第35話 始皇帝の誕生
その後王賁と李信は、勢いで韓と魏を滅ぼし、残るは楚と斉の2国となったが、斉は秦と不可侵の盟約を結んでいたため、楚を滅ぼせば中華を統一できる。
秦王政は将軍を集め、
「楚を滅ぼす。兵は如何ほど必要だ?」
「20万もあれば」
李信が答えた。
「20万? それだけで良いのか、王翦はどうじゃ?」
「60万は必要かと」
「王翦。もうろくしたなぁ。信、楚を滅ぼせ」
李信は破竹の勢いで楚の首都、郢まで攻め寄せた。
郢の町に入った李信は、誰も攻めてこない状況を不審に思いながら宮殿近くまで来たとき、前後に挟み撃ちの状態になっていることに気づいた。
まずい! と思った李信は、5万の兵を失いながら、秦へ逃げた。
そこに30万の、項燕が追撃してきた。
この項燕の孫が、やがて秦を滅ぼす項羽である。
秦王政は、王翦に命じて60万の兵を預けた。
王翦は楚の国境付近に砦を築き、毎晩宴会を開いた。
対峙した30万の兵を率いる項燕は苛立った。
ひと月が過ぎたころ、項燕は秦軍が攻める意思がないと判断し、5万の兵を残し、郢の宮殿まで戻ることにした。
やがて、隊列は10里(4キロメートル)まで伸びた。
王翦は兵に水を飲ませ、ひたすら酔った演技をさせ、このときを待っていた。
王翦は全軍に命じて、伸びきった隊列の横から敵を攻撃した。
半日である。たった半日で楚軍を壊滅状態にした。
秦王政は、とうとう中華を統一した。
そして、自らを始皇帝と名のり、李斯に命じて秦の制度を全国に広げた。
さらに郡県制を整え戦いのない世を作り上げた。
何もかも順調な秦王政だったが、一つだけ気がかりなことがあった。
それは、レビ一族が安心して定住できるエデンの園がないことだ。
中華を統一し、秦という国家を興したが、この国家の国民の九割九分が争いを好む中華の民だ。
我が秦国も、いつ滅ぼされないとも限らない。
そんな折、レビ一族の方士(不老長寿や神仙を目指し、瞑想、占い、気功、錬丹術などの「方術」を修めた者)、徐福が面白き情報を持ってきた。




