第37話 大国主命
徐福は、最初に出雲に向かった。
直接向かえば、混乱は避けられぬゆえ、隠岐に一年とどまり出雲へ数回、使者を送ってのことだった。
出雲の統治者は大国主命と名のった。
恰幅は良いが、背が小さい。
もしかしたら私の半分くらいかもしれない。
そんな大国主の館は巨大だった。
いや、巨大に見えたのかもしれない。
一軒だけ、杉やヒノキをふんだんに使った木造建築の館だが、周りは竪穴住居だらけで、ひときわ館が目立ったのかもしれない。
大国主は上座に座り、徐福一行を座るように促した。
とは言っても大国主の前に座ったのは、徐福を含めて10人だった。
館の外に兵百人、残りは隠岐に留め、大国主との交渉後に呼び寄せるつもりだった。
徐福は、絹の反物30反、鉄の剣10本を大国主へ差し出した。
「我が秦国から持ってまいりました、絹と言う布地です。蚕と言う虫が吐く糸で織ったものです。もう一つは鉄と言う金属で作った剣です。お手持ちの青銅製に比べ、優れた殺傷能力を持ちます」
大国主は駆け寄って、絹の反物を手に取り、何度もほおずりした。
次に剣を取り、上段に構えたと思ったら、次の瞬間、柱に向かって振り下ろした。
これにはさすがの徐福も驚いた。
「徐福殿。そなたは神か? こんな柔らかくスベスベした布地など見たこともない。それにこの剣はなんだ? 柱を切っても刃こぼれひとつしない。このような物をわしにくれるという目的はなんだ?」
「大国主殿。気に入っていただいて何よりです。我々の目的は二つあります。一つは、蓬莱山に住む仙人に会って不老不死の妙薬を頂戴すること。もう一つ、これが主題でありますが、倭国において国づくりに協力することです。そのため五穀の種と農業の技術者。鉄の精錬と剣や農具を作る技術者。それに優秀な童と合わせ千人ほど連れてきております。兵を二千ほど連れて参りましたが、我々に危害をくわえないと分かれば、秦国へ戻す手はずになっております」
「徐福殿。話は分かった。もとより徐福殿の一行に危害をくわえることはいたさぬ。逆にあなた方一行をわしが守る。是非とも国づくりに協力してくだされ。国づくりが落ち着いたら蓬莱山へ行けばよいではないか」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
「徐福殿。あなたはきっと神なのだろう。実を言うとわしも神なのじゃ」
大国主命は、ゆっくりとした口調で話し始めた。




