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24:就寝

 光度を落とした光の玉を部屋の真ん中に漂わせておく。

 これは明かりの無い迷宮の中などで明かり代わりに使う呪文だけど、放っておくと一時間ほどで自動的に消滅するため就寝前の明かりとしてたまに活用している。

 ベッドに横になり、わざわざ私の顔の目の前で同じように横になっているクロと今後の計画を立てる。


 「じゃあ、レアボスは後三回挑戦して変化が無かったら終了ね」

 「うむ、その場合は何を取るのだ?」

 「うーん、私は空間魔法がいいと思うけど」

 「リン、今ある四つ以上の転移先が必要になるというのは便利に使われるだけという可能性も考えないとなのだ」

 「んー、」

 確かに、私とクロだけと考えた場合転移などという便利機能は四つあれば十分という結論もある。四つ以上必要と考える根拠はもしもの為とか、念の為とか。例えばこの前までローランの魔道具屋に設定してあった転移先を大図書館に変更したけど、もしここからローランに戻りたければ距離的に管理迷宮に設定してある転移先へと跳べば済む事。跳ぶ前に任意設定として残してある一個をここに設定すれば一瞬で戻ってこれる。後ひとつは次元の迷宮に設定してあるけどこれもローラン王都から一日かからずいける距離なのだから最悪外しても支障は無い。

 つまり今後私の転移が(おおやけ)になった場合、私の必要ない場所に転移先を設定してくれ、そして必要とあらば転移してくれという使い方をされる可能性が...ないかな。

 そういう使い方をするのは国関係とかの人達になるだろうけど、彼等にこれを知られる気も無ければ知られたとしてもそのお願いを聞く気も無い。もし、命令をしてきたならば消えてしまうだけだし、強制的な命令をしてきたならば強制的に排除して消えるだけだ。そのことはギルドに対しては暗に示してあるし、国もそれを知っているから今の特殊な関係になっている筈。


 「けど、やっぱり直接カーサの家にいけたら楽じゃない?」

 「楽なだけで第一候補にするのは間違っているのだ。既にある物をもう一個取るより無いものを取るほうが優先順位は高いのだ」

 クロに正論で返されてしまった!


 「じゃあ忍術?」

 「錬金でもいいのだ」

 「えー、でもさ」

 「しばらくカーサと会ってないだろ」

 「うん」

 カーサが帰郷してからしばらく経つ。

 「戻ってきたら頼もうと思っているのが幾つか溜まっているはずなのだ。今後を考えるとリンも錬金を持っていたほうがいい可能性も出てくる。おそらく錬金は普通の迷宮からのドロップは無いと考えたほうがいいのだ」

 「それを言ったら忍術もそうじゃん」

 「うむ、二択か」

 「んー、そうなるのかな」


 「どっちが取るかも決めないとね」

 「リンでいいのだ」

 「なんでさ?」

 「我は無敵だからなのだ!」


 ……クロはさ、たまに、


 「まあいいや、それはその時じゃんけんで決めよう」

 「うむ」

 「けど、初戦を考えると何か変化してきそうだけどね」

 「だな、おそらく迷宮自体が一ランク上の存在に変化するな!」

 「そしたら次回以降の挑戦者は大変だね」

 「うむ、クリアできる奴がいなくなるかもな!」

 「さすがにそれは無いでしょ、ただおそらく今まで使えてた裏技みたいなのが使えなくなるだけだよ」


 多分表に出回らない裏情報みたいなのか、それに気付いた人だけで独占されてきた攻略法みたいなもので迷宮がコピー出来ないスキルか装備、またはクロみたいな召喚された生き物を連れて戦闘するみたいなのがあったんだと思う。おそらくそれを今回私達で潰す事になる。今日ボスを倒した時点でスキルを取って攻略していれば次回以降も同じ事が出来たかもしれないけど、今回私達は更なる情報を迷宮に与えた。おそらくこれで迷宮自体に変化が起こる。それは裏技を潰す事になり、上手くいけば報酬のスキル自体も進化することになると予想している。


 「いつまでも同じ裏技が使えるなどと油断しているようなヤツラなどどうなっても知らんのだ」

 「まあ、自己責任だね」

 迷宮攻略は常に命懸け、それを今回も余裕などと高を括ってもしもの対処を考えてないならそれは自己責任の範疇でしかない。


 まあ、けど、私達もまったく同じ技量まで進化した自分達と戦おうとは思っていない。勝てるギリギリまで挑戦してそれ以上の危険は冒さない。さっきもいったけど迷宮攻略は常に命懸けなのだからそんな無謀な賭けに出る気は無い。


 「まともに同じ強さの自分とやり合って勝算があった人とかいるのかな」

 「運が絡んでくる時点でいるとも思えんが、無謀な保険を掛けて戦う奴とかアホなのがいるんじゃないか」

 「たとえば?」

 「小僧とか?」

 「えー、なにそれ。けど正攻法の攻略なら五階の時点でコピーされた強さよりレアボスに挑戦する前にさらに強くなって挑戦が妥当なとこかな」

 「まあ、成長過程の奴ならそうだろうけど、ここに来てる時点と最下層まで来れる時点で成長の要素は無いと思うがな」

 「まあそうだね。難しいね」

 「うむ」

 「あ、まったくの素人を強い護衛の人が守って五階まで来てその後急成長させる、っていうのも裏技的にあるね」

 「それだと、報酬のスキルがどうなってるかだな」

 「そうだね、誰でも考えつきそうな事だし、フルの報酬スキルが出るまでどの程度の強さで五階を挑戦するかとか試行錯誤が必要になってくるしね」

 「そんな何十年単位の実験、貴族主体でやるならあるだろうがその間迷宮が使い物にならん事を考えるとどこかが反対するな」

 「まあ、一定以下の強さの場合レアボスが出ないっていう可能性もあるしね。五階パスするとレアボス出ないらしいし」

 「うむ」


 「まあ、取り合えず。明日だね」

 「……すやぁ」


 いきなり寝だすクロを抱き寄せる。

 腕の中で寝ながら眠りやすいポーズをとるクロ。寝てないよね?


 ……クロはさ、たまに自分が居なくなった時の事とか考えてるんだろうけど、私はそんなこと考えないからね?

 そのためならなんでもするし、さっきは自己責任とかいったけどそんなのは嘘でクロが強くなるか私が強くなれるなら他の事はどうでもいい。

 それこそ優先順位の問題で、今後何があったとしてもクロと一緒に居られるためにここに来てるのだから。


 ぎゅっとクロを抱く。

 「むぎゅー!」

 ふふ。


 腕の中の暖かさを感じながら眠りにつく。

 おやすみクロ。


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