怨念を宿した黄金
おはようございます。
第129話投稿させて頂きます。
評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。
また、誤字脱字報告もありがとうございます。
☆は視点変更です。コハク→デイルです。
楽しんで頂けたら幸いです。
「しまっ・・・」
頭痛とシレネ達に逃げられた事に気を取られていた所為で迫って来た黒色の槍への対応が遅れてしまい。
気がついた時には槍は無傷で回避するのは不可能な場所まで来てしまっていた。
私の心臓を狙い伸びて来る槍を無理矢理、体を捻りギリギリで狙いを逸らす。
「うぐぅ‼」
心臓を避けた代償に左肺と腹部に刺さった槍の所為で口から血が溢れ出す。
「ガハ、ゲホ、ゴホ」
槍が抜け、口から血を吐きながら床に膝を着く。
まずい・・・息が・・・
アイテムボックスからポーションを取り出そうとするとすぐに第二波の攻撃が迫っている。
「く・・・そ・・・」
ポーションを取り出すのを止めて跳躍して一度、黒靄と距離を取る。
黒靄の攻撃を何とか避け、地面に降りる際に唐突に足元がグラリと揺れバランスを崩し、床に強かに全身を打ち付ける。
私の状態を目ざとく確認すると黒靄は再び黒槍を伸ばしてくる。
その光景を見て急いで起き上がろうとするが血の流し過ぎで足に力が入らない。
迫りくる黒槍を横目で確認しながらなんとか起き上がろうとしていると不意に誰かに抱え上げられ先程までいた場所から離れる。
一体、誰が?そんな事を思っていると私を抱き上げている誰かの少し焦っている様な声が聞こえて来る
「おい‼コハク‼生きてるよな⁉生きてたらなんか反応しろ‼」
私を抱き上げている人物の顔を見て私は息も絶え絶えにその人物の名前を呼ぶ。
「テ・・・ト?」
私が声を出した事でホッとしたような表情になり直ぐに険しい顔になって言葉を返してくる。
「はぁ、生きてたか・・・とりあえず安心したぜ」
そんな話をしている最中にも黒靄から連続して攻撃が飛んで来るがテトは私を抱えたまま危なげなく攻撃を避けながら口を開く。
「色々聞きたい事は有るがとりあえずこれだけ聞く。コハク、どのぐらい休めば回復する?」
「5・・・分、休ま・・・せて」
「わかった。お前が動けるようになるまで俺がアイツを引き付ける」
そう言うとテトは大きく跳躍し黒靄の攻撃が届かない壁際に移動すると私の事を地面に降ろし、腰の鞘から剣を抜き魔法を唱える。
「《ヘキサ・ライトニング・オーラ》」
魔法で身体強化を施したテトは剣を構えて黒靄に向かって走り、黒靄の注意を引き付けてくれる。
テトが気を引いてくれている内に私は自分の治療をする為に動き出す。
「啜れ・・・《クラミツハ》」
テトの動きを見ながら右手に持つ《クラミツハ》を起動させ、血を操作して肺に溜まった血を体から抜き取り一時的に傷口の血を止める。
血が抜けた事により少しだけ呼吸が楽になった所にアイテムボックスからポーションを2本取り出し1本を胸の傷に振りかける。
ビリビリと不快な痛みと共に傷が塞がったのを確認し、《クラミツハ》の能力を解除し残りを口に含み飲み込む。
傷が塞がるまでジッとしていながら黒靄の事を観察する。
★
HP ?/?
名称:厄災の尖兵
ランク:レジェンド
属性:闇
特記:物理無効、第八の厄災の尖兵
★
相手の表記に思わず目を見開いてしまう。
第八の厄災の尖兵?なんでそんな奴がこんな所に?
混乱している頭を何とか働かせて私は現状を打破する方法を考える。
兎に角、私がアイツの相手をしてテトにはクライト達を追って貰った方が良いだろ・・・
約束した5分が経ち、まずは落とした《オカミノカミ》を回収する為に走りだした
☆
アルネイト男爵令嬢のお陰で何とかあの平民から逃げおおせた我々は暗くて狭い道を走り抜ける。もう少しすれば外に続く扉が有りその先でクラシア王国の部隊に回収して貰える手はずに為っている。
「皆様、後もう少しですよ。頑張りましょう」
先頭を走るアルネイト男爵令嬢が此方を振り向きながら私達に声を掛けて来る。
相変わらず気遣いの出来る良い娘だ。隣を走るこのボンクラ王子の婚約者に為ってしまったのが本当に惜しいな。
それにしても先程のアルネイト男爵令嬢は普段とは違った異様な雰囲気を放っていたナウゼリンに使ったあの見覚えの無い漆黒の魔石もどこで手に入れたのか・・・
「デイル様、大丈夫ですか? 何か考え事ですか?」
考え事をしていた私にアルネイト男爵令嬢が此方を見ながら問いかけて来る。
何となく素直に今考えていた事を話してはいけないような気がしてしまい。私は適当な事を言って誤魔化す。
「あぁ、いや、もう少しすればクラシア王国に亡命できるので安心しただけで・・・」
「う~ん♪安心するのは早すぎるんじゃないかな♪」
私がアルネイト男爵令嬢に喋っていると不意に私の言葉を遮りこの場に居ない5人目の声が聞こえて来る。
驚き、前方に視線を戻すとそこには先程まで居なかった美しい金髪の女が立っていた。
「何者だ‼」
抜剣しながら女に問いかけると女は飄々とした様子で自己紹介を始める。
「どうもどうも♪僕の名前はエリス・ケール♪一応、クラシア王国の所属だよ♪」
女の所属国家を聞き少しだけホッとして剣を下げる。
恐らくこの女はクラシア王国の命令で重鎮である我々を迎えに来たのだろう。剣を向けるなど悪い事をしてしまったかもしれない。
クラシア王国に亡命した後に難癖付けられても面倒くさいし此処は素直に謝っておくか・・・
「クラシア王国の者とは知らずにいきなり剣を向けてしまい申し訳ありませんでした。エリス・ケール殿。ひょっとして貴女はクラシア王国からの命で我々を迎えに来て下さったのですか」
とりあえず謝り、エリス・ケールにこの秘密通路に居る理由を問うとエリス・ケールはその美しい顔に笑顔を貼り付けたまま口を開く。
「う~ん♪そうだね~♪国の命令はそんな所だったよ♪」
エリス・ケールの言葉に全員の間に安心したような空気が漂う。
しかし、その空気はエリス・ケールの次の言葉で凍り付く
「でもね~♪君達に生きて居られると色々と面倒だし、僕には別にそんな命令関係ないんだよね~♪僕が用事が有るのはその子の首と君の持つ剣なんだよ♪」
「・・・え?」
その言葉と同時に私の持つアンラ・マンユとアルネイト男爵令嬢を見たかと思うと一瞬、黒い影が目の前を通りアルネイト男爵令嬢の驚いた声が響き渡ったと思ったらゆっくりとその首が地面に落ちる。
「シ、シレネ‼きさまぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
クライト殿下がアルネイト男爵令嬢の無残な姿を見て叫びながら抜剣し、突っ込んでいく。
エリス・ケールはそんなクライト殿下の攻撃を半歩だけ後ろに下がり避け、その首に剣を突き立てる。
「まったく。シレネなんて名前で良くもまぁこんなに慕われたものだねぇ~♪気持ちわる♪」
剣を殿下の首から引き抜きながらエリス・ケールは心底下らないと言った感じでそう呟くと今度は私と王妃様の方を向く。
「さ♪次は君達の番だよ♪」
美しい黄金の瞳に底知れぬ怨念を宿しながらエリス・ケールはゆっくりと私達に近づいて来る。
なぜその様な目を向けられるのか分からないまま恐ろしくも美しいその瞳が私の見た最後の光景だった。
☆
ここまでの読了ありがとうございます。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




