第十話 おかえりなさい
俺は久しぶりに泊りがけの出張を終えて家へ向かう新幹線の中にいた。
親父さんに頼まれた仕事は問題なく終わり、予定していた日数よりも早く帰れた。
みんなに関西のお土産もたくさん買ってきたし、帰ったらみんなで食べよう。
俺が留守にしている間、みんな問題なく過ごせていたようで安心しているがやっぱり家に年頃の女の子だけを残してくるのは心配だ。
そんなことを思いながら窓から見える景色を眺めていた。
外は夕暮れに近いが青々とした田畑が見えたり、キラキラと輝く海の眺めが見える。
通り過ぎる駅には観光客がたくさんいた。
・・・みんな、もう夏休みか。
今、近所の花火大会を見に行こうって約束しているけど、折角だしどこかにでも遊びに行こうかな。
そう思って到着までの時間、俺はタブレットで観光スポットを検索していた。
しばらくして、自宅近くの駅まで到着したのでタクシーに乗り換えて自宅に向かう。
もうすでに辺りは暗くなっている。だが、自宅には明かりが灯っている。
今まで俺が一人で住んでいた時には有り得なかった光景だった。
それにただいまって感情も湧き上がってきている。
こういう気持ちだったんだと久しぶりに思い出す。
亜咲が生きていた時には当たり前だった感情が彼女たちと共に暮らすようになって再び確認できるようになってきた。
本当にみんなに感謝だ。
早く家の中に入って、みんなの顔が見たい。
そうして俺は家の扉を開ける。
「「「「おかえりなさいっ!」」」」
玄関では俺が帰ってきたのに気が付いたみんながやって来て出迎えてくれる。
茉莉ちゃんとカレンは荷物を持ってくれているし、綾瀬君はお土産の中身を楓ちゃんと確認して今からでも食べだしそうだった。
なんだかムズがゆい気分だった。
でも、みんなの笑顔が見れて、出迎えてもらえてうれしかった。
「ただいま。みんな。」
こうして俺の出張は終わりを告げたのであった。
家に帰って来てからシャワーを浴びて着替えると、ダイニングにはたくさんの食事が並んでいた。
「えへへ、今日は大木さんが帰ってくるからみんなで日中、料理していたんだ。」
「私もがんばった。和にーちゃん食べてみて。」
「あはは、ちょっと頑張りすぎちゃったけどね。」
「ま、余ったらしばらくお昼ごはんとかにでもしましょう。ゆっくりする時間が増えるわ。」
「だね。夏休みだからね。やることはやらないといけないけど、思いっきり楽しまないとね。」
そうして席についてみんなで食べ始める。
この数日久しぶりにホテルに泊まって一人でコンビニ弁当やラーメンとかを食べていると、こんな暖かい団欒の食事の時間が本当に楽しいし、それだけでごはんがおいしいと思える。
食事を終えても今日はみんなリビングに集まっていた。
そして俺の出張中の話を聞いてくる。
「和樹、出張はうまくいったの?」
「ああ、当初の見立てだったら後一日、二日の予備日も使いそうだったけど、うまく最後に進んでくれて何とか終わったよ。久し振りの導入案件だったし、前準備もそんなにする時間がなかったけど良かったよ。」
「へぇ。和にいは前はこんな仕事をしていたの?」
「うん。大手のシステムエンジニアをしていたよ。あの頃はお金と時間が欲しくてとにかくがむしゃらに働いていたよ。亜咲の治療費だってバカにはならなかったからね。」
「和にーちゃん、えらい。」
「大木さんがまともに働いているなんてなんだか新鮮でカッコよかったよ!」
「あのね・・・。いっつもヒマしているワケじゃあないよ。たまには真面目に仕事だってするさ。」
「ふふ。だって私達はお金持ちの和樹しか知らないんですもの。
だから、和樹がスーツを着てキャリーを持って出かける。そして、帰ってくるのが新鮮だったのよ。」
「うん。学生服の和にーちゃんしか知らないから新鮮だった。」
「えへへ、なんだか和にいをお見送りして、お迎えしてると若奥様みたいだったね。」
茉莉ちゃんがそんなことを言うと、何故かみんな顔を赤くする。
三十近い男の出張の行き帰りでそんなことを思われてもね。
みんな、俺みたいなオッサン予備軍より若くてカッコいい彼氏が出来てから言ってあげてよ。
「もう、茉莉ちゃんってば。」
「そうよ、茉莉。思っても口に出さないの。」
「お姉ちゃん妄想がダダ洩れ。」
「あはは・・・。ごめんごめん。和にい気にしないでね。」
「ああ。」
出張の話がひと段落すると今度は俺がみんなに留守の間どうだったかを聞いてみた。
「なあ、みんなは俺がいない間どうしていたんだい?
何かあったかい?」
「う~ん、あったような、なかったような。かな?」
「だね。」
「そうそう。」
「まあ、女の子だけの日常ですもの、詳しくは聞くのは野暮ってもんよ。」
「そうか?」
「まあ、楽しくお話したり、お料理したり、お買い物したりだね。」
「普通の女子会。」
「和にいだけがいないのは初めてだったけど、楽しかったよ。」
「ええ、本当に有意義な時間だったわ。」
そう言いながらなんだかみんな微笑みながら顔を見あっていた。
何だかんだで楽しんでくれていたようでよかった。
多分、俺がいないからいろいろと羽を伸ばして寛いで居たんだろう。
男の俺がいると何かと気を遣うこともあっただろうからね。
たまにはこういう時間を作ってあげるのもいいかもな。
「そうそう、新幹線に乗って帰ってくる時にさ、ふと思ったんだけどこれから夏休みに入るよね。
だから、どこかに遊びに行かないかい?」
「あっ!わたし達からもその話をしようと思っていたんだよ。
実はね、そんな話を大木さんのいない間にしていたんだよ。
で、美里ちゃんに伝手はないかなって聞いてみたら、なんと・・・!! 海辺の貸別荘があるらしいんだ。日時は大木さんとわたし達の都合のいいときでって言う事なんだ。もちろん前回と一緒で美里ちゃんも一緒にね。
てへ、もうすでにお話が出来ていたりします!
どうかな?大木さん。」
「おお!? なんだか知らない間に話ができているね。
みんなもそれでいいんだよね?」
「うん。楽しみ。」
「早く行きたいよ、私。」
「そうね。早くバカンスを楽しみましょう。
それと、これに合わせて水着を買ってきたんだから楽しみにしていなさい和樹。」
「いのりちゃん、大木さんを悩殺しちゃうヨー!」
「いのりん、負けない。私はかわいさで勝負。」
「ちょっと恥ずかしいけど、頑張ってみたよ。」
「楽しみにしているよ。後で詳しい予定を立てていこうね。」
こんなやり取りをしながら、これから始まる夏休みに俺たちは期待で胸を膨らませていくのであった。
気に入っていただいたり、気になった方は是非!
評価、ブクマをお願いします!!
感想も教えていただけると助かります!




