表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/100

最終話 平安京(エルサレム)

(こう)(じん)天皇が即位したと言っても、御年61歳、悪い表現だがいつ死んでもおかしくない。

だが光仁天皇には新笠(にいがさ)との間に33歳になる山部(やまべ)(おう)がいる。

後事を託すのに十分な人物だ。

山部王の母、新笠は山部皇子と呼ばれた幼少のころより、母の主筋である秦氏の数千年に渡る放浪の歴史を語り聞かせた。

そして、秦一族の最終目的、エデンの園「エル・シャローム」に安住することを叶えてやりたいと思った。

エル・シャロームとはヘブライ語で「エル」は「都または京」、「シャローム」は「平安」を意味する。

つまりエル・シャロームとは「平安京」を意味するものだ。

このエル・シャローム、日本人に発音させると「エルサレム」になる。

光仁天皇は、高齢であるにもかかわらず11年間も在位した。

皇太子、山部王に譲位したのは、崩御する前年、既に72歳になっていた。

新たに即位した山部王改め(かん)()天皇も既に44歳になっている。

桓武天皇は、幼少の頃より祖母の関係で土師(はじ)()や秦氏と親せきのように付き合っていた。

それゆえ、かなり薄い血であっても、自分はレビ一族であるとの認識を持っていた。

母や秦氏から聞いた話で、レビ一族は、千5百年前(紀元前8世紀)アッシリアという国から追われ安住の地を求めて、この日本までやってきた。

その道は険しく過酷だったと聞いた。

ほぼ、日本に定住したレビ族の代表、秦一族の願いは、秦一族のエルサレム(平安京)を建設することだと、熱く語っていた。

皇太子になった山部王(桓武天皇)は、仏教勢力が、朝廷をも脅かし始めた平城京に、大いなる危機感を感じていた。

それゆえ秦氏の願いが気になった。

そんなおり、(はた)(かわ)(かつ)の末裔が現れ、

「山部王様、立太子おめでとうございます。山部王が皇太子になられてこれほど嬉しいことはございません。ですが、ここ(平城京)は危のうございます。仏教僧がはばをきかし、何よりも天武(てんむ)天皇からつながる皇族が転覆を狙っています。これはご提案ですが、都を遷都しては如何でしょう。我々の住む、(うず)(まさ)を中心にした山城(やましろ)(こく)は、我々が丹精込めて整備いたしました。山部王様がお望みなら、我々秦一族の土地を、山部王様へ寄贈致します。もちろん平城京を超える都も作ります」

山部王は、数か月悩みぬいた。

秦一族の狙いは分かっていた。

悲願であるエルサレムの建設をしたいのだろう。

されど、秦一族がその後、天皇家にとって代わるのではないかと心配になった。

そこで、秦氏を良く知っている母の高野新笠に相談した。

「皇子、何も心配はいりませんよ。秦一族の祖先レビ一族がイスラエルを追われたとき『安住先の統治者をけっして滅ぼしてはいけない。陰で支えよ』という掟を決めました。この掟を守ってなかったら、数百年前に、この国は秦一族が支配していることでしょう。そのことをよくお考えなさい」

翌日、山部王は山城への遷都を決め、秘密裏に準備を進めよと秦氏に伝えた。

秦一族は大いに喜んだ。山城国は元々「()(しん)相応(そうおう)」の土地だった。

正確に言うならば秦一族がそのように整備した。

四神相応とは、東に「(せい)(りゅう)」、南に「朱雀(すざく)」、西に「(びゃっ)()」、そして北に「(げん)()」に囲まれた地形は強固で安定するとの(いにしえ)からの言い伝えだ。

青龍は川を意味し「鴨川(かもがわ)」があり、朱雀は池で「()(ぐら)(いけ)」を掘った。

白虎は街道で「山陽道と山陰道」を作った。

玄武は少し低いが「(ふな)岡山(おかやま)」がある。

仏教勢力から逃れ、新たな天皇家の出発(たびだち)にこれほどふさわしい場所はない。

秦一族は、4百年前(4世紀)に全国に散ったレビ一族を招集した。

やがて、桓武天皇が即位するころには、4千人のレビ族が集結していた。

そして、桓武天皇が即位して12年(西暦794年)、12里(5キロ)四方の都が、完成した。

桓武天皇をはじめとして、藤原氏などの貴族、土師氏そして秦氏など船岡山に登り、眼下に広がる都を見つめた。桓武天皇は、

「皆の者、この眼下に光り輝く都を見よ。この都は千年続く平安の都ぞ。朕はこの都を『平安京』と名付ける。そしてこの都を作った秦一族よ、お前たちの千5百年の悲願である『エルサレム』の完成だ」

数百人にのぼる秦一族は、南から照らされる日の光を浴びながら、思い切り泣いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ