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甘えていいよ

 俺たちは、佐々木さんの案内で彼女の部屋に通された。


「わぁ……」


 神木さんが思わず声を漏らす。

 部屋はシンプルで清潔感がありつつ、ベッド脇の小さな棚にはぬいぐるみやアクセサリー、そして昨日俺たちが買ったペアのアクセサリーも、綺麗に飾られていた。


「座って座って、狭いけど」


 佐々木さんはベッドに腰を下ろし、俺たちにも椅子を勧める。

 春樹は床にあぐらをかき、神木さんは佐々木さんのすぐ隣の椅子に座った。


「体調、大丈夫なの? 本当に無理してない?」


 神木さんは佐々木さんを見つめる瞳に、親身な心配をにじませている。


「うん……ちょっと無理しちゃったかも。ごめんね、心配かけて」


「無理するなよ、佐々木」


 春樹も腕を組んで真剣な表情だ。


「ありがとう。でも……やっぱり、こうしてみんなが来てくれて嬉しいよ」


 佐々木さんの言葉に、俺たちは少しだけ肩の力を抜く。


「……あのさ」


 ふいに、佐々木さんは少し言いづらそうに言葉を続けた。


「こういう時って、友達なら、みんな……どんな風に甘えていいのかなって」


「え?」


 彼女の問いに、一瞬言葉に詰まった。

 普段明るくて頼りがいのある佐々木さんから、そんな弱音が出るなんて思ってなかったから。


「私、たぶん……いつも無理しちゃう癖があるんだよね。でもさ、こうして体調崩して、ちょっとだけ思ったの。もっと、素直にみんなに頼ってもいいのかなって」


 それは、強がり続けた彼女の素直な本音だった。

 春樹も神木さんも、少しだけ驚いたように彼女を見ている。


「……いいに決まってるだろ」


 春樹が口を開いた。


「バカみたいに抱え込むのはやめろっての。俺たち、友達なんだからさ」


「私もだよ」


 神木さんも頷き、優しい表情で佐々木さんの手を取る。


「甘えていいんだよ、もっと頼って? 私は……悠里に笑ってて欲しいし」


「神木ちゃん……」


「俺も」


 俺も言葉を添える。


「佐々木さんが頑張ってるの、ずっと見てきたから。だから、たまには人に頼ってよ。俺も、春樹も、神木さんも、佐々木さんの味方だからさ」


「……うん」


 佐々木さんは小さく頷くと、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。


「ありがと……う」


 こらえきれなかった涙が、頬を伝って落ちていく。

 普段とは違う、少しだけ弱く、でも心からの笑顔だった。


「バカやろう、泣くなって」


 春樹が照れ隠しに顔を背ける。


「まったく、無理してるからだよ」


 神木さんも苦笑いして、ティッシュを差し出した。


 俺たちは、しばらくそのまま佐々木さんを囲んで、いろんな話をした。

 他愛もない話、勉強の話、佐々木さんが密かにハマっている趣味の話。

 笑い声が絶えない、穏やかな時間だった。



---


 次第に日は暮れ、帰り際になった。


「今日は本当にありがとう」


 玄関で、佐々木さんは名残惜しそうに手を振る。


「ゆっくり休めよ」


「無理すんなよ?」


「……うん!」


 最後にもう一度、佐々木さんは笑った。


(……これで良かったんだ)


 俺は胸の奥で安堵する。

 春樹も神木さんも同じ気持ちなのだろう、足取りは軽かった。


 こうして俺たちは、彼女の家を後にした――。


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