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白銀の死神

おはようございます。

第128話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。

楽しんで頂けたら幸いです。

☆は視点変更です。デイル→コハクです。

 ☆


「殿下、こちらです。お急ぎください」


 ハイネックが殿下や王妃様に走りながら声を掛けている。現在の私達は学校地下にある隠し通路を駆け抜けている。

 くそ‼殿下や王妃様がもたくさとしていた所為で時間稼ぎに張っていた結界が破壊されてしまったではないか‼

 予定では今頃はこの隠し通路を抜けて奴らを撒いているはずだったのに・・・愚かな王族の所為で・・・

 それにしても地下の隠し通路と言いつつ中は広く道が複数あり複雑に入り組んでいる。これなら後から追って来る愚民共も撒く事が出来るか?

 後ろの王族共もクラシアに亡命するまでは守って利用させて貰おう。流石に王族としての権力を失ったこいつ等をクラシアに亡命してまで面倒を見てやる義理は無い。

 私は父上の確立させた魔導技剣の技術を売り込んで生きていくとしよう。あぁ、後ろの役立たず共に渡されている物も回収しなければいけないな

 少し広い小部屋に出たあたりでぶつぶつと文句を言っている王子と王妃を無視しつつ逃げ道と後ろの愚か者共を何処で切り捨てるかを考えていると不意に正面から声が聞こえて来る。


「悪いけど全員此処で捕まって貰うよ」


 驚き開けた小部屋の中央を見るとそこには一人の女が立っている。

 白い服装に身を包んだ美しいというよりは可愛らしい顔立ちに薄暗い闇の中でも輝いている様に見える銀の髪を持つ女は何処かで見た記憶の有る女だ。


「きぃさぁまぁ・・・・」


 ナウゼリン(使えないカス)はいち早く気が付いたのか憎らしそうに女の顔を睨み剣の柄に手を掛ける。

 この馬鹿が‼今はこんな素性の知れない女より逃げる事の方が優先だろう!


「いいや、彼の反応が正解だよ。デイル・ヴァトラー。どうせ投降する気は無いのでしょう?まぁ、冷静には為るべきだけどね」


 そう言いながら白銀の長剣と薄水色の刀身の長剣を両手に握る女の顔を改めてよく見てその顔にハッとする。


「漸く思い出したみたいだね」


 女・・・8年前に行方をくらました因縁深いコハク・リステナはそう言いながら剣を構えながら口を開く。


「さぁ、剣を抜きなさい。反逆者共、私は貴方達を無傷で捕まえる気は毛頭ない。通りたければ私を倒すしか道は無いよ?」

「貴様‼何者か知らないがこの人数で勝てると思っているのか‼我々を侮辱するな‼」


 コハク(平民の娘)が表情を動かさずに淡々と告げる言葉を聞きハイネック(筋肉馬鹿)が顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。

 対するコハク(平民の娘)は大粒のアメシストの様な瞳に冷たい光を宿しながらハイネック(筋肉馬鹿)に恐ろしく冷たい声音で答える。


「御託は良いから掛かって来なさい。どの道、私を倒さなければ貴方達に道は無いわ?それとも曲がりなりにも副団長の地位に着いたものが怖気づいたの?」

「小娘がぁ‼調子に乗るなぁ‼」


 コハク(平民の娘)の言葉にハイネック(筋肉馬鹿)は抜剣し、突進していく。

 使えない脳筋でも騎士団で副団長をやっている男だ。過去にナウゼリン(使えないカス)がやられたとはいえ所詮は平民の村娘だ。万が一にも負ける事などあり得ないだろう。

 そんな事を考えて結末を見ていると驚く事が起きた。


「グ、グアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼‼‼」


 ガキンっという音と共にハイネック(筋肉馬鹿)の剣の刀身が宙を舞い辺りにハイネック(筋肉馬鹿)の悲鳴が響き渡り我々とハイネック達の間に何かがグチャっと音を立てて落ちる。


「ひっ‼」


 落ちた物体・・・ハイネック(筋肉馬鹿)の右腕を目にしたアルネイト男爵令嬢が小さく悲鳴を上げる


「あぁ、一つだけ言い忘れていたよ。剣を抜き立ち向かうと言うのならそれ相応の覚悟を持って向かって来なさい」


 悲鳴を上げるハイネック(筋肉馬鹿)を無視してコハク(平民の娘)はこちらを静かに見ながらそう告げて来る。

 感情を窺わせない瞳とその声音に不覚にも一歩後ろに後退していると状況が見えていないのかナウゼリン(使えないカス)がとうとう剣を抜き叫びだす。


「平民の娘如きがぁ‼我々を舐めるなぁ‼」


 そう叫びながらコハク(平民の娘)に向かって突っ込んでいくナウゼリン(使えないカス)に続いて他の無能たちも剣を構えて駈け出す。


「さぁ、殺し合おうか?」


 コハク(平民の娘)の言ったその言葉を聞きながら私も仕方がなく馬鹿共に続いて剣を抜き、殿下を守る為に殿下の元へと走った。


 ☆


 暗闇から迫る4つの鈍色の刃を最小限の動きで避け、最後の一撃を入れて来た男に避け際にグリップエンドで蟀谷(こめかみ)を殴り地面に叩きつける。


「ぐぁ‼」

「フラビオ‼くっそぉ‼」


 前にデイルが紹介していた男が倒れた仲間の名前を叫びながら再び私に向かって来る。

 叫びながら振り下ろされた男の剣を自分の剣で受け止めた際に男の剣を間近で見て違和感を覚える。


 ★


 名称: 魔導技剣マカ・マナフ

 刀匠:unknown :ダルデム・ヴァトラー

 スキル: エレメンタルシフト

 特性:魔石の交換により複数の属性の使用が可能

 クラス:レジェンド

 特記:マカ・マナフ本来の姿ではなく。人の手によってその性質は歪められている。


 ★


 眼で他の奴等の持つ武器を確認すると全て同じような表記で私の目に移る。

 こいつ等の使っている武器は女神の贈り物じゃない?

 受け止めていた剣を押し退けてバランスを崩した男の腹に蹴りを入れる。


「うぐぅ‼」


 お腹を押さえて膝立ちになった男の頭に膝蹴りを喰らわせて完全に意識を奪い取ってから息を整えて私はゆっくりと口を開き奴らに問う。


「お前達の使っている武器は純粋な女神の贈り物じゃないな?まさか、女神の贈り物に手を加えたのか?」

「五月蠅い‼だから何だと言うのだ‼貴様如きには関係の無い事だ‼フラアル‼合わせろ!」


 私の質問に答えずナウゼリンは激昂しながら剣に付いているトリガーを2回軽く引くと回転式弾倉に為っている部分が2回回転して止まる。

 回転式弾倉が止まったのを確認すると再びトリガー部分に指を掛けて今度は深く引く。するとガキンと何かが砕ける音がしてナウゼリンの持っている剣の刀身が赤色のオーラを纏い燃え上がる。

 なるほど・・・恐らく、あの弾倉に魔石で作られた何かが装填されていてそれを使って自分の適性以外の魔法を使っているのか・・・


「死ねぇ‼平民がぁ‼」


 敵の武器を観察しているとナウゼリンともう一人が魔法を纏った剣を構え切り掛かって来る。

 あぁ、いい加減この戦闘を終わらせるか・・・最初から殺すつもりは無いけど腕の一本ぐらいは勘弁して貰おう。


「《オクタ・ライトニング・オーラ》」


 襲い掛かって来るナウゼリンともう一人の男の攻撃を避け、すれ違いざまに敵の腕を切り飛ばす。


「グァァァァァァァ‼‼‼‼‼」


 悲鳴を上げて転がり回る男達を無視して私はこそこそと逃げ出そうとしているクライトとデイル達の方に視線を向ける。

 私の視線を受け、クライトは引きつった笑みを浮かべながら口を開く。


「ハ、ハハハ・・・み、見事ではないか平民の娘よ。ど、どうだ?我々に付かないか?」


 この期に及んで寝ぼけた事を言っているクライトを無視し、私は最後の確認をこいつ等にする為に口を開く。


「一つだけ聞かせなさい。反乱を起こした際に何故村を一つ犠牲にしようとした?」

「あぁ、そんな事か。くだらない平民達の命が我々の革命の礎に為るのだ。我々の糧になれる栄誉を与えてやっただけの事だよ」


 私の言葉にどういう神経をしているのか引きつった笑みを浮かべていたクライトは嘲笑の笑みを浮かべながら自慢する様に語りだす。


「そう。もう良いわ。黙れ。《オクタ・アクアバインド》」


 自分でも驚くぐらい冷たい声音でそう言いクライト達に向かって拘束魔法を放つ。


「なっ⁉貴様‼何のつもりだ⁉」

「おめでたい頭だな?クライト。自分の犠牲にしようと思っていた村の出身者ぐらい覚えておけ。お前らがリステナ村を犠牲にしようとした時点で私がお前に付くなんて事は有り得ないんだよ。最後ぐらい潔く捕まって裁きを受けろ」


 唐突に拘束された事に驚き喚き立てるクライトにそう告げ、他の奴等の拘束に移る。

 人の事を人とは思っていない奴らとこれ以上話をするつもりは無い。

 正直、これ以上こいつ等と喋っていたら殺してしまいそうだ。


 —————じゃあ、殺しちゃえば?—————

「ぐっ⁉」


 不意に聞こえた()の声に驚いていると今度は唐突に激しい頭痛が私の事を襲う。

 左手の《オカミノカミ》を落とし、頭を押さえているとナウゼリンが転がっている辺りから声が聞こえる。


「ナウゼリン様、まだ終わりでは有りませんわ」


 頭を抑えつつ声の方を向くといつの間にかナウゼリンの近くに来ていたシレネがナウゼリンの落とした剣に何か禍々しい色合いの弾丸型の結晶を装填するとナウゼリンに握らせる。


「では、私達が逃げるまでよろしくお願いしますね」


 そう言ってトリガーを引くと剣から黒い靄の様な物が染み出し、ナウゼリンの体を覆う。


「グ⁉ぐがぁっぁぁあっぁああっぁぁっぁぁぁ!?!?!??」


 靄に体が包まれたナウゼリンは苦悶の悲鳴を上げ、その体積をどんどん膨らませて行く。


「さぁ、クライト様、ダミア様、デイル様、今のうちに逃げましょう」


 ナウゼリンの変貌に驚いていると再びシレネの声が聞こえて来る。

 クライト達の方を向くとどうやったのかシレネが私の施した拘束を解きクライト達と走り去って行くのが見える。


「なっ⁉待て‼」


 痛む頭を押さえながら追いかけようと立ち上がる。

 しかし、私は致命的なミスを犯してしまっていた。黒い靄に包まれ人の形を失ったナウゼリンはまるで手を伸ばすように黒い靄の一部を私に向かって伸ばす。

 唐突な頭痛や此処までの疲れといった様々な不調が重なり、黒い靄に私は反応する事が出来なかった。

 気が付いた時には目の前に五つの黒い靄が槍上に為って迫っていた。


ここまでの読了ありがとうございます。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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