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村娘Aに転生志望した私は魔王になりました・・・  作者: ウィンターベア


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女神の贈り物・1

おはようございます。第84話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

楽しんで頂けたら幸いです。

「お帰りなさいませ、主様」


 ダンジョンから転移してくると目の前に店のお仕着せを着て首にリコリス模ったメタルチャームの付いた武骨な首輪をしている黄緑の髪にエメラルド色の瞳をした16歳ぐらいの少女が綺麗な姿勢でお辞儀をして出迎えてくれる。


「ただいま。ルージェ、いい加減、主様はやめようよ。此処では会頭」

「うふふ、(わたくし)にとって主様は主様ですもの。ご主人様から変えたのですからこれくらいは勘弁してください」

「その首輪も外したら?この国で着けていると私が白い目で見られるし、ルージェは自分の事をもう買い戻しているでしょう?」

「うふふ、買い戻しても私は主様の物であることは変わらないという意思表示です。他の子達も皆同じことを思っているんですよ?」


 ルージェの言葉に私は思わず頭を抱えてしまう。

 ルージェはもともと奴隷だった子で劣悪な環境に在った子達を奴隷商の横面を金貨の入った袋でぶん殴って纏めて引き取った一人で今はもう自分の事を買い戻している。

 よってもう奴隷の証である首輪をしなくて良いのだが彼女達、奴隷上がりの子達は何故か外そうとしない。奴隷時代の産物なんて着けていたくないだろうに全く持って理解できない・・・


「それで主様は何時までお店にいらっしゃるんですか?」


 ルージェは私の言葉をさらりと躱して私の腕に自分の腕を絡めて来る。

 ・・・どうでも良いけどルージェはいつも距離が近くない?


「悪いけど今から冒険者ギルドに行って依頼や情報の収集をして来るから店にはあまりいないと思うよ。私が居なくてもルージェを始めとする優秀なスタッフがお店を回しているわけだしね」


 ルージェの質問に答えると彼女は頬をプクーと膨らませる。


「何を膨れているの?」


 彼女の頬をツンツンと突くと少し拗ねたように口を開く。


「だって、折角ヴァネッサさんやアル君を打ち倒して主様が一番足を運ぶであろうフルニカ王国の支店の責任者になったのに厄災が来るようになってから主様なかなか来て下さらないし、来てくださってもあまり店に居ないじゃないですか拗ねもします」


 拗ねているルージェの頭を撫でながら私は思わず苦笑いをしてしまう。

 てか、支店の責任者を決めると時にヴァネッサ達がボロボロの格好をしていたのは当時の候補者三人で話し合いじゃなくて殴り合ったのね・・・


「色々と苦労を掛けてごめんね。でも、私にもやらなくちゃいけない事が有るの。全部片付いたらまたお店の様子も見に来るよ」

「むぅ・・・主様が大変お忙しい事も承知しております。我儘を言ってしまい申し訳ありませんでした」


 少し、しょんぼりした様子になった彼女に私は笑いながら口を開く。


「謝る事じゃないよ。ヴァネッサやアルは私にそう言う不満を言ってくれないから不満を言ってくれるのはとてもありがたい事なんだよ。全部終わったら全支店の従業員で旅行にでも行こうね」

「はい」


 嬉しそうに笑ったルージェと別れ私は冒険者ギルドに向かう。

 ルージェは私と同い年なのも有って不満をすぐ口にしてくれるからとてもありがたい。



「こんにちは、クルアさん」


 お店を出て冒険者ギルドに行き7年前から何故か私の専属みたいになったクルアさんに声を掛けると彼女は目が飛び出すんじゃないかと思うほどに目を見開き、声を上げる。

 耳も尻尾もピーンと立っている。


「コ、コ、コユキさん⁉無事だったんですか⁉」


 クルアさんの口を押え、シーっというジェスチャーをする。

 私の正体は4ヶ月前の襲撃で全員に明かしているが厄災を討伐後に一部の人間を残して魔法で記憶を消してある。今、この国で私の正体を知っているのは王族や一部の王の腹心、ギルドの支部長であるフィルクス支部長やクルアさん、カルルカに居るニアさん達星読み亭の人達、一部の信頼できる冒険者の皆さんとなっている。

 だから大声で無事とか言われると少し都合が悪いんだよね。


「ごめんなさい。取り乱しました」

「いえ、御心配をおかけしてすみませんでした」


 ハッと我に返ったクルアさんに笑いながら心配させてしまった謝罪をし、本題に入る。


「ところでクルアさん。フィルクス支部長は今居ますか?」

「はい、居ますよ。執務室に行って下さい。後でお茶を持って行きます」


「どうぞ~」


 コンコンと執務室の扉を叩くと疲れたような気の抜けたような声が返って来る。


「失礼します。お久しぶりです。フィルクス支部長」


 声を掛けながら中に入るとフィルクス支部長はホッとしたような顔をする。流石に支部長は私が大丈夫だと思っていたみたいだ。

 その様子を見て私は音が出ない様に扉を閉める。


「お久しぶりです。魔王陛下、御無事で何よりです。どうぞ、座ってください」

「支部長。この格好の時は、私はただのコユキですよ。魔王陛下って呼ぶのは禁止です」


 お互いに笑いながら軽口を叩き、私は執務室に有るソファーに腰掛ける。


「なんか、やけに疲れていますけど何かあったんですか?」


 明らかにいつもより疲れた顔をした支部長に尋ねると支部長は少し困った顔をしながら口を開く。


「いや~、実は厄介な案件が幾つかあってね・・・本当に失礼な事を聞くけどコユキさん。侵略目的でフルニカ王国に魔族を寄越してないよね?」

「同盟を結んでいる国にそんな問題になる様な事すると思いますか?詳しくお願いします」


 支部長の言葉の意味を理解し、私は表情を消して答える。


「つい先日、此処から馬で3日程行った所にあるルシアの街に魔王軍の将軍を名乗る魔族が現れて今日から2日後に攻めると宣戦布告を受けたそうです。コハクさんに連絡を取ろうとも思ったんですが昨日、新聞を読んで未だ逃亡中だと思っていたので・・・あと、それとは別件で厄介事が来ちゃったんで初動が遅れてしまいどうするか考えていたところでコハクさんがコユキさんとして現れたというわけです」


 心底疲れたと言った様子の支部長の話を聞き私は支部長に聞こえない様に小さく舌打ちをする。

 私が居なくなった後でどこの所属かは分からないが魔王軍を名乗る輩が現れたというのならそれは十中八区、転移装置を使っている。あれは転移陣同士で結んだ場所以外に行くための物だから・・・そして転移装置が有るのは黄昏、暁、白夜だけだ。それぞれの国には悪用しない様に私の眼で見て職員を選び定期的に裏切りなどが無いかもチェックしている。これはリコリス商会の子達にもやっている。つまり、いきなり転移陣の無い地域に魔族が現れたという事は職員の誰かが裏切ったのだ。

 話を聞いている限り国際問題物だ。指揮した魔王と裏切った職員には相応の罰を受けて貰う。


「フィルクス支部長、ご報告いただきありがとうございます。恐らくこちらの転移装置を管理している者が汚職に手を出した結果と思われます。取り急ぎ私の方でルシアの町に赴き件の魔族を処分させて頂きます。しいてはその有無をフルニカ王国の国王陛下にご連絡ください。あと、誠に申し訳ないのですが馬をお貸しください。今後このような事が無いように注意いたします。誠に申し訳ございません」


 私はそう言いながら頭を下げ、剣を掴み立ち上がろうとすると支部長が慌てた様子で口を開く。


「あ~、ちょっとコユキちゃんとして動いてもらうのは不都合が有るというかなんというか・・・さっき言った厄介事が関係していて・・・」

「厄介事?」

「実は4ヶ月前の厄災の襲撃から家の国で選定勇者を決めたんだよ・・・でも、よりにもよって女神の贈り物に選ばれた人物が人間的にあれな奴でして・・・名を上げる為にも自分達が依頼を受けるから他の冒険者には依頼を受けさせるなという圧力を掛けて来てね・・・国王に連絡を入れているんだけど、どこかで握りつぶされているみたいで身動きが取れないんだよ・・・」


 支部長の言葉に私は思わずため息を吐く。

 全く・・・この大変な時によりにもよって面倒くさい選定勇者か・・・

 選定勇者とは狗神君達の様に異世界から連れてこられた人ではなくこの世界の人間から召喚勇者の聖武器とは違い女神の贈り物と呼ばれている他の《レジェンド》クラスの武器に選ばれた人間の事だ。

 《レジェンド》クラスの武器は過去にも幾つか見つかっており、その中でも女神の贈り物は聖武器には劣るが他の物に比べると群を抜いて強力な武器だ。

 はっきり言って使えるのなら厄災との戦闘にも大いに役立ってもらえる。

 しかし、女神の贈り物は聖武器と同じ様に人を選ぶため実際に使われた事があまりない。

 それ故に女神の贈り物が選んだ使い手には勇者の称号が与えられる。

 だが、歴代の選定勇者は性格的に難有な人間も多かったらしく今回も例に洩れなかったみたいだ。

 まぁ、問題ないね。彼等に本来、口出しする権利は無いわけだし


「支部長、冒険者に動くなというのなら私には関係ありませんよ。今の私は魔王として魔族の不祥事を処分する為に動くので冒険者ギルドやフルニカ王国は一切関係ありません。まぁ、馬を借りたりはしますけどその辺は、誤魔化しは幾らでも効くでしょう?些か強引かもしれませんが時間が有りませんご協力をお願いします」


 そう言いながら私はアイテムボックスからコートなどの一式の装備を取り出し着ていく。

 支部長は何かを言いたそうにしていたがとりあえず協力してくれるみたいだ。


「それと支部長、他の街のギルドにボクが通る事と馬を用意してくれるように連絡をお願いします。馬を休ませないで全力で駆けて貰い途中の町で乗り換えさせて貰いたいんです。あと、ルシアの街にも連絡をお願いします」

「連絡は分かったけど、馬?転移装置を使うんじゃないのかい?」

「裏切り者が居る以上安易に転移装置を使えません。馬で行った方が到着はギリギリになりますが確実です」


 支部長と話しながら部屋のドアに手を掛けるとお茶を持って来てくれたクルアさんに事情を話し、私は支部長が用意してくれた馬に乗り、至急ルシアの街に向かう事になった。



次回は戦闘が入ります。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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