登山
俺達は今、山を登っている。日はとっくの昔に落ちた。だから、暗い山道をスマホのライトを頼りに進んでいる。
「おもい……」
しかも、スーツケース付きだ。どうなってる?
「仕方ないだろ。こうするしかないんだから……」
「もっと平坦な土地にあるホテルにしろよ……」
俺が文句を言っても大輝は言い返してくる。流石だね。こんなに辛い状況でも、主張はできるらしい。
「もうすぐ……あ」
「……今度は何」
……。大輝のスマホのGPSがうまく機能していない。オマケにナビは坂が急な道を提案している。
「この道らしい」
そう言って、大輝が指を差した方向は紛れもない獣道だった。いや、そうかはわからなかった。暗かったから何も見えない。
「……正気? 殺す気?」
大輝はビクッとしていたが、顔はまだ平常心を保っていそうな顔だった。
「そ、そんな……滅相もございません」
「ならよろしい」
甘いかも。大輝には甘くなってしまうな。
大輝に言われた通りの道を頑張って進んでいる。あれこれどのくらいたったのだろうか。
道を登り詰めたその先、いかにも車が通る道路があった。そして、そのまだ上の先にポツン、と明かりが灯っている。
「……まさか」
「はい……あれっす……」
俺は絶句した。だってあそこまでまだまだだよ!? ほんとに叫びたかったが、疲労が体に溜まりすぎて、体力を無駄に使いたくなかった。
「足……やば……」
俺の足が限界を迎えていた。なんせ、七里ヶ浜で思い切り走ったからだ。もう、ユニバどころじゃない。
「これも俺の責任……か」
大輝が小声でそう言って、俺のスーツケースを持った。
「なんとか頑張れ!」
「……はは。なんとか」
俺は笑った。大輝がスーツケースを2個持っている姿はシュールすぎたからだ。なに? それ? 新たな世の幕開けか。
俺達はなんとか、頂上に登り詰めた。フラッグがあるならぶっ刺したい。その願いも叶えられない。
俺達はチェックインを済まし、ベッドにダイブした。
「……今度は2つあるな」
なんか変な気持ちだった。また、同じベッドで寝るものと思っていた。
「なんか嫌そう」
「嫌じゃないし」
俺は形だけの返事をした。
「ってか晩御飯は?」
俺は話を逸らすのに必死だった。死ぬほど恥ずかしいからだ。もう俺の言いたいことはバレてると思うから。
「実は、付いてるんだよね。晩御飯」
「え? まじ!?」
俺は喜んだ。




