮なくいただくよ。」


 俺とカレンは今日の車のことや、ビジネスの進捗やリハビリについて話しながらケーキを食べた。

 食べ終わってからはジャグジーに入ることにした。

 ここでもらったノンアルコールシャンパンを飲むことにした。

 ジャグジーに入る前にカレンの前でボトルを開けるが、意外と大丈夫そうな顔をしていたが、音がすると目がビックリして少し動いていたのが可愛かった。

 そして室内着を二人で脱いでジャグジーに向かう。

 俺は茉莉ちゃんが用意してくれた海パン。

 カレンは黒のビキニだ。ところどころにスリットが入っていてクールビューティーな外見も相まってとても美しく、艶めかしかった。


「・・・じろじろ見ないの。恥ずかしくなってくるじゃない。」

「いや・・・。とっても似合っているよ。美しかったから言葉が出なかったんだ。」

「バカ・・・。いいわ、許してあげる。」


 カレンは先にジャグジーの中に入っていってしまう。

 シャンパンをグラスに注いで、俺もジャグジーに入って乾杯する。


「カレンの新車に乾杯。」

「ふふ、いいのよ? 俺の新しいオモチャにって正直に言っても。」

「はは、そうともいうね。でも、一番の目的はカレンの足だからね。」

「ありがとう、和樹。大切に使わせてもらうわ。

 はい、乾杯!」


 カレンが微笑んでグラスを重ねてくれた。

 俺達はグラスの中を飲み干して互いにお酌しなおす。


「本当は、本物のシャンパンだったらよかったのにな。」

「仕方がないわよ。車屋がお酒を出して、帰りに飲まれでもしたら信用問題よ。」

「だよな。」

「でも・・・。泊りでこういうのも悪くないわよ?」

「ああ、温まるな。」


 外は真夏の暑い気温だ。だが、ジャグジーの温度はそれよりも熱いが、出てくる気泡がはじけて気持ちがよい。

 ここのジャグジーは天然温泉を利用しているので、カレンの靭帯の療養にも良いって楓ちゃんが言っていたっけ。


「ここのお湯は温泉成分が豊富に含まれているから、リハビリにもいいって楓ちゃんが言っていたね。」

「そうね、みんなにはいろいろ心配を掛けているわ。ホントいろいろと手伝って感謝しかないわ。」


 カレンは日常生活に問題のない程度に回復はしたが、まだポールにぶら下がったり、腕で自身の体重を支えるといったことが出来ない。

 病院でのリハビリと並行して最近は二階でポールを使って基本動作のリハビリを始めている。

 手の空いている子たちがカレンの補助について手伝っている。

 みんな俺に相当カレンが頑張っているって教えてくれていた。


「和にい。カレンさん相当頑張っているよ。涙を流しながら痛いのを我慢してトレーニングしているの・・・。なんだか私も泣けてきちゃって、カレンさんに怒られちゃったよ。」

「和にーちゃん、カレンがいつも筋トレのリハビリをしている。もっといい器具を買ってあげて。」

「大木さん、カレンのために体にいい食材を増やしたいんだけど、ダメかな?」


 という感じでみんな応援してくれている。

 もちろん俺も深夜にガレージでベソかいているカレンの話を聞いたりしている。

 家ではポールのリハビリをしているが、病院での靭帯を再び傷めないようにするための筋力トレーニングもかなりつらいようで百合子君に励まされながら取り組んでいるとのことだった。


「最近はうまくリハビリできているのか?」

「ええ、最近は大丈夫よ。本当につらいけど、みんなが和樹がいるから頑張れているわ。

 多分一人だったら諦めていたかもしれないって思うことはよくあるわ。

 私もここに来ていい意味で弱くなったって思っているの。

 特に和樹、あなたのお陰で。」

「俺かい?」

「ええ、自分の心の弱さをさらけ出して、不安を聞いてもらって、その上で支え、助けてもらえる。

 これが女の子にとっては一番大切なことなのよ。」

「なら、良かったよ。俺なんかでよければいくらでも。」

「・・・なら、今もそうさせてもらうわ。」


 カレンが俺の体に体重を預けてくる。

 ジャグジーの中だがカレンの温かい体温がやけに強調されて伝わってくる。


「ふふ、アルコールが入っていないのに酔っている気分ね。でも、とてもリラックスできるの。

 ああ、ずっとこのままでいたいわ。」

「温まってきたからかな、大丈夫か?」

「もう、バカ・・・。」


 俺とカレンはノンアルコールシャンパンを飲みながらそうしたままギリギリまで時間を過ごした。

 何だかんだでカレンがいてくれるお陰でみんながまとまっているから本当に家にもビジネスにも必要な大切な人だと思った。


 温浴施設を出た俺たちは充電が満タンになった車に乗り込み帰りはカレンの運転で家に向かった。

 途中で俺は気持ちがよくなっていたせいで眠ってしまった。


「ふふ・・・。今日はありがとう、とっても楽しかったわ。

 ・・・可愛い寝顔ね。みんなには悪いけど今だけは独り占めさせてもらうわ。

 愛しているわ、和樹・・・。」

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