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第十七話:再び首都へ

 幌馬車に戻って俺は、

「さて、キングゴブリンのところへ向かうか。リリアナ姫を救出して一億エンだ」と提案すると、

「いいえ、次は首都に行くわ」とオティーリエが手綱を取る。

「首都に行ったら、捕まるだろ」と俺が驚いていると、

「だから、行くわけないと皆思っているでしょ。だから行くのよ。まさか、首都に来るとは思わないでしょ」

「何しに行くんだ」

「ナロード王国軍追跡部隊を殲滅よ」とオティーリエがニヤリと笑う。


「そんな事をしたら、反逆罪で死刑だろ」

「だって、リリアナ姫とかいうバカ姫を助ける前に捕まったら、あたしらはキングゴブリンに差し出されて殺されちゃうじゃない。その前に殺すの! 殺戮すんの! 虐殺すんの!」

「追跡部隊を殲滅したら、リリアナ姫を助けてもやっぱり死刑じゃないか」

「だから、あたしたちじゃないって思わせればいいのよ」

「なんか名案があるのか」

「あのデブがカクヨーム王国製の火縄銃をちょろまかしてきたじゃない。それを置いておけばいいのよ。カクヨーム王国軍がやったと思うわ」

 そんなにうまくいくんだろうか。


「で、どうやって追撃部隊を殲滅するんだ」

「火薬を使うのよ」

「カノン峡谷の崖崩れに使用してもう無いぞ」

「あなた火薬がある倉庫知ってるでしょ。そこから盗むのよ」

 すっかり忘れていた。

 しかし、この女は覚えていた。

 やはり、オティーリエは頭はいい。

 それとも、俺の頭が悪いのか?


 だが、やはりそんなにうまくいくのかと俺は疑問に思った。

 しかし、この女、妙に運がついている。

 この女の運にかけてみるか。

 それに追跡部隊にぶつかるとは限らないし。

 

 首都メスト市を目指して、幌馬車を走らせる。

 幸い、追手には出会わなかった。

 例の倉庫から少し離れた場所で幌馬車を停める。

「ちょっと、偵察に行って来る」と俺は目立たぬよう一般人のように倉庫に向かってゆっくりと歩く。 

 軍隊の倉庫前の空き地に、五十人くらい兵士が整列していた。

 昨日、空き地で遊んでいた子供たちが見物している。

「やあ、空き地で遊べなくて残念だね、あの兵隊さんたちは何だろう」と子供たちにさりげなく聞く。

「あれは、キングゴブリンの息子を殺した悪い奴を捕まえる部隊だよ」と答えが返ってきた。

 子供にまで情報が漏れてるのか、ナロード王国軍は。

 底抜けの軍隊だな。


 それにしても、悪い奴か。

 それは真っ黒い恰好をした女だけだぞと冗談を言いたくなった。

 兵士が近づいてきたので、俺はゆっくりと戻る。

 振り返ると、子供たちが兵士に追い払われている。

 

 川岸の高台に上ると、オティーリエが寝転んでいた。

「火薬箱盗めなかったらしいわね」とつまんなそうだ。

「倉庫の前に兵隊がいるからな。あれは、俺たちを追跡する部隊らしい」

「え、そうなの!」とオティーリエが起き上がる。


「この機会を逃すわけにはいかないわ! 倉庫を爆破して殲滅するのよ!」と急に張り切っている。

「ばれないかな」

「大丈夫よ」と自信満々なオティーリエ。

 自信満々と言うよりも、人を殺戮したいんだろうけど。

 

 耳栓をしたオティーリエが呪文を唱える。

「ファイアーボール!」とオティーリエが声をあげた。

 火の玉が倉庫目がけて飛んでいく。

 俺は耳をふさいで地面に伏せた。

 倉庫に直撃し、大爆発が起きた。


 爆風で砂ぼこりが舞う。

 砂ぼこりが消えると、隣の空き地に兵士の死体がごろごろ転がっている。

 こりゃ全滅か。

「ヒャッホー!」と叫ぶオティーリエ。

「喜んでいる場合じゃないだろ。さっさと逃げないと」


 とにかく急いで幌馬車に戻る。

 オティーリエは幌馬車からカクヨーム王国製の火縄銃を全部地面に放り投げる。

「ああ、僕の銃が」とゲニタルが嘆くと、

「デブ、うるさい!」と叫んで、鞭で叩くオティーリエ。

「オティーリエ様、申し訳ありません」と逃げ回るゲニタル。

 幌馬車の周りをオティーリエが鞭を振るってゲニタルを叩きながら、またぐるぐると二人で追いかけっこをしている。


「いつまで、そんな繰り返しギャグをやっているんだよ」と俺はオティーリエを止めた。

 散々オティーリエに鞭で叩かれたが、今回ゲニタルは気絶していない。

 幌馬車の御者席に座るとき、

「ゲニタルの奴、鞭にだいぶ慣れたようだな」と冗談を言うと、

「もっと刺激が欲しいのね」とオティーリエが笑った。

 この女、もっと酷い事をしそうで怖い。


「それより、ちょっと寄りたいとこがあるのよ」

「おい、もうキングゴブリンの方へ行かないと」

「あなたが行った薬屋の方へ行きたい」

「ディックのためか」

「うん」とオティーリエが頷いた。

「じゃあ、仕方が無いか」


 薬屋の近くまで行く。

「あれが薬屋だ」と俺が示すが、オティーリエは逆の方を向いている。

 俺たちのパーティの元メンバーのエマが例のマッサージ屋の前に立っていた。

 馬車の御者席から飛び降りて、エマに向かって猛然と走っていくオティーリエ。

「助けて!」と悲鳴をあげて、エマが逃げ出した。

「ファイアーボール」と火の玉をエマにぶつける。

 倒れるエマ。


 ニコニコしながら戻って来るオティーリエ。

「殺すことは無いだろ」

「殺してないわよ、魔力がもったいないし。ほんの小さい火の玉を当てただけよ。それに、何言ってんのよ、あの女、密告したのよ。あたしたちを殺そうとしたのも同じじゃない」

「うーん、まあそう言えばそうなんだけど」

 元はお前が虐めてたのが原因じゃないかと言いたくなった。


「なんで復讐しちゃいけないの。けど、殺してないよ、背中だけ。ありがたく思え!」とエマに向かってオティーリエが叫ぶ。

 エマが立ち上がって、ヨロヨロと逃げていく。

「あたしたちを殺そうとしたろくでなしよ、火傷で苦しめばいいのよ」と嬉しそうな顔をするオティーリエ。

 執念深い女でもあるなあと俺は思った。


 衛士がやって来たので、幌馬車を走らせ逃走する。

「薬屋に行くんじゃなかったのかよ」と俺が聞くと、

「薬屋に行くとは言ってないわよ、薬屋の方へ行きたいって言ったのよ」

 昔の詐欺師みたいな事を言う女だなと俺は呆れた。


「さっきの件だが残念だけど、エマはクレリックだから、自分で治せるんじゃないか」

「あの女は詐欺師よ、クレリックじゃない。だからパーティから追い出したのよ」

「え、ホントかよ」と俺は驚いた。

 確かにしょぼい仕事ばっかりで、エマが回復魔法を使っているとこは見た事なかったな。


「クレリックがあんな売春宿に勤めるわけないじゃないの」

 お前も怪しげな夜の仕事をしてるけどな。

「人間は皆嘘つきよ、信用しないほうがいい。信用するのはあたしだけにした方がいいわ」とオティーリエが言った。

 お前が一番信用できないつーの。

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