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勇者の仲間ですが魔王の協力者です  作者: rocyan
第二章 見習い勇者の旅
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竜石



「嫌よ」


 だと思った。

 あの後一旦解散となりロッカの処分が決まってからもう一度集まるという事で帰ってきたシアン、カクタス、英二の三人は、既に宿にいたドラジェにこれまでの経緯と事情を説明し、体内の魔力を吸うか拡散する魔法道具を作って欲しいとお願いをしたところである。結果は先の言葉通りだ。


「どうしてもかい?」

「どうしてもよ」


 パーティのリーダーであるカクタスが苦笑しながらそう訊くと彼女はふいっとそっぽを向いて断る。その眉は顰められていた。


「何故私が顔も知らない一市民を助ける為に貴重な時間を潰してまで作らなきゃいけないの。お断り」


 性格からして受けてもらえるとは思っていなかった面々はそこまで落胆していない。寧ろ清々しいほどの断りっぷりにシアンの額には青筋が浮かんでいた。隣にいた英二がそっとシアンから離れる。


「そこをなんとか、頼むよドラジェ」

「しつこいわね。例えリーダーや勇者様の頼みとしても嫌」


 寛ぎスペースにあるソファに座った彼女ははぁと息を吐いて、嫌味ったらしい笑みを貼り付ける。その視線の先にはシアンがおり、彼を馬鹿にする様な声音でドラジェは口を開いた。


「そもそもその不治の病の由来を知っておきながら、私に頼むだなんて見た目と違って頭が悪かったのねぇ……魔法使いさん?」


 にやにやと嗤う彼女にシアンはひくりと頬を引き攣った。一つの可能性としては考えてはいたが、専門家である彼女からそう告げられると反論の余地もない。

 いや、頭が悪いなどとの風評被害はシアンとて拭っておきたいけれど。


「解決策が耀竜の幼子しかないと思われてるのは必ずしもその体質じゃなく、魔法道具を作る際にも必要ということか」

「そうよ。体内の魔力を吸収ないし拡散する魔法道具には必ずしも耀竜の幼子の皮が使われているわ。今じゃ唯一神教のおかげで作る人なんていないけれど」


 ほんと面倒ね、宗教って。

 そう呟いた彼女はどうやら唯一神教には入信していないらしい。三大大国である、プラム王国、カーマイン皇国、カメリア帝国には唯一神教が浸透している。平民達はそうとも限らない者達がいるが、国の上層部や富裕層が総じて唯一神教者なので目を付けられたくない平民達も入信はしていたりするのだが、明らかな富裕層、つまりは貴族であるドラジェが唯一神教に入信していないのは些か意外ではあった。


「意外だね、ドラジェは入信者だと思ってたけれど」

「形だけは入信してるわね。けど、天使達に任せて自分は何もしない神様に祈る時間があるくらいなら、魔法道具を作っていた方が良いとは思っているわよ」

「……(何もしない神様ね)」


 言われているぞ、唯一神。


「でも、それなら困ったな。結局のところ打つ手なしと言えるね」


 ドラジェの返答の理由を聞いたカクタスはその長い耳の裏を人差し指で掻きながら苦笑いを零した。

 カクタスの言う通り魔法道具にまで耀竜の幼子を材料に必要となると、ロッカの友人の母親を助ける事が出来なくなってしまう。強行突破しようにも三大大国に根付く宗教を敵に回すのは平穏な生活を得られないし、そもそも彼らは勇者である為に属している国達には逆らえない。神聖な生き物を殺したイコール魔王の手先だったなんで言われて仕舞えば、この穏やかな旅もすぐさま強制終了だ。

 何とかできないものか、と思案するカクタスだが俄然良い案が見つかるわけもなく、はぁとため息を吐いた。

 そんな彼を見ながらシアンはちらりとドラジェを見る。瞬間ドラジェと目が合った。ずっと視線を感じてたとはいえ、目を合わせない様にしていたと言うのにこの女は挑発をやめないらしい。今度はシアンがため息を吐いた。


「耀竜が駄目なら他の手を打てば良い」


 コツリ、とシアンの背丈程もある魔杖を床に打ち付けた。とんがり帽子のつばを持ち、ニッと笑ってやる。


「初、クエストと行こうか」















「初クエストとは思えない程の難易度なんだけどぉおおお!?!?!?」


 わぁああああ!! と叫びながら荒野を駆けずり回る英二をシアンはただ見ていた。そんな彼の横にはカクタス。ドラジェは相変わらずの留守番だ。自分に利ない事はやらない主義である彼女がこのクエストに参加するわけもなかった。

 耀竜の問題で後回しにしていた英二の冒険者解禁試験。これをクリアすれば晴れて、一人でクエストを受ける事を許可される。今までコツコツとカクタスと共に受けていたクエストを始め、最後には一冒険者として必要最低限のことを身につけた英二の実力を図る為のクエストを持って終了だ。

 そのクエスト内容は“竜石の採取”。竜石とは竜が吐いた灼熱のブレスによって熱された石の事。自然界にはあまり無い温度に寄って熱を与えられた石は徐々に変形し、やがて一つの宝石となる。それが竜石。

 竜は一つの場所に延々と炎を吐く習性がある。幼い頃から繰り返すブレスの練習台が各竜にはあるのか、必ず同じ場所にしか吐かない。ただそれが何故宝石になるかどうかと言われれば首を傾げるを得ないのだが、その竜石特有の美しさが富裕層の人間には人気だ。


「だが竜石には美しさだけじゃ無い。延々と魔力の篭ったブレスを浴びせられた石は、自然と内側に篭った魔力を外に放出する性質がある。つまりだ」


 竜石には耀竜の幼子の皮膚と同じ作用が期待できる。

 ふんす、と鼻から空気を出しながら説明を終えたシアンはまだ逃げ回っている英二に視線を向けた。説明は終えたし、そろそろその悲鳴が五月蝿いので逃げるのをやめてほしいのだが、そんなシアンの考えもつゆ知らず英二は無理!!! と叫んだ。


「無理が過ぎる!! 難易度高すぎ! 高難易度クエストを初心者が受けるとか馬鹿じゃ無いのか!!!」

「勇者君は実力で言うと中級冒険者クラスだよ」

「そんな言葉を求めてるわけじゃ無いんですよ!!師匠!!!」


 助けてくださいよ!! と喚く彼の後ろには、真っ赤な赤いワイバーンが咆哮を上げながら飛んでいた。時折ブレスを吐いては英二を追い詰める。


「というか何で俺にだけ襲ってくるんですか!?可笑しくないか!?!?」

「あぁそれは、オレが魔法でお前だけワイバーンの目に映る様にしたからな」

「補助魔法便利すぎか!!!」


 今飛んでいるワイバーンの瞳には英二しか映っていない。干渉魔法で相手の脳へと干渉、視覚からの情報を少し変えた。英二以外の人を認識できない様にしたのだ。そんなわけでワイバーンは自身の縄張りに入った英二を延々と追い続けるだろう。それはきっと縄張りの外に出てもそれは変わらない。ワイバーンから英二を殺してやると息巻いているのが伝わってくるからだ。


「さっさと倒すなり何とかしろ。実力的には合ってるんだ」

「そうだよ勇者君。ずっと逃げてばかりじゃ余計に体力消耗するからね」


 大きな汗を流しながら逃げる英二にシアン達はそう声をかける。アドバイスとも言える忠告に英二は心の中でわかってる! と叫んだ。彼はわかっているのだ、実力的にも合ってる事もこのままでは体力だけ消耗してしまうことも。けど理解と納得は別というもので。

 振り返れば鋭い目付きをしたワイバーンが此方を殺そうと鼻息を荒くしている。いくら特訓したって、いくらクエストを受けたって、自身よりとても大きい魔物相手には現代日本をのほほんと生きてきた英二にとっては難易度が高すぎた。つまりとても怖い。

 そんな彼の心情をわかっているのか、シアンはため息を吐いて埒があかないと呟いた。それを耳聡く拾った英二は助けてくれるのかと期待したが、次の言葉に絶望する。


「倒さないのならそのまま逃げとけ。オレは竜石を取りに行くから」

「え」


 行こうぜ、カクタス。

 隣で同じく英二を見ていたカクタスはシアンの言葉の意味を考えてから頷いた。こんな提案をしたのはここにずっといては助けを期待して倒さないと思ったからだろう。確かにそうだと納得したカクタスは、英二にごめんねと謝ってからシアンに着いて行った。


「えっ」


 小さくなって行く二人の背中。普段は頼もしい背中が、希望を引き連れて去って行く。

 逃げ惑いながら呆然とその背中を見ていた英二は数秒かけてシアンの発した言葉を理解し、ぐっとお腹に力を入れてめいいっぱい叫んだ。


「鬼かぁあああああああァアアアアア!!!!!!」


 残念、人間とエルフだ。



時間が開くとキャラがちょっとわからなくなるなぁ。

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