VS魔女ベルーザ
鏡の壁に覆われた地下3階に、やたら露出度の高い装備の耳のとがった若い女性がいます。おそらくこの者がベルーザでしょう。バーンたちは各々戦闘体制に入りました。すると、彼女はニッと笑って、
「考えることが人間だけの智慧と思うでないぞ。さぁ、殺し合いの始まりだ」
その瞬間、ベルーザは両手で魔方陣を描き、バーンの前に4匹の魔物を放ちます。仲間たちはどこかへと消えてしまったようでした。それらは彼のもとへと猛烈なスピードで近づいてきます。おかしなことにそれらの魔物たちは見覚えのある攻撃スタイルを使ってきました。バーンは、くもの巣のように伸びた糸のようなものをバッサリと斬り捨てて、高速でやってくる黒い毛のオオカミの鋭い爪をギリギリでかわし、巨大化した魔物の拳を大剣で受け止めます。大理石で出来た地面に、バーンの両足がメシリと音を立てて食い込みました。
バーンは思います。彼は仲間たちと戦わせられているのだと。このままでは共倒れです。彼は考えました。魔物たちの奥にベルーザがこの様子を余裕の笑みで見物しているのが見えます。バーンはとにかく彼女のもとへ近づくために、申し訳ないと思いながらも魔物たちへ必殺技を振るいました。
「爆風烈斬!」
魔物たちは嵐のような爆風に、鏡の壁のところまで噴き飛ばされました。そこに映ったのは、『アニマハール』を抱いたまま気絶しているアズトール、絨毯の上で頭をおさえるレティ、床に転がったフィーネとガストンの姿でした。
バーンは、ベルーザに向かって駆け出しました。意識を取り戻した仲間も、自分が映った姿を見て正気にかえった様子。しかし、攻撃の際に使った体力や、バーンから受けた傷で動くことが出来ませんでした。
「頼んだよ、バーン君」
まだかろうじて意識のあったレティがそう呟きます。
「人間は弱い! 魔物は人間を凌駕する存在だ! お前一人でなにができる」
バーンは飛んでくる火の粉や氷の粒を寸是でかわしながら、考えます。ここ、トレイラージ神殿は、神聖な場所であったはず。なのなら、悪しき者を封じる方法がなにかあるかもしれません。バーンはあるものを発見しました。エメラルドグリーンの水が流れる噴水です。彼はそこで新しい必殺技を思いつきました。それは、水流を双子の龍のように操り、敵一体を確実にしとめる技です。
「水龍双蓮波!」
バーンの技が命中したベルーザは、その場で倒れこみました。ようやく動けるようになった仲間たちは、レティに彼女を拘束させた上で、ベルーザに近寄ります。
「これからあなたに止めを刺して、村人たちを人間にかえしてもらいます。覚悟してください」
「……最後に質問だ。人間と魔物の違いとはなんだ……」
フィーネは呆れたように溜息をつきました。
「私の横で、みっともなく仲間の安否を確認して泣いてるバーンを見なさいよ。これがきっと正しい答えよ。ね、ガストン」
「にゃー」
それを聞いて、ベルーザはその両目を閉じます。納得、そして観念したのでしょう。バーンは彼女に止めを刺しました。問題は、あの村人たちがちゃんと人間に戻っているかどうかです。それを確かめるために、彼らは再び魔物の村へと戻ることにしました。