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第十四話:湖畔で宿泊

「さて、下に降りましょうよ」とオティーリエが機嫌良さそうに俺の腕を引っ張る。

「確認しないでも、あのボスゴブリンは死んでるんじゃないか」

「違うわよ、さっき、あのバカゴブリンは火薬はもう無いと言いながら、ちょっと下を見たのよ。前に行った時、下に倉庫があったじゃない。そこに隠しているわ」

 この女、けっこう目ざといな。


 オティーリエは鼻歌を口ずさみながら、階段を下りる。

 本当に機嫌がよさそうだ。

 急な階段を踊るように下りていく。

 急勾配の階段をよくそんな高いヒールのブーツで下りれるもんだ。


 一番下でボスゴブリンが倒れている。

 やはり死んでいた。

「この世から緊急脱出したようね、アハハ!」とまたオティーリエが笑う。

 酷い言い方だなと俺は思った。

 

 例の秘密の出口の部屋の左右の倉庫を調べると、鍵が掛かっている。

 俺が簡単に扉の鍵を解錠すると、

「へえ、あんたにこんな才能があったのね」とオティーリエが感心している。

「もともとこれが俺の本来の仕事だよ」


 火縄銃と火薬が大量に置いてあるのを俺たちは見つけた。

「こいつを運び出すには幌馬車が必要だな」

「じゃあ、あたしはここで待っているから、あんたはまたこの階段を上って、幌馬車をここまで運んできてよ」

「この階段を上るのかよ」と俺が嫌な顔をすると、

「何よ、この前来た時、五百段くらい大したことないとか言ってたじゃん」

「ちぇ、記憶力のいい女だな」

「頭が良いって言ってよ~」となぜか笑顔のオティーリエ。

 わざと俺を下まで降ろしたんじゃないのか。


 俺は仕方が無く、また階段を上る事にした。

「早く戻ってきてよ!」と下からオティーリエに声をかけられる。

 がんばって駆け足で上るが、けっこう疲れた。

 足がクタクタだ。

 ここから潜入して、ボスゴブリンを襲うってのも無理があったのかもしれないなと今さら思ったりする。


 ゴブリンのアジトの正面入り口前に小さい馬車が停まっていた。

 さっきの爆発に巻き込まれなかったらしい。

 髑髏の絵が荷台の側面に描いてあったり、人間の骨か動物の骨かわからないが、それらが全体に装飾されてあったりと悪趣味な仕様だが、歩くのはちょっとつらくなった。

 仕方が無いので、その馬車を使って幌馬車をとめてある高台まで行く。


 幌馬車の前で、ゲニタルがぼーっと突っ立ていた。

「ゲニタル、気絶から起きたのか」

「うん、どこに行ってたんですか?」

「ゴブリンのアジトにオティーリエが乱入したんだ。皆殺しだよ」

「ゴブリンを皆殺し! もしかして、僕たちもオティーリエに皆殺しにされるんじゃないですか、このまま逃げましょう」とゲニタルが怯えている。


「逃げたところで、オティーリエよりも怖い、キングゴブリン軍団やナロード王国軍、カクヨーム王国軍、賞金稼ぎの冒険者、いずれかに殺されると思うぞ。今は、あのいかれた女の力を借りるしかないだろ。今のところ、まだ味方だからな」

「オティーリエに殺されそうになったらどうするんですか」

「そりゃ、逃げるよ」

 またはオティーリエを殺すしかないなと俺は思った。


「一人で逃げないで下さいよ。オティーリエに殺されそうになった時は助けて下さい」

「わかったよ。まあ、俺の方が先にオティーリエに殺されるかもしれないけどな」

「そんな怖い事言わないで下さい」とまたゲニタルが怯えている。


「冗談だよ。とりあえず、お前は幌馬車を操ってくれ」とゲニタルに命令すると、

「あの頼み事があるんですが」とゲニタルが神妙な顔をしている。

「何だよ」

「もし僕が死んだら、海が見える崖の上にお墓を建てて下さい。海を見た事ないんですよ。せめてあの世で見たいです」

「縁起の悪い事言うなって」とゲニタルの肩を叩くが、実際のところ、俺たちは墓も建てられずに抹殺されるかもしれん。


 ゲニタルに幌馬車を操ってもらい、一緒に山を下って、森の中を何とかうまく走って山の麓の湖付近まで到着した。

 馬車から降りて、少し歩き例の洞窟に入る。


 奥の部屋まで行くと、オティーリエがいない。

「オティーリエ、どこだ」と俺が声をかけると、何者かに後ろからさっとナイフを首元に突きつけられた。

 しまった! と俺は少しも動けない。


「何、ビビッてんのよ」とオティーリエが耳元で囁いた。

「何だ、お前かよ、びっくりさせんなよ」と俺がほっとすると、

「ふざけただけよ」と俺の両肩に手を置いて微笑むオティーリエ。

 本気で俺を殺すつもりだったのかもしれない。


「さて、火薬箱を運ぼう。火縄銃はいらないな。俺たちに操作できないし、それにたった四人で火縄銃を撃っても仕方が無い。オティーリエの火炎攻撃魔法の方がよっぽど使える」と俺が言うと、

「あら、あたしの事を頼りにしてくれるの」とオティーリエはニコニコとした笑顔を見せる。

 頼りにはしているが、いっそのこと火薬と一緒に吹っ飛んでくれとも俺は思った。


 何度か往復して、火薬箱を倉庫から馬車に運んでいると辺りはすっかり暗くなったので、今日は湖畔で泊ることにした。

 ふと見ると、ゲニタルが火縄銃を四丁担いでいる。

「なんで火縄銃を持っているんだ」と俺が聞くと、

「実は僕、火縄銃を扱えるんですよ。皆さんに教えてあげてもいいなあと思って」とゲニタルが子供みたいな笑顔で答える。


 それを聞きつけたオティーリエが、

「なによ、あたしのファイアーボールじゃあ、頼りないって言うの」といきなり鞭でゲニタルを叩く。

「ひい!」と叫んで森の中を逃げ回るゲニタル。

「このデブ!」とまたオティーリエが鞭でゲニタルの全身を叩きながら追い回す。

 またかよ。

 いい加減にしてほしい。

 見ていても本当にあほらしい光景なので止めさせる。


 火縄銃もゲニタルから取り上げて、幌馬車に放り込んだ。

 ディックは幌馬車の中で依然として調子が悪そうだ。

「ディック、調子はどうだ」

「うーん、いまいちかな」と相変わらずぼんやりとしている。

 しかし、ディックはようやく酒が抜けたようだ。


 寝る前にディックに薬を飲ませるため、携帯ランプと水筒を持って湖に行く。

 今夜は月が明るい。

 水筒に水を汲んでいると、誰かが近づいてくる気配がした。

 後ろを向くと、オティーリエがやって来た。

「どうした」と俺が声をかける。

「この湖美しいわ」としゃがんでいる俺のすぐ隣に立つ。


 しばらく無言で月を見上げた後、

「今夜は月がとっても綺麗ね」とオティーリエが言った。

「ああ」何の用だろうと俺が警戒していると、

「あなたって、結婚してるの」とオティーリエが突然質問してきた。

「してるわけないだろ」

「恋人いるの」

「いねーよ、嫌味かよ」


「ふーん」と言った後、

「暑いわね、汗かいちゃった」とオティーリエがいきなり服を脱ぎ始めた。

 俺が仰天していると、

 月光の下、下着も全部脱いで素っ裸になる。

 こいつは露出狂か。


 しかし、完璧なプロポーションだなあとも俺は思った。

 乳房は男の手からはみ出す位の巨乳だが、張りがあって垂れておらず、くびれたウエストにかっこよくあがっているお尻、白くなめらかな太股は肉感的で、スラリと長い足は流麗な線を描いている。

 下の毛も剃ってるので、まるで大理石の美しい芸術品の彫像みたいだ。

 男ならこのボディにそそられない奴はいないだろうが、火だるまにされたくないので、俺は素知らぬ振りをした。


 オティーリエは俺の方を向いて、軽く微笑んで湖に飛び込む。

「あなたもこっちへ来なさいよ。気持ちいいわよ」と誘われるが、水の中に引きずり込まれて、殺されるかもしれない。

「風邪ひくといけないから、遠慮しとくよ」と俺は答えた。

 背泳ぎで綺麗な声で歌いながら泳ぐオティーリエ。

 しばらく、全裸で気持ちよく泳いでいる。


 セイレーンという、美しい歌声で男を誘って水の中に引き込んで喰い殺すモンスターを思い出した俺は、さっさと退散しようと思っていたところ、突然、オティーリエが湖の岸辺に泳いできて飛び出た。


 ロングブーツを履いて、あとは裸で鞭を持って森の中へ走る。

「逃げるな、この野郎!」とオティーリエが叫んでいるのが聞こえた。

 何事かと、俺は水筒とオティーリエの服を持って、森の中に走る。


 オティーリエがロングブーツだけ履いた全裸で鞭を持って、ゲニタルを追い回している。

「何だよ、また遊んでんのかよ」と俺が呆れていると、

「このデブがあたしの裸を覗いていたのよ、いやらしいデブ!」


 逃げる途中でゲニタルはすっ転んで、土下座しながら、

「用を足してたんですよ。覗いていたんじゃないですよ」と言い訳する。

 鞭でオティーリエに叩きまくられるゲニタル。


 土下座したまま動かない。

 ったく、ゲニタルもたまにはオティーリエに反撃しねーのかね、止める気がしなくなってきたぞ。

 もしかして、女に鞭で叩かれるのが好きなんじゃないのか、このデブは。


 しかし、今はこいつでも貴重な仲間だ。

「裸を見られたって怒ってるのに、裸同然の恰好すんなよ」と服をオティーリエの顔面に突きつけてやめさせる。

「ああ、気がつかなかった」とオティーリエが、今気づいたような事を言うが、この女も本当は裸を見られたいんじゃないのか。

 ゲニタルは結局、気絶。

 こいつは、もう一生分気絶したのかもしれん。


 ゲニタルをひきずって、馬車の後ろに放り込む。

 俺は薬屋の店員に言われたとおり、一粒を慎重に四分割して、一片をコップの水に溶かしてディックに飲ませる。

「ディック、体調はどうだ?」

「うーん、よくわからない」とディックははっきりしない。


「この薬、本格的に効果が出るのに一か月くらいかかるようなんだ。失くすとまずいから、とりあえずあんたのポケットに入れとくぞ。袋に詳しい説明をメモってあるから読んでおいてくれ」と俺が言うと、

「一か月後かあ、多分俺は生きてないよ。明日にも死ぬんじゃないかな」とディックは投げやりな態度をとる。


「おい、ディック、大丈夫かよ。俺だけじゃ、オティーリエの暴走は止められないんだよ。兄貴のお前が頑張ってくれないといけないんだ、しっかりしろよ」とディックを励ますと、

「誰にも止められないよ、アハハ」とディックは虚ろな目をして笑う。

 ディックはもうダメかなあと俺は思った。


「お前らはキングゴブリンを倒して、リリアナ姫を救出して一億エン獲得するつもりだろうけど、結局のところ、全部オティーリエが独り占めにするぞ。お前もゲニタルも殺されてな」とディックは他人事のような態度を取る。


「その場合、あんたも殺されるのか、オティーリエに」

「そうだよ~あの世でエターナル!」とまたふざけた態度をとるディック。

 ディックは、もはや生きる気力も失くしてしまったのだろうか。


 まあ、オティーリエに殺される前に、俺たちは生きてるかどうかもわからない状況だけどな。

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