第38話 須佐之男命と八岐大蛇
大国主命からさかのぼること6代前、彼の先祖は「須佐之男命」という神だった。
天上界で大暴れした須佐之男は、天上界を追放されてしまった。
途方に暮れた須佐之男が降り立った地が出雲である。
出雲で最初に目に入ったのは、翁と嫗、それから若き美しい娘が、肩寄せ合って泣き崩れる姿であった。
「これっ、お前たち。なぜ泣いている?」
翁の名前は「アシナヅチ」、嫗の名前は「テナヅチ」、そして娘の名前は「クシナダヒメ」と名のった。
アシナヅチの話によれば、毎年山よりも大きな体に八つの頭、八つの尾を持つ大蛇「八岐大蛇」が現れ、若い娘を生贄として差し出させ、食ってしまうという忌まわしい出来事が繰り返されているとのことだ。
元々アシナヅチには八人の娘がおり、毎年ひとりずつ生贄に差し出し、とうとうクシナダヒメ一人になってしまった。
そろそろ八岐大蛇が現れる時期が来たので、こうして3人で泣いていると話した。
話を聞き終えた須佐之男は、クシナダヒメをじっと見つめ、
「わしは、神々が住む天上界から来た須佐之男じゃ。その八岐大蛇とやらをわしが退治してやる。だが、条件がある。クシナダヒメをわしにくれ」
3人は顔を見合わせ、言葉が出なかった。
しばらく沈黙が続いたのち、クシナダヒメは、
「分かりました。わたくしは喜んで須佐之男さまの下に嫁ぎます」
早速、須佐之男は大きな瓶を八つ用意させ、強い酒をなみなみと注ぎ八岐大蛇を待った。
八岐大蛇は3日後に現れた。
山より大きいと聞いていたがとんでもない。
八つの谷と八つの丘にまたがるほど巨大で、目はホオズキのように真っ赤。
しかも身体じゅうにヒノキやスギが生え、カヅラが生い茂り、腹のあたりは血がにんじでいた。
さすがの須佐之男も一瞬ひるんだが気を取り直して、酒が入っている瓶まで誘導した。
八岐大蛇は娘がいないことに怒り、口から炎を吐いて須佐之男を威嚇したが、須佐之男の後ろに酒のにおいがする瓶を見定め、思い切り首を突っ込み、酒を飲み始めた。
しばし時は流れ、八岐大蛇は酔いつぶれて寝てしまった。
この時を待っていた須佐之男だったが、あまりにあっけなく罠にかかった八岐大蛇にあわれさを感じた。
須佐之男は持っていた十挙剣で八岐大蛇の首を切り落とし、続いて尾を次々に切り落とした。
だが、最後の尻尾を切り落とそうとしたとき「カチン」と大きな音がして十挙剣が刃こぼれしてしまった。
須佐之男は切れた肉を素手でこじ開け、中を見ると眩いばかりの光り輝く剣があった。
須佐之男はこの剣を「天叢雲剣(草薙剣)」と名付け家宝とした。
めでたくクシナダヒメと所帯を持った須佐之男だったが、ひとりの娘で満足する男ではなかった。
クシナダヒメの懐妊を知ると隣村まで出向き、その土地の豪族の娘とちぎりを交わし、さらに次の村と…… そんなわけで出雲一帯に須佐之男の異母兄弟が続出した。




