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第二十八話 縞々をさがせ-3

「ジーナ!! なんてことするんだ!」


 僕は思わず大声でジーナを怒鳴った。

 考えてみれば、たぶん、ジーナとってはじめてのことだったと思う。

 ジーナはゴロゴロ言うのをやめて、僕をにらみつけた。


 僕はとにかくジーナが破片でケガしないように抱きあげて文字通り隣の部屋に放り込むと、かけらをあつめてマグカップを片付けた。

 そして、手で床を触っても破片がまったくないのを確かめてから、隣の部屋の扉をあけに行った。

 そこからはあっという間だった。

 僕が扉を開けた瞬間、くろい影が飛び出してきて、玄関の壁のボタンに衝突したかと思ったら、開きかけのドアから影がするりと逃げた。


 僕はしばらく呆然と立ち尽くしていた。


「ジーナ!!」


 我に返って、玄関から顔を出したときにはもうそこにはジーナの影も形もなかった。

 背中から冷や汗が噴きだした。

 ジーナがセンターに見つかったらどうしよう!!


 うちの地区は開拓団に近いわりと古いコンパートメントで、新しい地区にあるような生体認識システムなんかは配備されていない。

 けれど、僕たち火星世代はもし迷子の猫を見つけたら、とにかくセンターに連絡するように教え込まれているんだ。

 僕はパニックになりながら、それでもジーナを探しに外に出た。もう時間は夜だったから、街の明かりもうす暗く設定されていた。(地下だから人工灯なんだ)

 僕とジーナが外に出るときは、いつもなら大きなリュックの中にジーナを入れて、第5ポート駅からエルデ駅(地上駅)まで行っていた。

 もしかしたらその道をたどっているかもしれない。

 僕はそう思いながら、足早に第5ポート駅の方へと向かった。とちゅう、すれ違う人たちが何か様子が違わないか見たけれど、誰も変わった様子はなかった。

 火星世代のひとびとらしく、他の人には無関心で、ただあわてている僕をちらっと見ただけでみなすれ違っていった。


 それから、たぶん僕は駅と自分の家を3往復はしたと思う。

 ジーナの名前を呼ぶわけにもいかないから、ただひたすら目を凝らして、ジーナの縞々の姿を探すことに集中した。

 けれどその日、僕はついにジーナを見つけることができなかった。

 そのときの気持ちは……なんといって良いかわからない。

 気持ちだけは焦るのだけれど、なにもできない。もちろん、その日は一睡もできなかった。


 そのとき、はじめて僕はこの世界中に独りぼっちなんだということを感じた。

 なんてことだろう、僕はほんとうに独りぼっちだ!!


 まんじりともせずに朝をむかえて、僕はとにかく遥さんたちのところへ相談に行くことを決めた。

 ジーナが知っている場所と言えば、遥さんのジャンクヤードか、地上駅ぐらいだ。

 通信はセンターがチェックしている可能性もあるから、酒場でじかに遥さんたちを見つけるしかない。


女子猫はきっちり復讐し、男子猫はふてくされる

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