女神の贈り物・2
おはようございます。第85話投稿させて頂きます。
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「良かった。間に合った」
馬を途中の町で乗り換えながら休み無く走って貰ったお陰で魔族に攻められる前にルシアの街に着く事が出来た。
「止まれ‼何者だ‼」
急いで馬を町の入り口に着けると緊張した面持ちの若い兵士に呼び止められる。
まぁ、黒コートに仮面の人物が黒い大きな馬に乗って近寄ってきたら警戒もされるか・・・
「魔王軍を名乗る者達から宣戦布告が有ったとフェルシアの冒険者ギルドで聞いて応援に来た者です」
馬を降り、兵士に此処に来た理由を説明する。
「此処まで休み無く走ってくれてありがとう」
馬にお礼を言いながら撫でていると先程の若い兵士が近づいて来て口を開く。
「フードを脱いで仮面を取って名を名乗れ!今、怪しい物を迂闊に街に入れる事は出来ない‼」
「ちょ!ちょっと待ってください‼」
武器を私に向けながら顔を見せる様に促した若い兵士に冒険者ギルドの制服を着たこれまた若い女性と鎧に身を包んだ中年の男性が駆け寄って来る。
「その方は何の問題も無いとの事です。むしろ指示に従うようにとの通達が入りました」
「それは冒険者ギルドの人間に対する指示だろう。騎士団には関係ない」
呼吸を整え一気に必要事項を喋った女性に向かって若い兵士が渋面を作りながら返答すると一緒に来た中年の男性が首を振り、彼の言葉を否定する。
「いや、つい先程、騎士団にも全く同じ指示が来た・・・」
「なっ‼一体どこの誰がそんな滅茶苦茶な指示を出したんですか⁉どうせまた現場を知らない貴族連中の言っている事でしょう‼国の為に死ぬなら本望ですがこんな得体のしれない奴の指示に従って死ぬなんて御免ですよ‼大体、貴族連中の祭り上げている選定勇者だって余計な口出しをするだけで何も役に立たないじゃないですか‼」
若い兵士が憤慨しながら中年の兵士に噛みつく。色々と鬱憤が溜まっているみたいだ。
まぁ、そんな事はどうでも良いから早く話を済ませて貰いたいね。多分、もう時間が無いだろうし
「口を慎め‼ガウル‼これは国王陛下の勅命だ‼」
ガウルと呼ばれた若い兵士を中年の兵士が叱りつける。
わぁ・・・まさかフルニカ王国の王様から連絡が入っているとは思わなかった・・・
「しかし‼隊長‼それだけで信頼しろというのは」
「ほぉ、君は儂の言葉が聞けないかね?時間もあまり無いというのに」
ガウルが隊長と呼んでいた中年の兵士に尚も噛みつこうとすると何処からか静かな声でガウルに問い掛ける声が聞こえて来る。
聞き覚えの有るその声に私は仮面の下で驚いてしまう。
中年の隊長さんはその声を聞き片手で頭を抱えながらポケットから手鏡ぐらいのサイズの魔道具を出す。まぁ、私達にはお馴染み顔が見えるタイプの通信魔道具だ
そこには厳格そうな顔の老人が写っているこの国の国王のディオルド・フィロ・フルニカ陛下だ。結構なお歳だが相変わらず元気な方だ・・・
通信機は同盟を結んだ際に幾つか譲った物を解析して作ったんだろうなぁ・・・
「へ、陛下・・・少しお待ちくださいと申したのですが・・・」
「だーまれい‼ハティファス!いつまでもくっだらん事でごちゃごちゃと揉めおって‼大体、この国を救う手助けをしてくれた者を知らんとはどういう事じゃ‼お前の隊もあの戦いにおったじゃろが‼」
「も、申し訳ございません。陛下」
「口は動かさんでとっとと行動で示さんかい‼それとトワ殿に通信機をわたしてくれ」
トワと聞いて首を傾げる隊長さんに小さく手を上げて自己主張をする。
トワは私の魔王姿の時の呼び方でトワイライトのトワだ。フルニカ王国と同盟を結んだ際に本名を出すわけにもいかないし、黄昏の魔王だと呼びづらいと言われたのでフルニカ王国の王様と考えたんだよね・・・全く我ながら幾つ名前が有るのやら・・・
隊長さんは納得したように頷くと私に通信機を渡してくれる。
「久しぶりですな、トワ殿」
「お久しぶりです。ディオルド陛下。今回はこちらの不祥事で国を騒がせてしまい誠に申し訳ありません」
通信機越しに頭を下げるとディオルド陛下は厳しそうな顔にニカッと笑顔を浮かべるとホッとした口調で喋りだす。
「いやいや、トワ殿のその様子を見て兵を差し向けたのがトワ殿でないと分かってホッとしたわい」
「同盟国に兵を差し向けてどうするんですか?侵略目的なら同盟を結びませんよ」
「それもそうじゃな、して、我らは何をすれば主の邪魔にならない?」
冗談を言っていた顔から一転してまじめな表情になり何をすれば良いかと聞いてくる。
まぁ、援護に来たというのは建前で実際は私が殲滅するために来たことを察して協力してくれるという事だ。
「では、兵士の方々には街の防備の強化と選定勇者の抑え込みをお願いします」
「うむ、心得た。ハティファス!聞いておったじゃろう?戦闘には参加せず今すぐに全兵士を守りに回せ‼それと姿の見えないフレストを街の中から絶対に出すでない‼」
「し、しかし、彼だけに任せるというのは・・・・」
「しかしもカカシも無い‼トワ殿が一人で良いと言っているのだ‼急げ‼時間が無いぞ‼」
「は、はっ‼ガウル‼行くぞ‼」
ハティファス隊長は何か言いたそうなガウルさんに声を掛けると大急ぎで街の中へと戻って行く。
「では、トワ殿よろしく頼む。終わったら経緯を報告に来てもらえるとありがたい」
「わかりました。今回の騒動の原因等が全て解決したらそちらに報告させて頂きます」
「うむ、では、待っているぞ」
ディオルド陛下は満足そうに一つ頷くと通信を切った。
「あの、これをハティファス隊長に返しておいてください」
ハティファス隊長と一緒に走って来たギルドの女性に通信機を渡す。
「あと、この子に水を上げて休ませてあげてください。」
「あ、はい、わかりました・・・」
近くに居た馬を撫でながら些か状況に置いてきぼりを喰らっている女性に手綱を渡し、フィルクス支部長から教えて貰った魔王軍が潜伏していると思われる森と街の間に移動する。
「来たかな・・・」
街から離れて少しするとずしんという地響きと共に森から揃いの鎧を身に纏った魔族がパッと見で1000人程が揃った歩調で近づいている。人数を見るに連隊規模か・・・・
相手の戦力を見ていると不意に彼等の出て来た森の木を薙ぎ倒しながら巨大な何かが姿を現す。
カバと像を足した様なその巨体に私は舌打ち交じりに口を開く。
「ベヒモス」
魔物としてのクラスは《レジェンド》よりの《バリエーション》で人間が狩るにはそれこそ《ダイヤモンド》クラスの冒険者や《エメラルド》クラスの冒険者が複数人も必要だ。
まぁ、あくまで人間の冒険者の基準だけどね。
その姿を見た時点で今回の騒動を起こした国に大体の予想がつく。
恐らくこの騒動を起こしたのは怠惰か強欲の魔王だろう。戦争で調教した魔物を導入するのはこの2国だけだ。
フェルの暁の国は体力的にも戦力的にも他の魔王の軍を遥かに凌ぐ戦力を保持しているし、オウルの白夜の国も戦力的には相当なものだし、魔物を使うのなら迷いなく化学兵器を投入する。他の国も各々理由でまず魔物は使わない。
まぁ、どこの所属かは直接本人達から聞き出せばいいか・・・人間の国を落とすだけだと思って一匹しか連れて来なかった事を後悔させてやる。
そんな事を考えながら私はアイテムボックスから一張の弓と大きな鉄矢の入った矢筒を取り出す。
大きくゴツイ装甲を纏ったこの弓の名前は神冥弓ティアマト、過去に私がダンジョンの『裏』から持ち帰った女神の贈り物の一つだ。
弓をベヒモスに向けて構え、矢を番えながら弓のスキルを発動させるワードを呟く。
「モードデストロイ、ライトニングエレメント」
私の言葉と同時に弓の装甲部分の繋ぎ目が展開し、そこから黄色の光と電気が漏れる。
「《オクタ・ライトニングエンハンスアーマメント》《オクタ・フレイムオーラ》」
弓自体のスキルによる強化に更に魔法で威力を上乗せしてやり自分にも強化魔法を掛ける。
弦を引き、ベヒモスの頭に狙いを定め放つ、弓を撃ったとは思えないほどの閃光と轟音が鳴り響き、矢とは言えないエネルギーの塊が飛んで行く。
少ししてからこちらに向かって歩いていたベヒモスの頭が吹き飛び兵士達が動揺する様子が見える。
さあ、君達の望んだ戦争を始めようか?
戦闘が入ると言いつつ最後にチョコっとだけになってしまいました。
次回は本格的に戦闘になります。ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




