第四話 いのりとデート~大きな手掛かり~
茉莉ちゃんとデートに行った翌週に俺は綾瀬君と飛行機に乗っていた。
「いや~。悪いね。大木さん、飛行機代まで出してもらって。」
「気にしなくていいけど、まさか綾瀬君が九州の出身だったなんてね。」
「そっか、どこかまでは言っていなかったもんね。」
事のは始まりはこうだ。
茉莉ちゃんとのデートから帰ってきて、リビングで寛いで居るとガレージから瓶ビールを綾瀬君が持って来てくれた。
「はい、今日はお疲れ様。」
「ああ、ありがとう。
今日は珍しいね。飲みに誘ってくるなんて。」
「うん、ちょっとね。
次は、私とお出かけの予定でしょ。その行き先についてね。」
「決まっているところがあるのかい?」
「うん、一応。」
「どこなの?」
「九州。わたしが育った孤児院に行きたいな。
それと、この間火事の時に警察の人が調べてくれるって言っていたでしょ?
この間、電話があってさ。一度、現地の警察で調べたいことがあるから時間があるときに来てくれって言われてね。」
「進展があったのかな?」
「わからない。でも、DNA鑑定用のサンプルと状況の確認を行いたいって。
まあ、今更望み薄だけど行ってみたくてね。どうかな?」
「もちろん、いいよ。いつ行く?」
「来週の土曜日はどうかな?」
「じゃあ、チケットを取っておくよ。」
しばらくして、福岡に到着しレンタカーを借りて綾瀬君の運転で預けられていた孤児院に到着した。
「大木さん。ここが私が育った孤児院だよ。ようこそわが家へ。」
そう言って俺を中に案内してくれる。
「おかえり!!いのりねーちゃん!!」
「おっ、拓坊!背が伸びたね!!」
「あ~、いのりねえが男の人を連れてきた~!!彼氏さん?」
「違うって。私のあっちでの保護者の人。」
施設に入るや否や、玄関で待ち構えていたであろう何人もの子供たちに囲まれている。
やっぱりここでも人気者だったんだね。
そうしていると、恰幅の良い老年に差し掛かった女性がやってきた。
「すいません。わざわざこちらまでいのりを連れてきてくださって。
火事の後には何から何までお世話になってしまい。
ご挨拶がおくれましたが、ここの責任者の西岡です。」
「いえ、これはご丁寧に・・・。大木と申します。」
俺は西岡さんに案内されて、応接室に通される。
綾瀬君は子供たちに持ってきた大量のお土産を配ったり、遊び相手になったりしている。
「突然、いのりから帰省したいと連絡があった時は驚きました。
あの子、電話はしてくるんですけど、なかなか金銭的な都合で戻ってこなくて。」
「ああ、そうなんですか。
まあ、今回はいろいろありましてここを訪れることになりました。」
「大木さんはいのりから事情は?」
「私はおおよそ聞いております。彼女が就職内定している料理店の店主夫婦もあらかたは。
一応、私もその店の出資者の一人でして、今回内定のお話をという意味でもお邪魔させていただきました。」
「それはそれは・・・。火事で焼け出されてから就職先まで何から何までお世話になりっぱなしのようで
。」
「いえ、いつも私の家に住んでいる者においしいごはんを作ってもらって大変ありがたいです。
料理店の店主夫婦からもよろしくお伝えくださいと言われております。」
そういって、俺は啓介が作った大量のキャンディースイーツを渡す。
「今回滝川夫妻は仕事が忙しいので、お詫びにと。滝川 啓介のキャンディースイーツです。
施設のみなさんで食べてください。」
「まあ。こんな高級なものを・・・。ありがとうございます。」
「いえ、そんな高級なものじゃないと言っていましたよ。綾瀬君でも作れると。」
「そうですか、かなりご信頼いただいているようですね。」
「ええ、ですから私どもはこの早い時期にスカウトという形で内定を学校を通じて出させていただいております。ご存じの通り繁盛店なので、綾瀬君のような才能あふれるスタッフを欲しておりましたので。」
「ほんと、あの子は幸せ者ですね・・・。」
そうして西岡さんとの話が終わり、子供たちと遊んでいた綾瀬君も西岡さんといくらか話をして、孤児院から出発する。
「それじゃ、みんな元気でね!西岡先生を困らせるんじゃないゾ!!」
「うん!!」
「また、帰っておいでいのり。」
「うん、行ってきます!」
次に近くの墓地で、綾瀬君に良くしてくれていた老夫婦のお墓参りをする。
「じいちゃん、ばあちゃん、ただいま・・・。
久し振りだね・・・。
わたしもさ、火事で焼け出されちゃったよ。
じいちゃん、ばあちゃんのことを思い出すと今でも涙が出てくるよ。
何とか大木さんに拾ってもらって暮らさせてもらっているから、安心して見守っていてね。」
そして、最後に警察署を訪れる。ここでDNA鑑定用の試料を取りたいとのことだった。
俺達は、応接室に通される。そこには初老の厳つい顔つきの警官がいた。
「遠いところはるばる、ありがとうございます。
私、刑事の藤堂というものです。」
「綾瀬です。今日はよろしくお願いします。」
「付き添いで保護者の大木です。」
「どうぞ、こちらへ。」
藤堂さんに促されソファに座る。
「早速ですが、試料の採取をお願いします。」
そう言って藤堂さんが鑑識の人を呼んで綾瀬君の毛髪と唾液を採取していった。
「それでですね。綾瀬さん。あなたのことについてなのですが・・・。
現在もわからないというところが正直なところです。
ですが、ひょっとしたらという可能性がないわけでもないのです。」
「それって!」
「いえ、まだ可能性です。この件に関しては捜査の関係上お話しすることは出来ませんが、鑑定能力の進歩によってもしかしたらわかることがある可能性があったのです。
ですので、わざわざご足労いただきました。
無駄な期待をさせてしまうかもしれないので心苦しいですが。」
「そうですか・・・。」
「でも、刑事さんの口ぶりからすると何か心当たりがおありのようですが?」
「ええ、それは事案にかかわることですのでお話しすることは出来ませんが、確かに心当たりはあります。ですが、確証はありません。また、確定できてもお知らせすることが出来るまでには時間が掛かります。
少々ややこしい事案でしてね。裁判が結審しないとどうしてもだめなんですよ。」
「そうですか・・・。でも、可能性はあるんですよね。
わたしの両親の心当たりも。」
「それも申し上げることはできません。ただ、ご親類の方はわかるかもしれない程度に思っていただければ。」
「じゃあ、もしその可能性が当たっていて、刑事さんがわたしの両親を知っていたら伝えてもらえませんか?
わたしは何にも恨んでいない。感謝しかないって。そして、会えるなら会って話がしたいって。」
「わかりました。その時にはお伝えさせていただきます。」
綾瀬君は藤堂刑事と連絡先を交換して、警察署を後にして、夜の空港に向かう。
今日の最終便で戻る予定だ。俺たちは搭乗するまでの間、屋上の展望台で時間をつぶしていた。
「大木さん、ありがと。
これじゃあ、デート感がないね。ごめんね。」
「気にするな。まあ、綾瀬君がまたデートしたいって言うなら別だけど?」
「え~、みんなに怒られるよ?私もだけど!」
「まあ、今日は大進歩だったよな。」
「うん、ひょんなことから大前進だよ。今日はありがとう。本当に。
改めて大木さんがいてくれたから、わたしは前に進めているんだってわかったよ。
それだけでも今日は十分なのに・・・。ひっくっ・・・。本当の肉親にようやく近づけたかもって思うと涙が止まんないよ・・・。」
そう言って俺に体を預けてくる綾瀬君。
背中をさすってあげながら、泣き止むまでそうしていた・・・。
きっと、見つかるよ。綾瀬君。俺はそう信じたい。
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