フィウスを捜せ
特に魔物が現われることもなく、バーンたちは地図どおりシーフォンスヘとたどり着きます。そこは、磯の香りのする港町。周囲にはカモメの形をした風見鶏がありました。早速フィウスという男の情報を尋ねまわっていると、小太りな男が彼らの方へと近寄ってきます。そしてへんてこな似顔絵を見て、「がははは」と突然大声で笑い出しました。
「この眼帯、リーダーじゃねぇかよ。でもどうせ描くのなら、もっと口のでかい男にしねぇとな。で、ウチのリーダーに何の用がある? 漁なら魔物の影響で出来ないぜ。それとも、その大剣であのウネウネ動く謎の化け物をたたっ斬ってくれるのか。まぁ無理だろうな、無理だろうよ、がはははは!」
バーンたちはよくしゃべる男に呆れつつも、リーダーと呼ばれたフィウスの似顔絵を指さして、彼の所在を確かめます。すると男は急に顔色が変わって、右手を差し出してきます。握手かと思い、アズトールが笑顔で手をとろうとすると、男は「違う。金だ、金」と催促するように手を仰ぎました。
「うわー、フィウスってやつの乗組員まで金にがめついのね。どうする、バーン」
バーンは何ペレムが相場なのかわからなかったので、とりあえず、りんご50個分、つまり50ペレムを差し出します。しかし、そのときにお金が入っている袋の中を見ていた男は、調子に乗り出しました。
「オレはリーダーの右腕、舵きりのショーン様だぜ? こんなはした金で動く人間じゃねーぞ……そうだな、500ペレム。それで手を打とう。大丈夫、リーダーのところへは連れてってやるから」
「――ガストンに命じる……」
「わわわわ、フィーネさん落ち着いて! バーンさん、ここは払いましょう。せっかくフィウスさんの居場所がわかったのです。それにまだペレムはあります。会えれば交渉できるかもしれません」
「あーあ、アズトール君、そんなこと言っちゃあ骨の髄まで搾り取られるよ」
レティが浮かぶ絨毯の上で寝そべりながら、ショーンの方へと近づいていきます。そして、含み笑いをしたかといえばこう囁きます。
「……大麻のにおいがするねぇ。もしかして、誰かと違法取引でもしてるんじゃないのかい? このことが知れたら大問題になるね。どうだい、この事を秘密にしておく代わりに、550ペレム分の仕事をしてもらうっていうのは……」
「うっ……わぁったよ。連れてくだけだぜ? どうなっても知らないからな」
ショーンは、「ついて来い」とバーンたちを誘導します。
「ねぇレティ、あのぽっちゃり男をどうやって説得したの?」
フィーネの質問にレティは、「ふふふ」と笑ってごまかしました。納得のいかない様子の彼女はガストンを抱きながら不服そうに頬を膨らまします。着いた先は、シーフォンスの隅にある、薄暗く狭い路地裏の小さな建物でした。バーンたちは入るのをためらいます。
「いいか、オレは案内しただけだ。じゃあな」
そう言うと、ショーンはバーンたちから離れていきました。バーンはドアをノックして反応を見ます。一向に誰も出てくる気配がありません。恐る恐るドアを引いてみると、そこには数名の男たちと、明らかに風格が違う男が一人、酒を飲んで騒いでいました。バーンたちの存在に気づいたのか、男たちはゆっくりと彼らに向かって歩いてきます。バーンは警戒しながら、この状況で微動だにせず、酒を飲み続けている眼帯の男に声をかけました。




