棋士の心構え
かなり手の込んだ作品になるのは間違いない。イラスト(挿し絵)も文章も仕事やプライベートの間に作成していた訳ではあるが、全てコンピューターで作成したデジタル式紙芝居と絵本の2パターンを小野井は用意していた。
内容も中身もほぼ同じだが、扱う媒体がデジタル式紙芝居の方がスマホやタブレットで、絵本は紙(書籍)であると言う違いだけである。これだけデジタル化が進んだ世の中だ。これを利用しない手はない。こういったパソコンを使った仕事を行うのも、昨今の自衛官の仕事の主流になりつつある。
寧ろ、佐官、将官といった部隊の中でも上級な幹部自衛官にもデジタル化の流れは来ていると言える。前線での肉体労働・肉体的格闘とは縁がなくなり、大企業の中間管理職顔負けのデスクワークが待っている。初老の上級幹部自衛官にとっては、苦痛以外の何物でもない。
小野井の様な若い初級幹部自衛官は、将来を見据えて、PC利用による部隊運用や方法についても、学ぶ。勿論、時には部隊の訓練で汗をかく事もある。とは言え、役割的に言えば現場の部隊を動かす幹部自衛官は、将棋の棋士であり。兵・下士官のように部隊を構成する要員は駒にあたる訳である。
新米の幹部自衛官は、帝国陸海軍で言うところの陸軍士官学校や海軍兵学校を卒業したばかりの新品少尉と同じである。その前には少尉候補生(今で言うところの幹部候補生課程)として、実習の機会が与えられ、その兵士育成術は明治健軍以来の伝統であった。
特に帝国陸海軍の下士官育成のレベルは世界最高峰のものがあるとされ、肝心の士官は普通のものに留まり帝国陸海軍や陸海空各自衛隊は"頭でっかち"と揶揄されるようになった。学校秀才は数多くいたが、軍人に必要な資質を見ると学校秀才型よりは現場実践型の人間の方が、指揮を取る士官としては優れている。
残念ながら昭和の帝国陸海軍は、学校秀才型の士官ばかりで現場実践型で優秀な士官はほとんどいなかった。作られた絵本やデジタル紙芝居の中にも、こうした当時の帝国陸海軍に関する知識が、取得出来る様に「コラム」と言う場所を設け確保し、ただの絵本や紙芝居とは一線を画すような工夫が随所に見られた訳である。




