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25:朝

 目が覚める。


 クロは昨日寝るときと同じで私の腕の中で寝ている。さすがに昨日は疲れたのか夜中遊びまわったりはしなかったみたい。

 寝ているクロを残しベッドから出て顔を洗うだけにしようかと、ちょっと迷ったけど今日は色々とする事もあるし気持ちを切り替える意味もあるし、身を清めるのもかねてちゃんと綺麗にしておこう。


 今日はメルカさんが二人分の朝食を運んできてくれた。シェフさん達の同行はない。

 (ぶーぶー!)

 クロがブーブー言っている。

 (クロの分には大きめのお肉が付いてるじゃん)

 (足りないのだー! ぶーぶー!)

 (ブーブーウルサイでーす。迷宮行く途中の屋台とかに寄ろうと思ったけどやめようかなー)

 (ぴた!)

 ピタって、ゲンキンだね、いいけどね、ま、朝から屋台やってるかは不明だけどね!



 フロントに降りるとセバスチャンさんが出迎えてくれる。

 「おはようございます。リン様」

 「おはようございます。セバスチャンさん」

 「にゃ!」

 なにやら外が騒がしいけど、取り合えず気にしないでセバスチャンさんとの朝の会話を楽しむ。

 「私宛てに何かありますか?」

 「はい、昨日から今朝にかけてリン様に面会したいという者が複数来ておりましたが、丁重にお断わりしておきました」

 「ありがとうございます。ちなみにどんな方達が訪ねてきました?」

 一応、ここに泊まっている事は隠してあるからそれぞれ独自の情報網を持っているという事に、ならないか。

 「こちらに、リストにしておきました」

 セバスチャンさんから訪問リストの一覧が渡される。ふむふむ、相手の素性まで細かく書いてある。さすが出来る執事の風格を漂わせるだけはあります。


 上から見て行くと。ゴルジフ家は、昨日すれ違ったし、その時点ではあの人達は私の事知らなくてもその辺りから調べがついたってとこかな。後は町長のタリエリさんの使いの人、これはどこから情報を仕入れたんだろ、町長っていうからそれなりの権力があるのだろうし、情報も集まるようにしているとかなのかな?

 後は商人のマルガリータさんの使いの者、素性にこの町の商人を取り仕切っていると書いてある。商人なら情報に聡いのは当然かな、後は独自に情報を手に入れたらしい貴族の人達と、名乗らなかった人達か、名乗らなかったみたいだけどちゃんと素性が載っているのはセバスチャンさんが凄いってことだなあ。


 後は、ヤンって人からの報告書も挟まってるんだけど、なにこれ、セバスチャンさんってそういうことなの?


 それをペラペラーっとしながらセバスチャンさんを見る。

 「ついでに、と頼まれました」

 フッと苦笑し首を振って国との関係を否定しながら答えてくれる。まあ、真偽は判らないけどヤンさんって人がセバスチャンさんを信用に足ると判断したのだろう。取り合えず報告書を読む。


 なになに、うーん。

 (クロ君)

 (うぬ?)

 (この町に勇者が来てるってさ)

 (うむ、会ったら即殺で)

 (うーん、そうだねえ)

 (ぬぬ? 否定しないとはリンも殺意の波動に目覚めたか!)

 (目覚めてないと思うけど、問題児らしいから係わらないほうがいいってさ)

 (無理だろ。どうせ相手から係わってくる)

 (だよねー)

 特権を持つというのも一長一短だなあ。あー、いやあ、違うよね。私のこと町中に知られたのってゴルジフさんとセザールさんとメイドさん達のせいだよね!

 (あんな派手に宣伝されたらどうしようもないよね!)

 (宣伝効果抜群だったな!)

 (多分噂に尾ひれもついてるよね!)

 (うむ、半端に隠したから余計にな!)

 (えー、ひどーい。クロは半分私のせいって言うの?)

 (我の朝食を奪った罰だな!)

 (逆恨みー!)


 他には、隣国カーライルの奴隷商にも注意されたし、って書かれてもなあ。

 (取り合えずさ、ローランの護衛を撒かないように行動してれば何か起きる前にあっちで対応してくれるかな?)

 (うむー、どうだろうな)

 (だって王族を守る人達でしょ、この国一番の使い手達じゃないの?)

 (鑑定したのか?)

 (え、うん。そりゃね。まあ、強かったけど)

 (勇者以外は対応出来るだろ?)

 (まあ、そうだね。やっぱり勇者は無理かな?)

 (無理だろ。野放しになってる勇者という時点で色々ヤバイ)

 (だよね! 係わりたくないよね!)


 勇者というのはほぼ確実に国に飼われている存在。私やフジワラ君みたいなのは本当に特別で、活動している国と何らかの折衝がなければまともに生きていく事は出来ない。私とフジワラ君は冒険者ギルドという力の傘下に入り運良くギルド長をしていた人に気に入られ国からの干渉を防いでくれたという経緯があるし、色々と動き回った結果、国と対等とまではいかないけどそれなりの関係を持つ事が出来た。

 ここに出てくるユウキと言う勇者は問題児とされているけど、ローラン王国に飼われている問題児なのかそれとも本当の意味で問題児なのか、んー。


 (私達もローラン王国からしたらある意味問題児だよね?)

 (うむ、確かにそうなるな)

 (じゃあ、このユウキって勇者さんも普通に良い人って可能性あるのかな?)

 (さあな、確かめるのか?)

 (いやあ、出来れば会いたくないけどね)

 (だな。無駄だと思うが遭わないことを祈るか)

 (だねえ)


 メリットデメリットそれぞれあるけど、やっぱり最大権力の傘下に入ると事前に情報が色々集まって助かるね。

 じゃ、気は進まないけど、外の騒ぎに巻き込まれにいこうかな。どうせ原因は私なんだしね!


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