護衛配置決め
引き続き、恵菜視点です。
絶望的な光景を見て、思わずふらつきそうになったけど、何とか堪える。でも、この時点で私の一人ぼっちはもはや確定的だった。
「なるほど、一人以外はパーティ所属ということか」
ケインスさんが手を上げている冒険者の人達を見渡し、最後にパーティに入っていない私の方を見てそう言う。そんなことはないんだろうけど、心なしか私の方を見る目には哀れみがこもっているように見えた。
ケインスさん、その状況確認とその目は私の心を傷つけるのでやめてほしいです。
「とりあえず、さっきの説明通りに、各パーティが担当する場所を先に決めていこう。パーティの代表者は、俺に自分のパーティ人数と、希望があれば担当したい護衛場所も言っていってくれ」
ケインスさんがそう言うと、手を上げていた人達の中から何人かが集まり、配置場所の相談を始め出す。
だけど、既に仲間外れにされているような感覚に捕らわれていた私の耳には、その会話内容はまともに入ってこなかった。今回ばかりは、旅の道連れがいなかったことを後悔したくなる。
……いや、別に意志疎通ができる友達がいないわけじゃないよ? 今頃は別の世界で授業を受けているか、もしくはここから南の方にある海の中を自由に泳ぎまわってるだろうけど……
「よし。パーティの配置はこんなものだろう。案外良い感じに人数も分かれたな」
頭の中で醜い言い訳を自分に言い聞かせていると、相談していた人達がパーティの仲間の下へと戻っていく。特に争いも人数の偏りも起きずに、すんなりと相談が終ったみたい。代表者同士の相談でも会話の中心にいたケインスさんも、スムーズに事が進んで少し機嫌が良さそうだった。
パーティの配置が決まったという事は、あとは残った私の配置を決めるだけ。
「あとは君の配置という事になるんだが……」
予想した通り、ケインスさんが私の方へ来て配置場所を決めようとする。
どこに行っても一人ぼっちに変わりはないのだから、私としてはもうどこに決まってもいいんですけどね……
「ケインス、ちょっといい?」
「? どうした?」
だけど、私がケインスさんにどこでもいいと言う前に、近くにいたリアナさんが割り込んできた。
「今決まった配置だと、人数はどう分かれてるの?」
「左右にそれぞれ十人、前方に五人、後方に四人だ。偶然にもパーティの数と人数が最初に決めていた人数分けに合ってたおかげで、思いの外あっさりと決まった。あとはこの子の配置なんだが、もし自分の希望が何かあるのならそこでいいだろう」
私の方にチラッと視線を向けて、ケインスさんがリアナさんに説明する。どうやら、ケインスさんも私がどこに配置されてもいいと思っていたらしい。
これは「どこにしたいか?」という質問に対して「どこでもいい」と答えてしまって、逆に質問者が困るという、日本人によく見られる困った状況一歩手前だったのでは? といっても、ケインスさんなら一瞬で決めてしまいそうな気もするけど。
「あたし達のパーティはどこなの?」
「後方だ。左右は他のパーティで人数が上手く分けられそうだったし、前方は偵察に自信があるというパーティが受け持つって言ってくれたからな。早い話が、余った場所に俺達が収まったわけだ」
「それじゃあさ、エナをあたし達と同じ場所に配置しない?」
「へ?」
予想してなかった事がリアナさんから提案されて、思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「別に俺は構わないが、何か理由があるのか?」
「エナってこの依頼が初めての護衛依頼らしいの。それだと色々と分からない事が多そうじゃない? 誰か教えてあげられる人がいた方がいいでしょ」
「まぁ、そうだな」
「それに、少し周りの護衛連中を見て見なさいよ。男ばっかりじゃない」
リアナさんにそう言われて、ケインスさんだけじゃなく私も周りの人達を見渡してみる。
元々冒険者には男性が多いから、当たり前といえば当たり前の事なんだろうけど、たしかに護衛の人のほとんどが男性で、女性は私とケインスさん達のパーティ以外には見当たらない。
「ケインス。あなた、この子一人を男しかいないような場所に配置する気? 護衛依頼の最中に変な事なんて起きないとは思うけど、女の子からしたら気が気じゃないわよ」
リアナさんの言葉を聞いて、やっと自分の置かれている状況を理解する。
トランナからランドベルサまでは、早くても三、四日はかかるとヒルデさんが言っていた。
当然、その間止まることなく行進し続けるわけがなく、絶対に途中で野宿することになる。それに夜は何かが突然襲ってくる可能性も高いから、全員が同時に寝るというわけにはいかない。何人かが休息を取っている間に、他の人が見張りをする必要がある。
依頼を受けている以上、私もその仕事をしなくちゃいけないだろうから、勝手に自分の担当場所を離れてはいけないはず。だけど、その場所に私が紅一点だった場合、十分休むことができるだろうか?
……うん、たぶん無理。少なくとも、私にはそんな環境で寝ていられる程の図太さはない。
周りいる人が信頼できる人達ならそんな事もない。だけど、一緒の依頼を受けている仲間の冒険者とはいえ、結局はあまり知らない者同士なのだから、信頼関係があるとは言い難いよね。
今まで旅をしていた時は魔物と人除けの魔法陣を使ってたけど、あれは障壁を発生させて身を守るものじゃなくて、他の人を無意識に魔法陣から避けさせるためのものだから、注意して見ればそこに何があるのか分かってしまう。
いっその事、アースウォールで私の周囲を覆ってしまえば何も心配しなくて済むだろうけど、魔物が襲ってきた時に見張りの人が私を起こせなくなっちゃう。そうなると、皆が戦っている中、私一人が安全な場所に引き籠るということになる。
そんなのは護衛としては最低だ。依頼も達成したと認められるか非常に怪しい。
そもそも、自分の方から周りに壁を作るのはどうなんだろう? 他の人からすれば、絶対に良い印象を持てないはず。「何だこいつ?」みたいに思われてもおかしくないし、元からあまりない関係がさらに悪化するかもしれない。
そうなると、現状は知り合いのリアナさんがいる後方が、私にとって一番落ち着ける護衛場所ということになる。ケインスさんも常識人に見えるから変な事も起きないだろうし、完全に一人ぼっちということにもならなさそうだ。
それぐらい少し考えれば思いつきそうな事だったけど、一人ぼっちになるっていう絶望感から、思考を放棄してしまっていた。
「たしかに、そう言われると俺達のパーティと同じ場所にした方がいいかもしれないな。でも、一番大事なのは本人の意思だ。君はどう思う? もし別に護衛したい場所があれば――」
「後方でお願いします!」
ケインスさんが言い終えるよりも早く、間髪入れずに答える。ついさっきまでどこでもいいとか思ってた自分を説教したくなってくる。もう私の頭の中には、後方の護衛という選択肢以外になかった。
ぼっち回避?
次話は三日後に更新予定です。




