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第十一話 車を取りに行こう

 ついにこの日がやってきた。

 いくら待ち望んだんだろう。

 楽しみにしていたんだ、あの日から。

 今日、漸くやって来る!

 あの車が!!


 俺は興奮して昨日から眠れなかった。

 先日、カレンと購入した車が今日納車される。

 今回は電気自動車なので充電ステーションの工事もあったが、それもすでに完了済み。

 後は納車される車を取りに行くのみだ。


 俺は朝早くに目覚めてしまう。

 夜もそんなに寝ていない。いや、眠れなかった。

 それだけ楽しみにしていたんだ。

 早くディーラーに納車された車を引き取りに行きたくてたまらなかった。

 そんな時、綾瀬君が二階から降りてきた。


「あれ、大木さん。おはよう。今日は早いね。」

「ああ、おはよう。前に行っていた車の納車日だからね。興奮して朝目が醒めちゃったんだ。」

「あははは。やっぱり男の人はいつになっても子供だよね。そんなところが可愛いよ!」

「いくらでも笑うがいいさ。楽しみで仕方がないんだから。」

「おはよう、和にい。昔から変わらないね。なんだかんだで楽しみのある日は朝が早いもん。」


 そう言って茉莉ちゃんが起きて来ていた。

 いつもは二番目にカレンが起きてモーニングルーティーンを行っているんだけど。


「おはよう、茉莉ちゃん。今日は早いね。」

「うん。私も早く起きちゃったから。」


 そう言って新聞を取って来てくれる。

 しかし、なんだかな。今日は茉莉ちゃんが早く起きて来ていたけど、カレンが珍しく寝坊でもしているのかな?

 朝食の時間前にようやくカレンが起きだしてきた。

 なんだかいつもより化粧がしっかりとしている気がする。

 今日はカレンも一緒に選んでくれた車を取りに一緒にディーラーに行く予定だ。多分そのせいだろう。


「おはよう。カレン。」

「っ!! お、おはよう。和樹。」


 なんだかぎこちないな。体調でも優れないのかな。


「? 体調でも悪いのか?何だったら今日、俺一人で・・・。」

「大丈夫!! 何でもないから!」

「そうか。」


 そう言って二人の所に行っていしまった。


 ●

「お、おはよう。二人とも。」

「おはよう、カレン。今日は楽しんできてね。」

「おはよう、カレンさん。()()の範囲内で思いっきり楽しんできてね。」


 私は茉莉といのりに挨拶する。

 実は、今日の日に合わせてみんが和樹とのデートを設定してくれた。

 そう、あの()()()()()()を、だ。

 事の始まりはこうだ。

 車の納車日が決まり、二人で取りに行こうと和樹が誘ってきてくれたのだ。

 それに合わせて、協定のデートをしてはということになった。


「でさ、カレンのお風呂デートはどうしよう。」

「うん、結構セッティングが難しいんじゃないかな?」

「む・・・。」

「なら、こうすればいい。美里経由でチケットを取ったとか言って、温浴施設のチケットをプレゼントすればいい。それで私たちは予定があることにしておけばいい。」

「まあね、大木さんなら信じてくれそうだね。」

「だね。カレンさんはそれでいい?」

「うう・・・。デートを他の子に管理されてお膳立てされるのがこんなにも恥ずかしいとは・・・。」


 もう私の顔は真っ赤だった。

 自分でも驚くくらいに暑かった。


 楓が起きて来て朝食になる。

 これから楓がこの話を切り出す予定だ。

 私は、心臓がバクバクしている。恥ずかしいのもあるが、実は後ろめたさもある。

 なにせ、みんなには秘密だがこの時のために水着をこの間のとは()()購入しているのだから。

 もちろん、和樹の証言ではみんなに別物とはわからない程度のバリエーション違いみたいなものだが。

 協定の範囲内ということで買ってしまったのだ。

 私でも心のコントロールが効かない、協定は難しい。

 あれば最後の堰となってくれるが、逆に逆手に取って最大限に楽しもうとする自分がいる。

 本当に度し難い。


 ●

 朝ごはんの時間に楓ちゃんが唐突に切り出してきた。


「和にーちゃん、お願いがあるの。」

「なんだい。」

「あのね。美里がね、私と一緒に行こうって言っていた温浴施設のチケットがあるんだけど急に予定が入って行けなくなったの。それで、和にーちゃんとカレンが今日そのあたりにいくから行ってきて欲しいの。」

「え? 他の日じゃダメなのかい?」

「うん、予約してある施設がある。だからもったいない。」

「う~ん。でも、カレンはどうかな?」

「わ、私は、だ、大丈夫よ。か、和樹。」

「体調は本当に大丈夫?」

「ええ!! 本当に大丈夫よ? なんならリハビリを今からやって見せましょうか?」

「い、いや。わかった。なら、ありがたく使わせてもらうよ。」


 こうして俺たちは温浴施設に寄ることになった。


 俺とカレンはみんなに見送られて、電車で都心のディーラーまで向かい、説明を受けてから車を受け取った。

 納車式をしてくれて、何故だか二人と車の記念撮影と記念品のケーキ屋らノンアルコールのシャンパンをもらってしまった。

 カレンは終始上機嫌で俺に笑顔で話しかけてきていた。

 まあ、それだけの買い物だもんね。即決値引きなし、即金だし。

 まずは俺が運転して楓ちゃんにチケットをもらった温浴施設まで行くことになった。


「ほら、カレン乗ってくれ。」


 俺は新しいカレンが選んだえんじ色のカラーのセダンのドアを開ける。

 タッチ式のプレートに触れると自動でガルウィングの扉が開く。

 カッコイイ!!

 俺は荷物を持ってくれているカレンをエスコートする。

 なにやら女子店員さんの黄色い声が聞こえる。


「モデルみたい・・・。」

「ああ、私もあんなお金持ちの彼女さんになりたい・・・。」


 まあ、カレンはこういった車が似合うクールビューティーだもんね。

 俺も乗り込んで、運転を始める。

 音が静かで滑り出しも滑らかだった。


「・・・。静かね。電動車は。」

「だな、インテリアも今までの車とは一線を画していて不思議だね。」

「そうね。ボタンがほとんどないし、タッチパネルですものね。」

「それになんといっても、話題の自動運転付き。はやく試してみたいよ。」

「過信はほどほどにね。安全は自分で責任を持つものよ。」

「わかっているよ。でも、カレンの腕が痛むときの万が一の備えになるかもしれないからね。」

「ふふっ。ありがとう。和樹。」


 二人でタッチアパネルをいじりあいながら楽しんで運転した。

 本当に楽しかった。

 それから温浴施設について、試しに充電ステーションで満タンにしてみようということでセットしてから受付に向かった。


「大木様ですね。本日は貸し切り風呂をご予約いただいておりますので、ご案内させていただきます。」


 なんと、このチケットは貸切風呂の予約だったようだ。

 てっきり、普通の温浴施設に別々に入るものだと思っていた。

 俺、水着なんて持って来ていないぞ?


「・・・。大丈夫よ和樹。茉莉がちゃんと水着を用意してくれているわ。」


 顔を赤らめながらカレンが俺に耳打ちしてくれた。

 恐ろしや茉莉ちゃん。

 洗濯物を片付けてくれてもらったり、身の回りの全てをやってもらっているから、なんでも把握されているんだろう。

 本当に助かった。

 茉莉ちゃんはいいお嫁さんになるな。うん。


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