月城という男。
王宮の広間から出て、彼女たちはどんどん地下へと下って行く。
「あの・・・」
「なーにー維咲九夜ちゃん。名前の事でも訊きたいのー?」
「え、」
彼女の反応にまた月城は面白そうに笑う。
「家族に訊いたりはしないのー?何でこんな長ったらしい名前なのかさー」
「・・・家族は・・・」
「あ、ごめーん!君の家族もう死んじゃってたもんねー。親戚になんて訊きずらいよねー?身分違いの恋に落ちて、君を宿してしまった。ご両親は駆け落ちしたんだっけ?折角、名家の生まれだったのにねー?いやードラマがあるよー!それで何?薬草いじってただけで腫物扱い?嫌になっちゃうねー!ふぶっ!!」
流れるような言葉に桜乃は黙って聞きながらなぜ親の事を知っているのかという疑問と自分の置かれていた状況を面白おかしく言う彼に内心腹立たしく思っていた。それにタイミングよく、古謡がまた月城のことを扇子で叩き倒した。
「マスター。そういうとこ、ホント良くないよ」
「痛いなぁ古謡ちゃん。だって本当のこと言って何がいけないの?親戚から腫物扱い?家族が死んだ?それがなんだっていうのさ?」
「っ!! あなたは!寂しいとか辛いとかそんな感情はないんですか!?」
桜乃の大声に月城はキョトンとする。すると月城は彼女の前に座りメガネを直した。
「ボクにもそんな感情くらいあるよ。でも、そんな感情は何を生み出すんだい?寂しいー!辛いよー!助けてー!・・・なーんて悲劇の舞台に立って悲観的になっているだけじゃない?ボクはねぇ、生産性のない感情は持たない様にしてるんだ。そんなの研究の邪魔にしかならないからね!」
月城の言葉に桜乃は固まる。世の中にこんな人がいるなんて想像も出来なかったからだ。
「あなたはには分からないんです!両親が目の前で死んで・・・周りから一緒に死ねばよかったのにって言われる気持ちが!!」
「分からないよ。」
彼はさも当然のように口にした。そして桜乃の前に立ち、彼女の頭上から声を掛けた。
「じゃぁ訊くけど、君は親に軽蔑された事はある?産まなきゃよかったって言われた事はある?・・・殺されかけた事はある? そして想像できる?それをされたボクの気持ち。親に愛されて育った君が想像できるの?出来ないよね?ボクが言っているのはそれと同じだよ」
桜乃は平然と言う月城が怖くなった。なんだか体も震えてきた。視界が霞む。
「あ・・・れ・・・?」
そこで桜乃は倒れてしまった。
「あ、しまった。タフだなーって思ってたけどやっぱり人か。よっと、・・・古謡ちゃん、なんでボクから彼女を取り上げるの?」
「マスターはゲス野郎だからこの子になにするか分からない。私が運ぶわ」
「うわ、酷いなぁ。けどね古謡ちゃん大切に運んでね。大事な研究対象なんだから」
そう言い月城は笑いながら歩きだした。
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