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女神のさぶらい 〜逃げた勇者共に代わり武士を召喚してやった〜  作者: サムハラ
第四章 ワープの勇者編

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第2話 笑亜の借金

 モンテドルフから6日目の昼前、アルケー達は目的地であるカルカスのギルドに到着した。

 アルケア王国の東部に位置し、この地域の交通の要所として発展した貿易都市。笑亜曰く賑わいなら王都にも負けないらしい。


「着いたぁ~」


 もう歩けないといった感じで、空いている椅子に崩れるアルケー。

 隣の席に座っていた冒険者が何事かと振り向くくらいのバテバテ様だった。

 結局、あれからあれやこれや、主にアルケーのわがままによって遅れに遅れての到着だ。


「お疲れ様でしたアルケー様」

「これからもこの調子じゃあ先が思いやられるな」


 だらしない女神の有様に三郎は参った調子で文句を言う。

 そんな彼にアルケーは「うっさい」と返した。


 ギルド内は酒場とクエストを受注する受付けが併設されており、時間も相俟ってかなり混雑している。

 ここで冒険者達はモンスターの討伐クエストやアイテムの採取クエストを受注し冒険に行き、帰って来れば仲間達と祝杯を上げるのだ。


「笑亜。このギルドのマスターが勇者なのよね」

「はい。名前は綾無 菊子(あやなし きくこ)と言う人です。覚えてられますか?」

「さあ。勇者はたくさん送ったし、けれど顔を見れば思い出すかもね」


 笑亜と出会った時もそうだったが、アルケーは勇者達の顔や名前をはっきりとは覚えているとは言えない。だから綾無 菊子という名前を聞いても、数多いる勇者の誰だったのか分からないのだ。


「しかし勇者の使命から逃げて、何でまたギルドマスターなんかに」

「前に『自分は戦いなんて物騒な事は向いてない』と言ってました。私が出会った時にはもうこのギルドを立ち上げられてましたし、かなり前に勇者を辞めたんじゃないでしょうか?」

「辞めれないっつーの! 勇者は!」


 見ればかなり大きなギルドのようだ。ここの長ということはさぞかし贅沢な暮らしをしている事だろう。

 豪華な部屋でワイン片手に優雅に扇子を仰いでる姿(あくまでアルケーのお金持ちイメージです)を想像すると、何だか腹が立ってきた。


「こっちは必死になってカラミティを倒す為に頑張っているのに!」


 出会ったらガツンと言ってやるとアルケーは誓った。


「すみません。ギルドマスターの菊子さんに会いたいのですが通してもらえますか」


 早速、笑亜がギルドの受付けで面会を願い出る。

 ここら辺はギルド所属である彼女に任せた方が手っ取り早いだろうと思われたのだが、


「申し訳ありませんが、ギルドマスターには当ギルド所属の冒険者でなければ面会する事は出来ません」


 対応した受付けの女性は少し怖い調子でそれを拒否した。


「へ? 私このギルドの冒険者ですよ? ほら証明の冒険者カードだってある」


 笑亜は不思議そうな顔で冒険者カードを提示する。

 それを見た女性は溜め息を吐いた。


「現在、笑亜さんの冒険者資格は停止中ですね」

「何で!?」

「もう6ヶ月以上、借金返済が滞っています。そのペナルティですね。当面は菊子様にではなくこの受付けにて返済して下さい」


 受付け嬢は事務的に淡々と述べる。

 一度逃げた債務者に慈悲は無いと言う様な態度だ。


「ちょっと笑亜。貴方借金なんてしてたの?」


 意外な事実にツッコむアルケー。

 笑亜はマズい事を知られた様に目を泳がせた。


「い、いろいろと入り用だったもので。装備とかアイテムとか日々の生活とか、あと趣味……」

「趣味?」

「……カジノです」

「ギルティ!!」


 まさかの賭け事に脚を突っ込んでいた。

 この娘、意外とダメな子かもしれない。いや未成年だし普通にダメだ。


「何とかなりませんか? 直接会って話さないといけない事があるんです」

「ある程度の返済をして頂かないと、冒険者資格の更新は出来ませんね」

「……幾らですか?」

「最低でも2テイラーです」

「テ……イラー……」


 その単位に笑亜は絶句してヘタレ込む。

 それを後ろで眺めながら三郎がアルケーに聞いた。


「どのくらいの額なんだ?」

「1ギラ銀貨で2000枚分。普通の人が3ヶ月は暮らせる大金よ。普段生活なら先ず使わない額ね」


 この世界で使われる通貨単位は2種類あり、基本的にはギラと言う単位で日常生活は事足りる。

 テイラーを扱う人間は商人か国といった大金を動かす者達くらいだ。


「ふ~ん。因みに金の銭だとどうだ?」

「金貨? まあ2テイラー金貨なら1枚で済むけど」


 それを聞いた三郎は受付けまで進み出ると、底無袋から取り出したコインを台の上に置いた。


「お嬢、こいつで何とかならねえか?」


 それは金色に輝き「2」の意味を持つ金貨だった。


「「2テイラー金貨!?」」


 受付け嬢より連れの2人の方がビックリこいて金貨に喰い入る。


「何でこんな大金持ってるのよ!?」

「シャル二ーから貰った」

「貰ったっていつ? あ……」


 そう言えば村で騎士達が横暴してた時、太刀の代金として金貨を貰っていたような気がする。


「あの時の金貨そのまま盗んでたの!?」

「盗んでねえよ! 迷惑金と見逃し金だ!」


 三郎はさも当然の事のように正当化する。

 あの後の乱闘騒ぎやカラミティとの戦いで正直金貨の事なんて忘れていた。たぶんシャルディも忘れているんじゃないだろうか?

 何か後ろめたさはあるものの、菊子と会うにはこのお金を使うしかない。


「あの……これでお願いします」

「はい確かに。今後はきっちりと返済して下さいね」


 それは恐らく逃げるなという意味だろう。受付け嬢の声色が怖かった。

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