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女神のさぶらい 〜逃げた勇者共に代わり武士を召喚してやった〜  作者: サムハラ
第五章 創造の勇者編

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第13話 アンジェリカの覚悟

 三郎は腰の太刀を抜いて目の前の白い壁を切りつけた。だが壁を構成する蜘蛛の糸はそんな斬撃を物ともせず、糸の一本すら断ち切れていない。


「クソっ! 本当に切れねえ!」


 その余りの強度に三郎も舌を巻いた。速くアルケー達を助けに行きたいのに切る事も破く事も出来ないのだ。

 その後ろではアンジェリカが横転した馬車の廃材を集めていた。


「おい、アンジェ。何してんだ?」

「武器を作ってんの。ミュンミュン達を助けなきゃ」

「お前さん。戦いたくなかったんじゃないのか?」

「それでもズッ友が捕まって何もしない訳ないじゃん。アタシそこまでヘタレちゃんじゃないし」


 相変わらず三郎にとって難解な言葉を使うが言おうとしている事は察せられた。

 だがそう言うアンジェリカの手は震えていたし、その表情もいつもより強張っている。


「無理せず俺に任せとけよ」


 そんな有り様で何が出来るのか。

 三郎は彼女が無駄死にしないように言った。


「さぶちん……ありがとう。でもダメ。アタシは今ここで逃げちゃダメなの」


 だがアンジェリカは首を横に振る。


「アタシね、戦いが怖くなって笑亜りんに魔王討伐を押し付けた事がずっと心残りだったんだ。アルちにも悪い事しちゃったなって思ってたし。ぶっちゃけまだ怖くて戦いなんてごめんだけど、それでも私は皆を助けたい」


 アンジェリカは心の内を吐露する。

 いつもはおちゃらけた態度をしているが、本来の彼女は友達思いで責任感が強いのだ。

 そんな彼女だったが魔王軍との戦いで恐怖が芽生えてしまい、友達を残して魔王討伐の使命から逃げた。どんなに理由を付けてもアンジェリカ自身はその事を悔いていたのだ。

 そんな時に奴隷だったミュンネイを攫ったのは彼女の身勝手なエゴだったのだろう。こんなアタシでも誰かを笑顔に出来るという。


「だからお願いさぶちん。アタシも連れてって」


 アンジェリカは集めた廃材に魔力を流し込む。

 彼女のスキル創造(クリエイト)物質操作(マテリアルマスター)によって廃材は新しい姿へと生まれ変わった。

 ポンプアクション式のショットガンと刃渡り40cm近くある銃剣。これが今、彼女が作り出せる最強武器だ。


「……戦いに行くって事はお前さんを庇ったミュンネイの気持ちを無駄にするって事だぞ?」

「ミュンミュンならアタシのわがままを許してくれる。いつもやってるもん」


 それは自慢する事ではないのではと思いつつ三郎は彼女を試す様に睨み付けた。


「死ぬぞ。お前」


 これは三郎の脅しだ。

 この言葉に少しでも動じれば置いて行く。

 中途半端な気概で戦に臨んだ所で、恐怖で動けなくなるのがオチだ。特にアンジェリカは一度勇者から逃げている。

 だが坂東武者の眼光で刺されてもアンジェリカは少しも動じず、逆に三郎を刺し返そうな眼光を向けた。


(こりゃあ笑亜と同じだな)


 それはいつぞやの相撲で負けた後、それでも引き下がらなかった笑亜と同じ物だった。


「戦いが始まったら俺は構ってやれねえ。自分の身は自分で守れよ」

「分かってる。アタシだって元は女神の勇者だもん!」

「はは、見上げた根性だ!」


 笑亜もアンジェリカも女にしておくには勿体ないくらい勇ましい。三郎はその姿に自分を育ててくれたある人を思い出した。


「で、この蜘蛛の糸どうしよう?」


 ここでアンジェリカがふと聞いた。

 戦うとは言ってもそこに行くまでの問題が解決してないのだ。

 だが三郎はほくそ笑みながらドヤ顔で言った。


「俺に考えがある」


 そう言って坂東武者は愛馬を呼び寄せた。

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