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失われた断片 ― 風の環 ―  作者: 半々月光
ビグトラス島編
29/62

第24話―謎の顕現ーールキの秘密

>符文の光が震え、研究室に広がる青白い輝き。

教授の言葉に促され、ルキは静かに決意を固めます。


その瞬間、仲間たちの前に「隠されてきた真実」が少しずつ姿を現し始める――。

そして、空間に突然浮かび上がった光の幕。

それは幻なのか、記憶なのか、それともまったく別の力なのか。


この第17話は、仲間の絆と謎の顕現が交差する重要な場面です。




時間:3670シヴン年 12 月 25 日 AM 05 : 55

場所:????・秘密研究室


符文の光が震え、青白い輝きが空間に広がり、その驚きの言葉に応じるように揺らめいた。


キリム教授は背筋をわずかに伸ばし、両手を背に組み、落ち着いた眼差しをルキへと注いだ。

彼は軽く首を傾け、彼女がすでに覚悟を決めていることを確かめるように、低く響く声で告げた。


「ルキ、君の知っていることを彼らに話してくれ。」


ルキはそっと瞼を伏せ、銀の髪が肩へと滑り落ちる。

深く息を吸い込み、胸の奥の決意を言葉へと凝縮するように、静かに頷いた。


その声は穏やかで柔らかいが、揺るぎない確信を帯びていた。


「そうであるなら……もう隠さない。私の本当の姿を見せよう。」


「本当の君……?」


俺は眉をひそめ、戸惑いながらルキを見つめた。言葉を言い終える前に、彼女は静かに手を上げた。指先はわずかに震えていたが、迷いは一切なかった。


常に身につけていた腕輪が光の中で煌めく。彼女はそれをゆっくりと外した。急ぐことなく、まるでこの瞬間に言葉では尽くせぬ重みを託すかのように。



俺とミドは思わず顔を見合わせ、心の中は同じように真っ白になり、この動作の意味をまったく理解できなかった。


腕輪が彼女の手首から離れた瞬間、空気がわずかに震えた。

ルキの銀の長髪が光の中で煌めき、その頭頂に異変が走る――髪の間から微かなざわめきが伝わり、何かが蠢き、姿を現そうともがいているかのようだった。


「ザッ……ザッ……」


震え。



突然、髪の間から耳が姿を現した。形は細長く鋭く、淡い毛に覆われている。


「そ、そ、それは……耳……?」


俺は驚いて、その自然に動く耳を指差し、顔が青ざめた。


ミドはまるで宝物を見つけたかのように目を見開き、思わず叫んだ。


「ネコ耳!?」


だがその瞳には好奇の光が宿り、俺の眉間に刻まれた困惑と鮮やかな対比を見せていた。



キリム教授は静かにルキを見つめていた。深い眼差しは冷静で、まるで必然の真実を明かす時を待っているかのようだった。

彼は口を挟まず、ただ身をわずかに傾け、この場に立ち会っていた。


ルキは淡々とした表情を浮かべながらも、どこか自嘲めいた笑みを帯びていた。


「ミド……イラン、私は人間族ではない。自然の守護者――妖精の一族だ。」


「なっ……!!!」


「これはただの仮装の冗談か、ルキ!?」


俺は目を見開き、声は震え、心臓が激しく高鳴った。眉間に皺が寄り、頭の中は混乱に覆われ、目の前の光景をいつものルキと重ねることができなかった。


ミドは全身を硬直させ、口元をわずかに開いた。笑いそうで笑えず、呼吸は荒く、指先は無意識に服を握りしめていた。


驚きの中、その瞳には隠しきれない興奮が宿り、まるで伝説の光景を目にしたようだった。



俺は昔、ルキに聞いたことがある。どうしてその腕輪をいつも外さないのか、と。

彼女はただ平然と「大事なものだから」と答え、眠るときでさえ外そうとはしなかった。

その時の俺は、彼女が物に少し特別なこだわりを持つ人だと思っただけで、何か思い出を託しているのだろうと考えていた。


だが今――腕輪が外された瞬間、あのネコ耳が現れた。

これはただの飾りじゃない。魔法の隠し道具なのか。隠していたのは外見だけじゃなく、彼女の正体そのものだった。


胸に鋭い痛みが走る。なぜルキは一度も話してくれなかったのか。なぜ俺に隠していたのか。


彼女はずっと恐れていたのか――異質な存在として見られ、拒まれ、嫌われることを。

あんなに優しく笑っていたのに、その裏でひとり恐怖を抱え続けていたのか。



俺の脳裏に過去の記憶の断片がよぎったーー


彼女が教室で静かに講義を聞いていた姿。研究室で黙って手を貸してくれた姿。夜の長い実験を一緒に耐え抜いた姿……。あの時の彼女も、心の奥で怯えていたのだろうか。真実が明かされた瞬間、俺たちが離れていくのではないかと。


その思いが胸を締めつけ、呼吸さえ重くなる。


「俺……俺は……」


言葉は喉までせり上がりながらも塞がれたように途切れる。問いも感情も心の中で渦を巻くのに、どうしても言葉にならない。喉は強張り、心臓は激しく跳ね、残るのは断ち切られた声だけだった。



「ルキ、『ようせい』って……何なんだ?」


ミドは唾を飲み込み、震える声を必死に抑え込んだ。口元に笑みを浮かべようとしたが、好奇心と不安に押し潰されて消えていった。その問いは、混乱した感情の渦から俺たちを引き戻し、掴める支点を与えてくれるようだった。


確かに……俺も『ようせ』が何なのか知らない。その言葉は頭の中で空白のまま、見知らぬものとして広がっていた。


だが、ミドの問いかけは胸の圧迫を少しだけ解きほぐしてくれた。少なくとも誰かが代わりに口にしてくれたのだ。自然と視線が柔らかくなり、わずかな呼吸の隙間を掴んだような気がした。



俺はルキを見つめた。視線には困惑と、理解を求める期待が入り混じっていた。


突然の問いにルキは一瞬驚いたようだったが、やがて静かに俺たちを見返す。その瞳には逃げも隠れもなく、淡い決意が今も宿っている。口元にわずかな笑みを浮かべ、俺たちの衝撃を和らげようとしているように見えた。


「妖精……それは自然の守護者。人族とは違い、私たちの命は大地や森、星々の息吹と深く結びついている。息をするたびに草木のささやきや泉の脈動を感じ取れる。それが私たちの在り方なの。」


彼女の声は穏やかだった。けれど、その響きには今も微かな震えが残っている。言葉を紡ぎながらも、心の奥底には不安がまだ息づいているように思えた。


俺は耳を澄ましながら、脳裏に過去の記憶の断片が浮かんだーー


夜空を見上げる彼女のまなざし。魔法素材の分解授業で植物の標本をじっと見つめる眼差し……。それらは偶然ではなく、彼女の本質そのものだったのだ。


ミドは思わず一歩踏み出し、瞳を好奇と興奮で輝かせた。


「じゃあ……自然の声が聞こえるの?それと話せるの?」


ルキは静かにうなずいた。銀色の髪がその動きに合わせて柔らかく揺れた。



俺はできるだけ自分を落ち着かせようとした。ルキが話してくれた言葉に耳を傾けるうちに、心は次第に静まっていく。

困惑と衝撃に満ちていた感情は、少しずつ別のものへと変わっていった――理解と受容へ。


彼女が隠していたのは偽りではなく、紛れもない真実だった。


「じゃあ……どこから来たの?ずっとここで暮らしてきたの?」


ミドの呼吸はまだ荒く、頭をかきながら視線をルキに釘付けにしていた。


ルキはしばし沈黙し、指先で外された腕輪を弄ってる。その眼差しは符紋の光流へと向けられ、冷ややかな蒼のエネルギーが彼女の凝視に応えるように微かに震えていた。



「違う。」


「私はこの世界の住人じゃない。本当の故郷は、r-rmura――『リリマラ』と呼ばれる空間。そこは妖精族の聖域であり、自然の始まりの源泉でもある。」


「rrmura……」


「リリマラ?」


思わず口にしたその響きは、疑念に満ちていた。だが同時に、どこか神秘的な響きを帯びていて、まるで古い伝承から抜け出した言葉のようだった。


ミドは神話に出会ったかのような顔で目を見開き、呼吸をさらに荒げていた。まるで伝説が現実になった瞬間を目撃したかのように。



「……どうしたの。」


「この揺れ……」


その名前が呼ばれた瞬間、符紋の光が強く瞬き、研究室全体が見えない力に軽く揺れた。


ルキの顔は固まり、思わず半歩下がった。視線は俺の胸元と机の木箱を行き来し、声が震えていた。


「イラン!胸元が……!」


「えっ!」



「何が……起きてるの?」


俺は胸元の〈無知の眼〉に目を落とした。青金色のエネルギー球が脈打ち、光が菱形の模様に沿って流れていく。


机の上の木箱も震え、表面の紋様が浮かび上がり、冷たい青の光が滲み出した。二つの光は空中で交差し、やがてぼんやりとした光の幕を広げていった。



「なにっ……!」


キリム教授は思わず声を上げた。静まり返った研究室に、その声が鋭く響く。視線は光の幕に釘付けで、眉間に皺を寄せたまま固まっている。ありえないものを見た、という顔だ。


光の幕は空気の中で揺れ、風に波立つ水面みたいに震えた。エネルギーの共鳴に合わせて、ぼやけた影が浮かぶ。輪郭ははっきりせず、残像みたいにちらつく。人影にも見えるし、符紋にも見える。正体は掴めない。


ミドは息を呑み、震える声を漏らした。


「それ……映像?何を映してるの……?」


胸の奥の震えはさらに強くなる。これは偶然の幻じゃない――古い力の言葉だ。そう直感した。



「教授、これは……?」


ルキは思わず問いかけ、声には震えが混じっていた。


『:-0•∴•∵•∆πΞΦδ∶∵∴』


引き延ばされ、途中で途切れた声が光の幕から溢れ出す。まるで切れ切れの言葉のようで、繋がらない響きだった。


「……この言語は藍亞ランヤに似ている。しかし決定的に違う。今は解読できない。」


教授は長く眉をひそめ、光をじっと見つめたまま、ようやく見解を口にした。


「つまり……影しか見られない、ということか?」


ミドは光の幕をじっと見つめ、喉が乾いていくのを感じていた。



俺は口を挟まず、心の中で映像の一部を順に記していった。規則を見つけようとしていた。


金色の残影が光の幕の中央にゆっくり集まり、輪郭は明滅し、水面に屈折した影のように揺れていた。視界には時折、目のような光の粒が閃き、翼の影が掠めるようにも見えたが、形は重なり、ねじれ続け、真の姿を定めることはできない。動きは何か巨大なものを積み上げているようで、次の瞬間にはただ光と影の錯覚にしか見えなかった。


光の幕が再び波打つ。人影に近い輪郭が群れとなって浮かび上がり、縁は絶えず流れ、体は液体みたいに揺らめいていた。その周囲には淡い青の光環が漂っていた。明瞭さは瞬きの間に変わり、彼らが前に進んでいるのか、ただ光に押し流されているのか判別できない。


『∴∵ΞΦδ∶∵∴¤』


もう一つの符号めいた声が空間に響き、失われた言語の一部のように耳を刺すように滑り抜けていった。


ルキは下意識に上の耳を覆い、声を震わせた。


「うっ……こ、これらの映像には一体どんな意味があるの……?」


「グモ教授なら何か手掛かりを見つけられるかもしれない。彼はわたくしより古代情報の解読に長けている……」


教授はただ首を振り、光をじっと見つめる目に困惑の色を浮かべていた。



突然、映像の遠方に巨大な構造が震え、見えない環状の波が幾重にも広がっていった。波が通り過ぎるたびに施設は粉々に砕け、塵となった。掃かれた影は倒れることなく、光の中で直に消え、まるで存在そのものが抹消されたかのようだった。


さらに高みには銀白の輪郭が現れ、その体躯は他のすべてよりも遥かに大きかった。翅の影は幾層にも重なり、数えることはできなかった。


顔の位置には三つの強烈な発光点だけがあり、眼のように凝視していた。彼は巨大な器具らしきものを掲げ、その光脈が触れた途端に、前方の影は瞬時に消え去った。


映像は突然さらに速く切り替わった。追う者、抗う者、すべてが加速再生のように流れ込んだ。

銀白の輪郭の周囲を覆う光はいくつか削ぎ落とされ、縁は乱れた。鋭い光痕が走り、彼の腕部には亀裂が走った。地面には銀白と濃紺の液体が混じり、不規則な痕を描き、投影の震動に合わせて瞬きのように輝いていた。



「これはまるで二つの異なる種族の戦いではないか?」


俺は断片的な映像を必死に繋ぎ合わせ、ようやくそれがいつ、どこで起きたのかも分からない激しい争いであることを見抜いた。


教授もミドもルキも、わずかにうなずいて同感を示しながら、視線を光の幕に映し出される映像に釘付けにしていた。俺も思わず息を呑み、その変化を黙って見守った。


やがて残影の中に群れをなす光体が浮かび上がり、より大きな輪郭に応じるように揺れ動いていた。銀白の残影は一つまた一つと閃光の後に消え、力尽きたように倒れ、あるいは抹消されたかのように消え去った。するとその巨大な輪郭が天を仰ぎ、判別不能な咆哮を放つと、崩れ落ちる施設へと突入した。そしてその他の光体も後を追い、映像は暗い空洞へと切り替わった。


銀白の巨大な輪郭は光の幕の中で急速に色を失い、体の九割近くが銀から灰白へと変わり、縁は寒風にさらされたかのように光沢を失っていった。だが地面には二筋の痕跡が広がり、銀色の液体と青色の液体が交錯しながら流れ、まるで道を探すかのように蠢いていた。



「待って……色が変わっている……」


「あ、あれら……自分で動いているのか?」


ミドは地面に広がる、生命を宿したかのような液体を指さした。


不思議なことに、その液体は意識を持つかのように同時に動きを止め、やがて空洞の中央にある黒い巨大な結晶へと一斉に流れ込み、一気に内部へ吸い込まれていった。結晶の光紋は一度だけ大きく膨らみ、すぐに収束し、まるで何かを呑み込んだようだった。


闇の中で際立っていたのは黒い中心核だった。その表面は異様な光を瞬かせ、近づいた淡い青の光体は次々と輝きを失い、輪郭を保てなくなって地面に崩れ落ちていった。


やがて残ったのは、他よりも背の高い少数の光体だけだった。彼らの光はより濃く、輪郭も一層凝縮されていた。


突如、銀白の巨大な輪郭が闇の中から飛び出した。口元は何かを呟いているように動き、手にした器具を宙へと投げ放つと、それは瞬時に雷電のような光束へと変わり、残存する光体へ向けて鋭く放たれた。



「それは……攻撃している?」


教授は眉をひそめ、映像の中から手がかりを探ろうとしていた。


ひとつの大きな光体が壁のような光を立ち上げ、雨のように降り注ぐ光束を防ごうとした。


だが光の壁は強烈な閃光の中で崩れ、その輪郭も形を失った。


残された光体たちは仲間が消えた瞬間、銀白の輪郭へと一気に迫り、ただ敵を倒すことだけに意志を燃やしているようだった。


銀白の巨大な輪郭は孤独に戦い、六つの強勢な残影を前にしても揺るがなかった。光幕が震える中、その姿はむしろ一層確固たるものに見えた。



「銀白の巨影……笑った?」


瀕死の銀白の巨影が光の幕の中に浮かび、口元がわずかに弧を描いたかと思うと、次の瞬間にはもう霞んで消えていた。


その笑みは奇妙で、言葉にしがたいほどの静かな安らぎを私に感じさせた。


空洞は崩壊を続け、残影は次第に闇へと溶けていった。やがて目に映ったのは、ある高大な輪郭が砕けた建物を突き抜け、祭壇のような場所へと辿り着く姿だった。そこでは光の幕が通路を開いたように見えたが、その先は判然としない。


「あれって……!?」


ルキは突然両手で口を覆い、震えながら画面を凝視した。


轟音の中、不意に赤子の泣き声が響いた。



「君たち、聞こえたか?」


教授は前へ移動する映像を指さしながら言った。


瓦礫の間から小さな影が浮かび上がり、ぼんやりした顔には三つの光点が瞬いていた。高大の影はその影を抱き上げ、祭壇前の通路へと急ぎ走った。


『∴ΞΦδ∶∵∴』


記号のような声と泣き声が重なり合い、まるで別の信号のように響いた。


到達する直前、闇の引力が空間全体を呑み込もうとした。その影は赤ん坊をエネルギーの通路へと投げ入れ、自らは足を止め、身体から青白い光を爆発させた。


無数の青白い光線が黒影へと放たれ、それを無数の破片に砕いた。いくつかの大きな破片は紫と赤の光を瞬かせながら、さらに深い闇へと漂っていった。


高大の影の最後の輪郭も光の中で消え、白光となって空間から消え去った。



(あれは――赤……紫の破片……!?)


光の幕が震え、明るさは一気に上昇した。最後の形を見極められると思った瞬間、映像は突如として大きく白飛びし、すべての輪郭が白光に退き、ただ空白だけが残った。


先ほどの壮烈な映像から現実へと戻った刹那、俺は思わず息を呑み、胸が押し潰されるように重く、脳裏には断裂した光の痕がなお残っていた。頭はじわりと膨張し、心は乱れ、長く静まらなかった。


俺は無意識にミドとルキへ視線を向けた。


ミドの表情は硬直し、目を大きく見開いたまま焦点を失っていた。

ルキはただ驚いているだけではなく、両手で肩を強く抱きしめ、全身が止められぬほど震えていた。

その瞳は、かつて起こった事実を見てしまったかのように恐怖に染まり、今にも叫び出しそうだった。

映像が終わる直前、彼女が突然発した驚きの声がまだ俺の脳裏に響き、無視できなかった。


「これって……教授、まさか……」



「イラン、君の驚きは理解できる。恐らく……まさに君が感じた通りだ。」


教授の声は低く、額には細かな汗が滲んでいた。



「わたくしもそう思う……この映像は、ルキが持ち込んだ断片が、わたくしたちの目の前で生成される過程そのものなのだ……」


いつも冷静沈着な教授が、これほど汗を流す姿を見るのは初めてだった。

彼の指はわずかに震え、何かを掴もうとしても触れることができないようだった。光の幕に映し出されていたのは単なる映像ではなく、いつ、どこで起こったのかも分からぬ戦争だった。


その戦争の残影こそが、『失われた断片』を生み出す源だったのだ。



「ルキ、大丈夫?」


俺は振り返り、彼女に向き直った。


彼女の肩はなお震え、両手で自分を強く抱きしめ、指の関節は力の入りすぎで白くなっていた。瞳には驚きだけでなく、かつて存在した事実を見てしまったかのような恐怖が宿り、今にも逃げ出しそうだった。



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