独りの少女。
両親が事故で死んでから親戚の所をたらい回し。
幼い頃から薬草ばかり触っていて、特に何か出来るわけでもない。
親戚からは腫れ物扱いされ、家も小屋を用意するからと独りにされた。誰かに必要とされることなんて夢のまた夢。
なぜ、私だけ残ったの? なぜ、私だけ残したの?
神様がいるならあなたを恨んで、親の分まで独りで生きる。そう決めた。
絶望の中に生きる少女。彼女を救ったのは二人の「人形」でした。
薬草を摘んできて調合する。本を見ずとも薬の作り方は感覚的に分かっていた。薬草ばかり触れる彼女に親戚の目は冷たく、気味悪がられていた。そんな彼女に突然この国、クローレの国王が招待状をよこしてきた。
「あの・・・なんでしょうか国王様?」
正装なんてない彼女は私服のまま、少し高い所に従者2人に挟まれ、王座に座っている国王の前に立った。
「お主、名はなんというのだ?」
「さ、桜乃と申します」
「そうか、桜乃。私に見覚えはないか?」
国王に言われ顔をまじまじとみる。だが、国王という以外、記憶にない。
「国王様以外に分かりません」
「そうか、数日前、男の手当をしなかったか?」
記憶にあるのは大きな荷物を引いた数人の男性たちと怪我をした初老の男性。
薬草を摘んできた帰りだった彼女は即席に薬を作った。
「はい。怪我をされていた様だったので、手当をしました。」
誰かに必要とされなくても、優しさに罪はない。どんな時でも人に優しくありなさい。
母の教え。それに沿ってその人に手当をしただけだった。
「その男が私だ」
国王の言葉に彼女はただただ驚いた。その老人は今の国王のような格好ではなく、国民たちと似たような格好をしていたからだ。
「なれなれしい態度をとってしまい申し訳ございません!!」
「いや、君には礼を言いたいんだ。あの後城に帰って医務に見てもらった。適切で完璧な処置だったそうだ。何か医術を学んだのか?」
「いえ・・・私はただ本を読んでいただけで・・・医学ほど立派なものを学んだことはありません・・・」
彼女の言葉に国王は微笑み謙遜するなと声を掛けた。
「お主には何か不思議な力を感じる。正式名はなんと言うのだ?」
国王の言葉の意図が分からず。桜乃は首を傾げる。
「維咲九夜 桜乃と・・・申します・・・」
「維咲九夜・・・!」
彼女の言葉を聞き、国王は驚いたが納得したように頷いた。
「そうか・・・お主は維咲九夜の者だったか・・・」
「あの・・・この名が、なんなのですか?」
「知らないの~自分の名なのに」
檀上の裾から誰かが顔を出してきた。その人は少しはねた銀色の長髪に黒縁メガネをかけ、白衣を身に纏った男性だった。3歩後ろくらいに着物に黒髪を肩甲骨くらいまで伸ばした女性が立っている。
「月城。お主研究所にこもってるんじゃなかったか?」
国王とその人は親しげに話し、月城は国王の横にだらしなく立った。
「いやね、ボクの研究品が反応した子がどんな子か見たくてこもってなんかいられなかったよ!」
国王にそう伝えると月城は桜乃の前に立ち、品定めをするように彼女をみた。
「あの・・・」
「うん。あと5年すればいい女に育つかな!」
ストレートな物言いに桜乃は顔を赤らめ目を伏せる。その様子をみて楽しそうに月城は笑った。
「いい反応だねぇ~ ボクが育ててもいいんだけど、どう?」
月城の言葉に後ろに立っていた女性が彼のことを扇子で殴り、横にはったおす。そして殴った彼のことを卑しい目で見下した。
「マスターがごめんなさい。ただのゲス野郎だから気にしないで」
「痛いなぁ古謡ちゃん。そんな君も好きだけどね!」
月城の言葉にまた嫌そうな顔つきをし、扇子を構えた。
「それより古謡ちゃん。彼女はどんな味?」
月城の言葉の意味が分からず。桜乃は国王をみたが、国王は優しく微笑むだけで何も答えてくれない。
「・・・彼女は・・・寂しい味・・・あまり取り込みたくないわ。」
「そう。王様!この子、借りていってもいいよね?」
「それは彼女にきくといい月城。」
「来てくれるよね。維咲九夜ちゃん?」
有無も言わせぬような月城の圧力に桜乃はか細く、はいと返事をした。そして急かすように月城は桜乃の腕を引き国王に軽く挨拶しこの場を去ろうとした。
「王様またあとでねぇ~」
「あ!し、失礼します!!」
「マスターに代わって、失礼します国王さま」
広間を出ていく三人を見送り、国王は自室へと戻って行く。そして、一枚の写真に目を落とした。
「彼女が自慢していた娘かい。葵奈。」
写真には国王と数人の男性たちが畏まって写っており、国王はその中の一人に視線を向けて呟いた。
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